彼氏への献身が終わった日第2話
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私と陸人の関係は、最初からこのような冷え切ったものではなかった。
付き合い始めた頃、私は救急科で研修中で、目が回るほど忙しい時期があった。
何時間もスマホに触れず、やっと一息つけるようになった時、彼から何十件ものメッセージが来ているのに気づいた。
【今日は忙しい?疲れてない?】
【まだ残業中?】
【ご飯食べた?ちゃんと食べなきゃだめだよ】
……
最後のメッセージは五分前のものだった。
【今、終わったよ】
そう打った直後、送信する暇もなく、誰かが私を呼ぶ声がした。
「美鈴」
顔を上げると、少し離れたところに陸人が立っており、口元に柔らかな笑みを浮かべ、まっすぐ私を見つめていた。
彼は手にお弁当の袋を提げていた。外でどれくらい待っていたのか、髪は風に吹かれてボサボサになっていた。
私が出てきたのを見ると、彼は小走りで駆け寄ってきた。
「美鈴!まだご飯食べてないだろ。君の好きなものばかり作ってきたんだ」
彼はそう言いながら中身を取り出した。酢豚に、ブロッコリーとエビの炒め物、それにパックに入ったイチゴ。
保温ボトルには温かいお味噌汁まで入っていて、蓋を開けると湯気が立ち上った。
救急科の入り口はすきま風が吹いて肌寒かったが、陸人はお弁当箱をそっと私の手に渡した。
私の手に触れた陸人は、その冷たさに気づいて眉をひそめた。
「君の手、どうしてこんなに冷たいんだ?」
そう言いながら、陸人は両手で私の手を包み込んで優しくさすり、そのまま口元へと寄せて息を吹きかけた。
「今度は湯たんぽを持たせないとな」
陸人は顔を上げて私を見た。その瞳には心配の色が満ちていた。
「早く食べなよ。冷めたら美味しくなくなるから」
あの頃、陸人は会社を立ち上げたばかりで、私よりも忙しかったはずだ。
この一食を届けるために、どれだけの仕事を後回しにしたのだろうか。
だが陸人はそんなことは一言も言わず、ただ私の隣に座り、静かに私がご飯を食べるのを見守っていた。
私はうつむき加減でご飯をひとくち食べながら、目頭が少し熱くなるのを感じた。
こんな泣きそうな顔を見られるのが恥ずかしくて、顔を上げられなかった。
ただ少しだけ陸人の方へ身を寄せ、そっとその肩によりかかった。
彼は一瞬、動きを止めた。
それから、頭上から少し笑いを含んだ彼の声が聞こえてきた。
「疲れただろ?疲れたなら少しもたれてなよ」
しかし、陸人は本当に忙しすぎた。
私の隣に座っていたのは一時間にも満たなかったが、その間に十本以上の電話に対応し、最後は共同経営者から催促のメッセージが届いたため、会社へ戻っていった。
去り際、彼は私を振り返った。その目には申し訳なさがあふれていた。
「次は、必ずもっと一緒にいるから」
私は、わかったと頷いた。
あの頃の陸人は私を深く愛してくれていたし、私も彼を深く愛していた。
ある時期、会社の資金繰りが悪化し、給与の支払いすら厳しい状況に陥った。
私がオフィスへ彼を訪ねた時、陸人がバルコニーで電話をしているのを見かけた。
彼は電話の向こうの相手に、何度も繰り返していた。
「本当に申し訳ありません。三日以内には必ずなんとかしますから」
陸人は声を押し殺し、肩を落として、まるで懇願するように話していた。
電話を切り、振り返った彼は、私を見て明らかにハッとした。
それでも彼は、何事もなかったかのように私に向かって微笑んだ。
「どうしてここへ?」
その笑顔を見ると、私の胸は締め付けられるように痛んだ。
私はそれ以上深入りすることはせず、ただ家に帰った後、この数年の仕事で貯めてきたお金を彼の口座へ振り込んだ。
「ただであげるわけじゃないわ。これは投資だからね」
陸人からの返信はなかった。
トーク画面をじっと見つめながら、彼を怒らせてしまったのではないかと不安になった。
ちょうどその時、ドアの外から物音がした。
ドアを開けると、陸人が勢いよく私を抱きしめた。
「美鈴、愛してる。会社が安定したら、結婚しよう」
その言葉は、その後の数年間、私にとって何よりも大切な宝物だった。
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