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彼氏の初恋に席を譲ったのに、彼は狂った第2話

この話は約1504字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

部屋の中は一瞬にして静まり返った。私は空気を読んで、騒がなかった。

だって、私はその資格がなかった。

千秋の友人たちは皆知っている。私は彼がバーで買ってきたセフレだということを。

彼に出会った時、父は賄賂の濡れ衣を着せられ、刑務所に入れられた。財産もすべて差し押さえられた。

あの時の私は、昼も夜もバーの前で張り込み、最も優秀な弁護士佐藤先生を待ち伏せしていた。

車のドアにすがりついて、「どうか助けてください」と懇願した。

しかし返ってきたのは一億円の手数料が必要だという無情な言葉だ。

私にとって、それはまさに天文学的数字だった。

大雨の中、道路脇に座り込んだ。通り過ぎる車が泥水を跳ね上げ、全身を汚した。

ただ一台の車だけが通り過ぎた後、引き返してきた。

男は傘を差し、私の頭上の雨を遮った。

酒の匂いを漂わせながら、迷いを帯びた目で、それでも真剣に私を見つめた。

「薫?なぜこんなところで跪いている」

彼の言葉の意味が分からなかった。ただ、溺れる者が藁を掴むように彼のズボンの裾を掴んで尋ねた。

「一億円、貸してもらえませんか?」

男は吹き出して笑い、少しだけ正気を取り戻したようだった。

「じゃあ……その代わりに、何を差し出すつもりだ?」

その夜、私は自分の体を借りの証として差し出し、千秋に身を売った。

それから、彼はまるで私の暗い人生に差し込んだ一筋の光のように、再び贅沢な生活を与えてくれた。

ただ、そのときの私はもう両親に可愛がられる存在ではなく、愛人になってしまった。

しかも、身代わりとして。

あれ以来、私は身代わりとしてのすべての役目を果たした。

彼の要求に対して何でも応え、しかも24時間待機し、決して連絡を絶やさなかった。

三年の間、彼は薫への想いをすべて私に投影した。

そして私は彼の優しさを愛と錯覚した。

その錯覚が壊れたのは、彼が私を友人の集まりに連れて行った夜だった。

彼の幼なじみたちは、私が薫の代わりになっているのが気に食わず、わざと意地悪をした。

「前原さんは本当に気高いね。あなたが来ると、私たちはタバコさえ吸えなくなっちゃう。

馴染みたいなら、せめてタバコくらい吸ってみたら?」

千秋はちらりと私を見たが、すぐに視線を落とした。

そして淡々と告げた。

「彼女は鼻炎だ」

友人は皮肉っぽく笑いながら言った。

「彼女を三年も囲ってるけど、本気になったんじゃないのか?」

千秋はソファにもたれ、指先でライターを弄んでいたが、動きが止まった。

ぼんやりと私を見つめ、それから煙を吐き出して冷たく言った。

「ただのセフレだ」

その言葉を聞いた瞬間、周りの人間がタバコを私の唇に押し当てた。

「千秋みたいな潔癖な男を落とせるなんて、前原さん、腕前がすごいね。

他のもの吸えるなら、タバコぐらい吸えるだろ?」

盛り上がった空気の中、千秋は笑みを浮かべ、私を見た。

「そんなに嫌がるな、一口くらい吸ってみろ」

部屋の煙にむせながら、私は思わず口を開いた。

自分が彼にとって、何なのかを確かめたくなったのだ。

「もしお相手が鈴木薫でしたら、彼女にも無理強いしますか」

その一言が、男の逆鱗に触れた。千秋は三年間で一度も見せたことのない激しい怒りを見せた。

タバコを私の口に無理やり押し込んだ。

「お前みたいな売女が、薫と比べる資格があると思うな!

彼女には夢を叶えるために海外へ行かせられる。

だがお前は、俺のベットで一億のために泣き喘ぐのがお似合いだ」

男の手に力が入りすぎ、私の唇から血が滲んだ。そのときようやく、彼もやり過ぎたことに気づいた。

その日から、私は彼の友人たちに売女と呼ばれるようになった。

そして、ようやく気づいたのだ――自分は、他の女たちと何も変わらないのだと。

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