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婚約者が私に内緒で妊活した第1話

この話は約2231字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

婚約者の深見響(ふかみ ひびき)から贈られた婚約祝いは、健康診断の受診券だった。

「これからの二人の幸せのためだから」響はそう言って微笑んだ。

検診当日、急な残業が入ったという彼に言われ、私は一人で病院へ向かった。

しかし、病院へ着くと、検診しないはずの響の検診結果を医師から手渡されたのだ。

「……あの、子作りをお考えですか?」

不可解そうに尋ねる医師に、私は首をかしげた。

「いえ、まだ先の話ですが……」

医師の表情はさらに曇った。「ですが、パートナーの方の報告書によると、ここ3ヶ月ほどかなりの量のホルモン剤やサプリを摂取されているようです。てっきり、妊活中なのかと思いました」

頭の中が真っ白になった。

彼はいつ検診に来ていたの?

しかも、妊活中?

婚約者の私が、何も知らないなんてことがあっていいの?

* * *

婚約者の深見響(ふかみ ひびき)から贈られた婚約祝いは、健康診断の受診券だった。

「これからの二人の幸せのためだから」響はそう言って微笑んだ。

検診当日、急な残業が入ったという彼に言われ、私は一人で病院へ向かった。

しかし、病院へ着くと、検診しないはずの響の検診結果を医師から手渡されたのだ。

「……あの、子作りをお考えですか?」

不可解そうに尋ねる医師に、私は首をかしげた。

「いえ、まだ先の話ですが……」

医師の表情はさらに曇った。「ですが、パートナーの方の報告書によると、ここ3ヶ月ほどかなりの量のホルモン剤やサプリを摂取されているようです。てっきり、妊活中なのかと思いました」

頭の中が真っ白になった。

彼はいつ検診に来ていたの?

しかも、妊活中?

婚約者の私が、何も知らないなんてことがあっていいの?

……

すぐさま響に電話をかけると、彼はいつもの優しい声で応じた。「どうしたんだい?結果に何かあった?変に心配しちゃダメだよ」

「響、お医者さんが言ってたわ。あなた、ホルモンバランスを整える薬を飲んでるって。本当のことを教えて。どういうことなの?」

震える声で問いただすと、一瞬、絶句したようだったが、彼はすぐ笑いながら説明した。

「ああ、あれか。友人の奥さんがなかなか授からなくてさ、海外から取り寄せたのを少し分けてもらったんだよ。将来僕たちにも役立つからって勧められて試しに飲んだだけだよ。考えすぎだって」

彼は優しく私をなだめたが、私の手元にある報告書には、先週の日付で彼の直筆サインが確かに記されていた。

報告書は嘘をつかないし、署名も本物だ。

響は嘘をついて、先週この病院に来ていた。

私に隠れて、一体誰と妊活をしていたというの?

「……わかったわ。疑ってごめんね。お仕事、頑張って」

震える手で電話を切り、必死に冷静さを装って家に帰った。

「検診、お疲れ様。甘いものでも食べて元気出しなよ」

響は私のお気に入りの店のシュークリームを手に、私を抱きしめて額にキスをした。

吐き気がした。

「お医者さんには異常なしって言われたわ」私はいつも通りの口調で答えた。

彼は私の鼻を指で弾いて笑った。「ほらね、僕の奥さんは健康そのものだ。それで……薬の件、もう気にしてないよね?」

白々しく探りを入れてくる。

私は彼の胸に顔を埋め、声を安定させて言った。「説明してくれたじゃない。信じてるわ。だって私たち、死が二人を分かつまで一緒……ね?」

響はホッと胸をなでおろした。「そうだね。僕が君を裏切るわけないじゃないか。君を妻に迎えるのは、僕の最高の幸せだよ」

私を妻にして、別の女と子供を作るつもり?

心の中で冷笑を浮かべつつ、私は何も知らないふりをして彼を見上げた。「ねえ、あなた……これからクライアントに会いに行くんだけど、道が悪いからあなたの車を借りてもいい?」

「いいよ。気をつけてな」彼は全く警戒せずに鍵を渡した。

彼の車にはドライブレコーダーがついている。

会社の駐車場に車を止め、エンジンを切ると、震える手で記録データをチェックしながら保存した。

彼が病院に行ったはずの先週から遡ってチェックしていく。

最初は普通だった。ただの通勤風景。

私の思い過ごしだったのか?

諦めかけたその時、ある映像に目が止まった。

彼は車を、私たちの「新居」があるマンションの敷地に止めた。

すると、ベージュのコートを着た女が車に乗り込んできたのだ。

暗くて顔は見えないが、声ははっきりと聞こてきた。「本当に健康診断なんて口実で言いくるめられたの?」

響が女をなだめる声が続いた。「仕方ないだろ。最近、彼女の勘が鋭くなっててさ。あれで安心させておけば、僕たちは心置きなく妊活できる」

女が不満を漏らした。「さっさと籍入れて、あの家をあなたの名義に書き換えさせなさいよ! 私とこの子をいつまでコソコソさせるつもり?」

響が女の髪を撫でて笑った。「わかってるよ。君と僕の子に不自由はさせない。国枝結菜(くにえだ ゆいな)はただのバカな女だ。僕のほしいものさえ手に入れば、すぐに離婚してやるさ!」

「そうこなくっちゃ。新居のあのダサいクローゼット、ぶち抜いて特大の子供部屋に変えさせなさいよ。どうせ手付金は二人で出したことになってるんだし、離婚の時にうまく立ち回れば、あの家はあなたの物でしょ?」

響が溺愛するような笑い声を漏らした。「君の言う通りにするよ。今は妊婦さんが一番大事だからね」

住民票、マンション、子供、離婚。

私の5年間の献身は、彼にとってマンションを手に入れるための踏み台に過ぎなかった。

私は必死に口を押さえて泣き声を漏らさなかったが、響からの着信が入った。

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