娘のお披露目パーティーに姿を現さない夫なんていらない第2話
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メイクも完璧で、疲れなどは微塵も感じさせない。
フラッシュが容赦なく焚かれ、激しい光が私を襲った。
メディア関係者たちは血の匂いを嗅ぎつけた鮫のように、瞬く間に押し寄せてくる。
「菖蒲さん!こっちにお願いします!」
「菖蒲さん、宮崎社長との不仲が噂されていますが、事実ですか?」
「宮崎社長に愛人がいるという噂がありますが、ご存知でしょうか?」
私は軽く体を翻し、無言を貫いた。
克哉は私の美しさに一瞬目を奪われたようだったが、すぐに気を取り直して私の腰を引き寄せる。
彼は顔を近づけ、私の耳元で囁いた。
「さすが俺の妻、スターだな。どこにいても注目の的だ。
それにしても、なんで俺が用意したドレスを着なかったんだ?わざわざ海外から取り寄せたのに」
克哉のとぼけたような労いの言葉を聞き、心の中には酸っぱい感覚がこみ上げる。
私の腰を抱いた克哉が数歩進んだ時、彼のスマホが鳴った。
画面を見た彼の顔に、嬉しそうな笑みが浮かんだ。
「どうしたんだ?今日は幼稚園の保護者会じゃないのか?」
すると、電話の向こうから、切迫しているようでいて、甘えた声が漏れてくる。
「もうすぐ始まるんだけど、みんな両親が揃っているのに、自分だけパパがいないって健太が泣き出しちゃって。少しだけ顔を出してくれないかな?」
克哉は呆れたように笑ったが、その口調はとても優しかった。
「二人とも、俺を困らせる天才だな。
分かった。10分で行くから待ってろ」
そう言って克哉は電話を切ると、スマホをポケットに放り込み、駐車場の方へ向かおうとした。
私は咄嗟に彼の袖をつかむ。
頭の中に色々な思いが駆け巡ったが、最後には小さくこう問いかけることしかできなかった。
「克哉。記者も関係者も大勢いるのに、本当に行くの?」
克哉が足を止め、振り返った。その眉には皺が刻まれている。
「当たり前だろ?恵美が困ってるんだから、行くに決まってるよ」
そばにいた海斗も克哉に顔を近づけ、小声で言った。
「克哉、ここで離れるのはまずいだろ。菖蒲さんが到着したばかりで、まだ会場にも入ってないのに」
もう一人の男も頷く。
「そうだぞ。こんな大物たちが来てくれてるのに会場から離れるなんて、有る事無い事記事にされるのがオチだ」
しかし、克哉は二人を一瞥すると、大したことないというように笑った。
「幼稚園の保護者会だ、30分もかからないよ。健太は俺になついてるんだ。俺が行かなきゃ声が枯れるまで泣きわめくだけなんだよ」
克哉は腕時計を見て、先程までの調子で笑い飛ばす。
「俺のフォローは頼んだ。すぐ戻るから」
しかし、私はその場に立ち、袖口をつかんだまま離さなかった。
「克哉。今日、このまま行くっていうなら、朋花には新しい父親を探すから」
克哉は少し呆気に取られた後、笑った。
それは、軽蔑と自信が入り混じった笑みだった。
「新しい父親を探す?そんなのどこで見つけてくるんだよ?
菖蒲、お前今いくつだ?そんな子供みたいな手段で俺を脅すなんて、恥ずかしいぞ」
克哉はジャケットの胸元から、精巧な特注のネックレスを取り出した。
「本当は朋花に直接かけてやるつもりだったんだけど」
そう言って、克哉はネックレスを私の手に押し付け、手のひらを指先でポンと叩いた。
「そんなことは言うな。いい子にしてろ。恵美は恵美で大変なんだよ。それに、あいつはすぐパニックになる。俺が今行かなきゃ、この後だって電話の嵐だ」
そう言い終えると、克哉は私の額に軽く口づけを落とす。
そして、振り返ることもなく去っていった。
私は立ち尽くしたまま、克哉がホテルの外へと消えていく背中を眺めていた。
周りのメディア陣が互いに顔を見合わせたかと思うと、フラッシュが狂ったように焚かれる。
「宮崎社長はどこへ行ったんですか?」
「菖蒲さん!宮崎社長は何か、急用かトラブルですか?」
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