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寄生一家と決別、自由を手に入れる第1話

この話は約2561字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

結婚してわずか3日目。ハネムーンが、必ずしも二人だけのものではないのだと、初めて知った。

航空券は3ヶ月前、格安のセールで手に入れたもの。行き先は澄京、予約した席も、当然二人分だった。

出発の前夜、夫の近藤誠司が言い出した。彼の母親・近藤和江が腰痛持ちだから温泉に連れていきたい、それから、仕事を辞めたばかりの妹・近藤千佳も気晴らしに同行させたい、と。

「いいよ、家族だもんね」と答えた。

現地の温泉旅館に到着すると、ツインルームが一部屋しか空いていないとフロントに告げられた。

てっきりエキストラベッドを追加するのだと思っていた。しかし、誠司は母親と妹に視線を走らせた後、こちらを振り返って平然と言い放った。

「フロントでデイユースの部屋が空いてるか聞いて、そこでシャワーだけ浴びてきなよ。今夜はロビーのソファで適当に横になればいいから」

その言葉と同時に、和江の荷物を甲斐甲斐しく運び始めた。スーツケースを手に廊下に立ち尽くしていると、部屋から千佳がひょっこりと顔を出した。

「お義姉さーん、ついでに下に降りてミネラルウォーター買ってきてくれない?部屋のやつ、冷えてないんで」

碧ノ湖の夜風が吹き抜けて、驚くほど頭が冷えていく。かつてないほど、思考がクリアになるのを感じる。

ロビーへと降りて、その足で帰りの航空券について調べ始めた。私は、一人で帰るのだ。

* * *

結婚してわずか3日目。ハネムーンが、必ずしも二人だけのものではないのだと、初めて知った。

航空券は3ヶ月前、格安のセールで手に入れたもの。行き先は澄京、予約した席も、当然二人分だった。

出発の前夜、夫の近藤誠司(こんどう せいじ)が言い出した。彼の母親・近藤和江(こんどう かずえ)が腰痛持ちだから温泉に連れていきたい、それから、仕事を辞めたばかりの妹・近藤千佳(こんどう ちか)も気晴らしに同行させたい、と。

「いいよ、家族だもんね」と答えた。

現地の温泉旅館に到着すると、ツインルームが一部屋しか空いていないとフロントに告げられた。

てっきりエキストラベッドを追加するのだと思っていた。しかし、誠司は母親と妹に視線を走らせた後、こちらを振り返って平然と言い放った。

「フロントでデイユースの部屋が空いてるか聞いて、そこでシャワーだけ浴びてきなよ。今夜はロビーのソファで適当に横になればいいから」

その言葉と同時に、和江の荷物を甲斐甲斐しく運び始めた。スーツケースを手に廊下に立ち尽くしていると、部屋から千佳がひょっこりと顔を出した。

「お義姉さーん、ついでに下に降りてミネラルウォーター買ってきてくれない?部屋のやつ、冷えてないんで」

碧ノ湖の夜風が吹き抜けて、驚くほど頭が冷えていく。かつてないほど、思考がクリアになるのを感じる。

ロビーへと降りて、その足で帰りの航空券について調べ始めた。私は、一人で帰るのだ。

「フロントに聞いたら、こんな真夜中にデイユースは無理だって。トイレで顔でも洗って、ロビーのソファで一晩我慢してくれ」

タクシーに乗り込んだ瞬間、誠司からボイスメッセージが届く。

「明日の朝は、母さんを連れてあの話題の朝食専門店に行って、母さんは胃が弱いから、ネギは抜きにするよう店員に伝えておいて」

「早く行って並んどけよ。母さんが起きたら腹が空くかも」

耳元からスマホを離す。車内は静まり返っている。

「お客さん、どちらまで?」バックミラー越しに運転手が尋ねてくる。

「空港までお願いします」

「便名は分かりますか?ターミナルを調べますよ」ハンドルを切りながら運転手が言う。

「南城市行きの始発便です。着いてからチケットを買うので」

少し驚いた様子を見せる運転手。「こんな真夜中に……もしかして、彼氏と喧嘩でもしちゃいました?」

「喧嘩じゃありません」窓の外を流れていく街灯を見つめながら答える。「空港へ、急いでいただけますか」

スマホがまた震えた。今度は千佳からのボイスメッセージ。

「水買うのにどんだけ時間かかってるの?」

「あ、もう買わなくていいよ。お兄ちゃんがデリバリーでスムージー頼んでくれたんで、すぐ届くし」

「お義姉さんはロビーでしっかり荷物の見張り番してね。私のブランドバッグ、盗まれたら困るから」

続いて一枚の写真が送られてくる。そこには、床に屈んで和江の足をマッサージする誠司と、水滴のついたおしゃれなグラスを手に鏡越しに自撮りをする千佳の姿が写っている。

背景は、広々とした露天風呂付きの部屋だ。画面をタップして、二文字だけ返す。

【うん】

送信を終えて、薬指から結婚指輪を外す。誠司が選んだ、小さなメレダイヤがあしらわれた安物。

「将来生まれてくる子供の教育資金のために、今は節約しよう」

あのときは、なんて堅実で頼もしい人なのだろうと思ったものだ。私は指輪を外して、運転席へ向かって差し出す。

「すみません、これ、適当に処分しておいていただけますか?」

「えっ?」受け取った運転手が、ギョッとしたように声を上げる。「お、お客さん、これ……本当に捨てちゃっていいんですか?」

「もういりません」きっぱりと告げる。「サイズも合わないし、つけてると痛いので」

静まり返った深夜の空港ロビー。カウンターへと歩み寄る。「すみません、南城市行きの一番早い便は何時ですか?」

スタッフが手際よく端末を操作する。「深夜2時半の便がございますが、あいにくファーストクラスしか空きがございません。かなり割高になってしまいますが……」

「それでお願いします」運転免許証を差し出す。

キーボードを叩く音が響く。「かしこまりました。近藤凪(こんどう なぎ)様ですね。お会計は88,000円になります。お支払いはどうなさいますか?」

「カードで」と言って、給与受取のカードを手渡す。紛れもない、自分名義の資産。

誠司のカードは和江が握っている。「年寄りに管理してもらった方が安心だから」というのが彼の言い分だ。

これまでは別にどうでもいいと思っていた。私のほうが圧倒的に稼いでいたから。でも今なら分かる。確かに、自分のお金はやはり自分で管理したほうが安心だ。

搭乗券を手に、待合室の冷たいベンチに腰掛ける。不意に画面が明るくなって、誠司からの着信を告げた。通話ボタンを押す。

「お前一体どこだ!」スピーカーから、苛立ちを隠そうともしない大声が響く。

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