年越しの夜、ネット恋愛相手との初対面は罠でした第1話
この話は約1644字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。
ネット恋愛の彼と年越しの約束をしてから、私は準備万端で臨んだ。
お気に入りの服に身を包み、彼へのプレゼントも用意済み。
だけど、まさかあの人が双子の弟まで連れてくるなんて思いもしなかった。
しかも予約した部屋は一部屋だけ。
目の前に並ぶそっくりな二人を見て、私は思わず笑みを浮かべた。
* * *
シャワーを浴びた後、鏡の前で自撮りを一枚。テーマは「湯上がり美人」。浴室の湯気がまだ残る中、タオルだけを巻きつけた姿で大胆にポーズを決める。それをネット恋愛の彼、シオンに送った。
少し考えて、さらに効果的なメッセージを添えることにする。
「ねえ、見て。鎖骨ぶつけちゃったみたい……もうイヤだなぁ」
写真に写る私は、濡れた髪をわざと色っぽく肩に垂らし、鎖骨の小さな傷を目立たせるようにポーズを取った。これなら彼の心を掴むのは間違いない。ネット恋愛中だって、こういう「攻め」のやりとりは私の得意分野だ。
送信ボタンを押してから間もなく、スマホに通知が続々と届く。
シオンからの返信だ。絵文字の流れるような勢いに思わず笑みがこぼれる。
「リノ、めちゃくちゃ綺麗だよ!早く会いたい!
もし僕がそばにいたら、そっと息を吹きかけて治してあげるのに。それから……もっとたくさんキスをするよ!
本当に好きだよ、リノ」
調子に乗った私は、タオルを少しだけ緩めて、さらにセクシーな写真を一枚追加で送る。
「ねえ、これも気に入る?」
答えは見るまでもなかった。
シオンはスマホの画面から飛び出してきそうな勢いで返信してきた。
「リノったら、ダメだよ。僕をこんなに惑わせるなんて!」
満足した私は、小さな声で彼に甘えたメッセージを送る。
「じゃあ……年越し、一緒に過ごそうよ。もうずっと待ってたんだもん。一緒に目覚めたい、ね?」
この提案に、彼は一瞬返信を躊躇しているようだったけど、しばらくしてこう返ってきた。
「分かった。31日の夜、A市で会おう。もうチケットを取ったよ!ホテルも予約済み。リノ、楽しみにしてて!」
その言葉に私は胸を高鳴らせた。長い間待ち望んでいた彼とのリアルな再会が、ついに叶う……!
風見シオン(かざみ しおん)と私が出会ったのは、とある出会い系アプリだった。ただ、最初はほんの軽い気持ちで彼のプロフィール写真に「いいね」を押しただけ。まさか、それがこんな展開を生むなんて思いもしなかった。
彼はすぐに「いいね」を返してくれて、私のプロフィールを覗きに来た。そして、そこからあっという間に個別メッセージを送ってきたのだ。
人と人の関係って、ちょっとしたきっかけで始まるものだよね。シオンは話上手で、私はちょうど誰かと話したかった時期だった。加えて彼の話題の幅広さときたら――どんなテーマを振っても、それについて独自の視点で語ってくれる。
それだけじゃない。彼の人生観は私の考え方と驚くほど似ていて、話せば話すほど「この人は私の魂の相棒かもしれない」なんて思えてくる。
初めてメッセージを交わした頃は、深夜まで語り合うなんて当たり前だった。
シェイクスピアの名言からマーガレット・サッチャーの逸話、果ては最新の芸能ゴシップまで、どれも楽しい。
だけど、人間だからね。心が惹かれ合うだけじゃ足りなくなるもの。お互いの好意を確認し合ったあと、私は彼の魅力的な魂だけじゃなく、その身体にも目を奪われ始めた。
彼はたまにジムでのトレーニング中の写真を送ってくれる。彫刻みたいに引き締まった腹筋や力強い上腕の筋肉。それぞれのラインが、まるで私の理想そのものみたいで、見れば見るほど惹きつけられる。
特にお気に入りなのが、写真にちらっと映る彼の横顔。完璧な顎のラインは、まさに男らしさの象徴だった。
そうして私たちはすぐに恋人関係を築き、半年間のネット恋愛が始まった。
そしてもうすぐ――ようやく彼に会える。
ずっと待ち望んでいた彼と、ついに一つになれる。思わず、舌でそっと唇をなぞった。
だけど、このときの私は知らなかった。
その再会が、生涯忘れられないスリリングな体験になることを――
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