姉に人生を奪われてから第2話
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でも、きっと彼女は失望するだろう。
司が会場に現れる直前、私は彼を部屋の中で待ち伏せた。
これが、彼との初めての対面だった。
背は私より一頭分高く、整った顔立ちには冷ややかさが漂っている。
……ふん、やっぱり簡単には近づけそうにない。
私は用意していた企画書を差し出した。
「今、新しいプロジェクトの運営に悩んでいるでしょう。これは私の案です。必ず利益を出せます」
孤児院で育ち、高校を卒業した後は進学できなかった。
けれど私は商才だけはずば抜けていた。
前世で千颯が新進気鋭の実業家になれたのは、私が軍師のように支えていたからだ。
「どうして俺が新規プロジェクトを抱えたと知っている?」
司は企画書を受け取り、長い指で数ページをめくった。
――前世ではあの案件は千颯のものだった。
彼は私を家に迎えてから優しくしてくれ、私はこの案で彼に有利な条件を勝ち取ってやったのだ。
だが今世では、調べたところその案件は司の手に渡っていた。
「調べました」
私は微笑んで答えた。
「源藤社長、これからは企画立案をすべて私に任せてください。ただし一つ条件があります。――源藤家では表向き仲良く過ごしましょう。でも私生活では互いに干渉しない、それでどうですか?」
彼は商人だ。利益こそが最優先。
私が価値を示せば、心を動かすはず――そう思っていた。
ところが、彼は眉を上げて私を見た。
「なるほど。俺と協力して安定を手に入れようってわけだな。でも母から聞いていないのか?俺が欲しいのは『妹』じゃない。『嫁』だ」
「……それは分かってます。だから、どういう意味ですか?」
困惑する私を見て、彼は唇の端を上げ、企画書を閉じた。
「案は悪くない。だが――いずれ君が俺の妻になった時、その案は全部、俺のものになる」
そう言い残し、彼はさっさと部屋を出て行った。
私は呆然とその場に立ち尽くした。
――今の言葉、どういう意味?
私に気があるってこと……?
いや、違う!
きっと一生私をこき使うつもりで、ああ言っただけだ!
ホールに出ると、司の母が私を引っ張り出し、周りの年長者に紹介した。
「この子が司の未来の嫁よ。性格もいいし、美人でしょ?」
みな一様に私を褒めそやす。
その横で、千颯に付き添う清乃は、暗い目で私を睨みつけていた。
彼女はワイングラスを手に、司の母の前に進み出る。
「奥様、源藤社長が帰国なさったと伺いました。ところで……私の妹ともう会われました?彼女を未来の妻として、本当に認めているんですか?」
――孤児院の時の態度で、彼女はすでに司の母に嫌われていた。
だからその言葉に、司の母の目がすぐさま険しくなる。
「余計な口を出すんじゃないよ!うちのことに口出しする資格なんて、あなたにあると思ってるの?」
その場にいた千颯の顔が一瞬青ざめた。
「申し訳ありません、源藤夫人。妹が無礼を……」
そう謝ったとき、彼の瞳には一瞬、陰の色がよぎった。
――その目を、私は前世で幾度も見た。
それは、悪夢の始まりを告げる合図だった。
私は思わず一歩後ずさり――気づけば温かな胸にぶつかっていた。
顔を上げると、そこには司がいた。
「気をつけな」
彼の目は微笑みを帯び、声は水のように優しかった。
清乃の顔が怒りで歪む。「どうして、司が清音にだけこんなに優しいの?」って、彼女はきっとそう思っているだろう。
「源藤社長、本当に私の妹が好きなんですか?彼女が孤児だって知ってます?しかも……以前、他人に襲われかけたこともあるんですよ!」
その言葉で、会場は凍りついた。
……あの日のことが脳裏によみがえる。
孤児院で眠っていた夜、突然中年男に服を破かれた。
襲われそうになった私は、咄嗟に花瓶で抵抗し――命からがら逃げ出したのだ。
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