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家を出た全国トップ、逆転人生の幕開け第3話

この話は約1472字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

翌日、私はいつものようにアルバイト先のカフェへ向かった。

いつもの仕事は、着ぐるみを着て店の前でチラシを配ることだ。

真冬だというのに、着ぐるみの中は蒸し暑く、私はだんだん息苦しくなった。

もう限界だった。私は頭の部分を外し、隅のほうへ移動して水を飲んだ。

「お姉さん?」

すると聞き慣れた声が後ろから聞こえた。

私は体をこわばらせ、ゆっくりと振り返った。

両親と駿、それに冬馬と結衣が近くに立っていた。

冬馬の両親までいたのだ。

駿と冬馬の手には、買い物袋がいっぱいぶら下がっていた。

結衣のために買ったものだと、聞かなくてもわかる。

汗だくの私を見ても、母の目には少しの気遣いもなかった。

そこにあったのは、冷ややかな怒りだけだ。

「寧々、お小遣いはあげているでしょ?

そんな姿でチラシ配りをして、一ノ瀬家があなたを粗末に扱っていると思われたいの?」

私は持っていたペットボトルを強く握りしめた。

「月5万円のお小遣いで、家賃と水道光熱費で全部なくなるのよ。

バイトをしなきゃ、生きていけないでしょ?」

駿は眉をひそめ、私を乱暴に突き飛ばした。

「ふざけるな!親に対してその口のきき方は何だ!」

冬馬は結衣の隣で、困ったような表情を浮かべた。

やがて、彼は非難するように口を開いた。

「寧々、お前は少し敏感すぎるんだ。結衣だってお小遣いは月5万円だ。足りなければ家族に頼めばいいだろ。お前の母親はいつもちゃんと出してくれているだろう?

お前が言わないから、足りていると思われているだけじゃないか。

今日のことはお前が悪い。ちゃんと謝らないと」

言葉が喉につかえて、何も言えなかった。

結衣のお小遣いは、母が毎月決まった日に、なんなら前倒しで彼女にあげていた。

でも私のお小遣いは、何度も催促してもなかなかもらえない月がほとんどだった。

月末ギリギリになって、ようやく施しのように渡されるだけだ。

本当に頼めば、お金を出してくれるの?

このようなことは何を言っても無駄だとは、わかっている。

返ってくるのは「欲張りだ」「わがままだ」という責める言葉だけだから。

私は冷たい表情で、再び着ぐるみの頭を被り直した。

「みんな帰って。仕事の邪魔よ」

重たい頭部をすっぽりとかぶると、視界は一気に暗くなった。

その瞬間、背中に強い衝撃を感じた。

「お母さんをいじめないで!」

分厚い着ぐるみの中で、少しぶつかるだけでも痛かった。

勢いよく押されたせいで、私は前のめりに転びそうになった。

額を着ぐるみの硬い部分に打ちつけ、一瞬目が眩んだ。

壁にすがりついても、なかなかめまいが治まらなかった。

しかし誰も私の心配などしてくれなかった。

母は結衣の手を取り、焦ったように声をかけた。

「結衣、手は痛くない?」

駿も顔をしかめた。

「あんな格好の奴を突き飛ばすなんて、結衣が怪我したらどうするんだ?」

冬馬は低い声で結衣をなだめた。

「大丈夫だよ。誰も結衣を責めないから」

皆が結衣を囲んでいる隙に、私はよろけながらその場を去った。

頬に何かが伝った。

それが汗なのか、涙なのかはわからなかった。

夕方には、打ちつけた額が大きく腫れあがっていた。

幸い、今日は給料日だった。

受け取ったばかりの給料袋を握りしめ、近くの屋台へと向かった。

温かいおでんを食べるのが楽しみだった。

考えるだけで、お腹が鳴りそうになった。

私は思わず口角を上げて、薄暗い屋台の明かりの中で店主にお金を差し出した。

しかしその瞬間、店主は私の手首を掴んだ。

「おい、冗談じゃないよな!」

店主は札を高く掲げ、不愉快そうな顔を見せた。

「身なりはいいのに、こんな子供だましでタダ食いしようってのか!」

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