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妻の流産より愛人の出産?絶対に離婚する!第1話

この話は約2343字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

私・神谷澄香(かみや すみか)が切迫流産で大量出血し、手術を受けていたその時、夫・神谷駿介(かみや しゅんすけ)は隣の分娩室で、愛人・一ノ瀬結愛(いちのせ ゆあ)が彼の息子を産むのを見守っていた。

やがて隣から、赤ん坊の産声と駿介の喜びの声が聞こえてきたが、私は泣きも喚きもせず、一人で手術を終えた。

ところがその夜、駿介のほうから病室へやって来て、私を責め立てた。「空いてる病室なんていくらでもあるのに、なんでわざわざ結愛の隣にしたんだ?嫌がらせのつもりか?」

かつて愛した人の顔を見つめ、私はそっと目を閉じ、何も言わない。

駿介はその後もしばらく私を責め続け、看護師が入ってきてようやく出ていった。

理不尽だと憤る看護師をよそに、私は笑った。

その直後、携帯に16億円の入金通知が届いた。

* * *

銀行から届いたメッセージを開くと、画面にはその金額が表示されていた。

16億円。

振込人は義父・神谷宗一郎(かみや そういちろう)だった。

間を置かず、宗一郎からメッセージが届く。【つらい思いをさせたな。だが、神谷家の血を引く子だから、外に置いておくわけにもいかないんだ】

私は携帯を胸元に伏せ、天井の青白い照明をぼんやりと見つめた。

まだ麻酔が完全には抜けていなくて、下腹部にはぽっかりと穴が開いたような、何か大切なものをえぐり取られたような空虚さだけが残っている。

隣から、また赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。とても元気な声だった。

続いて聞こえてきたのは、男の笑い声。聞き間違えるはずもない……駿介の声。

交際して4年、結婚して2年。耳元で何度も聞いてきたあの笑い声が、今はたった一枚の壁の向こうから聞こえてくる。なのに、まるで別世界の出来事のように感じてしまう。

廊下では看護師たちが話していた。声を潜めているつもりなのだろうが、静かな病室には嫌でも届いてくる。「423号室の患者さん、かわいそう……大量出血で運ばれてきたのに、旦那さん、隣で愛人の出産に付き添ってるんだって」

もう一人の看護師も声を潜める。「神谷家の人らしいよ。ほら、あの神谷グループの……旦那さん、ずっと前から不倫してるみたいだけど、奥さんの方の家族が離婚を許してくれないんだって」

「なんで?」

「お金でしょ。あれだけの家に娘が嫁いだら、そう簡単には手放せないじゃない?」

訂正する気力もなかったし、そもそも、訂正する気にもなれない。

駿介の不倫に初めて気づいたのは、ワイシャツの襟についた口紅が原因だった。

私はそのシャツを手に、寝室の前で仕事の接待に出ている彼の帰りを待った。

午前2時、酒の臭いをまとって帰宅した駿介は、私が持っているシャツを見ると一瞬だけ動きを止め、それから笑った。

「それがどうした?付き合いの席でたまたまついただけだ」

私は言い返した。「襟の内側についてるのに?どんな付き合いなら、そんなところに口紅がつくの?」

駿介は面倒そうに手を振った。「お前が信じないなら、それでもいい」

その夜、私たちは寝室で激しく言い争った。苛立ち任せにベッドサイドのランプを床へ叩きつけた駿介。砕けた硝子が、床一面に飛び散った。

裸足の私はその真ん中に立ったまま、駿介を見ていた。しかし、彼の顔にあるのは苛立ちだけ。後ろめたさなど、微塵もなかった。

翌朝早く、義父である宗一郎から電話がかかってきた。

宗一郎はいつも通り落ち着いた声で、淡々と言った。「つらい思いをさせたな。駿介はまだ若いから、あんな馬鹿なことをした。俺からもきつく叱っておいた。でも、夫婦の問題は夫婦で片づけなさい。外にまで騒ぎを広げれば、神谷家の名にも傷がつくから」

電話が切れてから10分も経たずに、私の口座に2億円が振り込まれた。

入金通知を見つめたまま、私はしばらく動けなかった。

2億円。

私が100年働いたって、稼げるかどうか分からない額。

そこで初めて、私は迷った。

看護師たちの言う通りだ。結局、私も金に負けた。

その後、母に電話をかけ、駿介が不倫していることを告げた。

数秒の沈黙の後、母は言った。「男なんて、仕事の付き合いもあるんだから、ちょっと遊ぶくらい珍しくないでしょ。澄香もいちいち目くじら立てないの。駿介さん、普段はよくしてくれてるんでしょ?それにお義父さんだって、ちゃんと間に入ってくれたんだから」

「お母さん。駿介、不倫してるんだよ?」

「だから何?お金持ちの男なんて、そんなものよ。あなたもこれくらいのことで騒がないで、ちゃんとやっていきなさい。それより、あなたの弟が来月車を買うって言ってるから、駿介に頼んで、車1台分くらいお金借りられないかしら?神谷家ならそれくらい何でもないでしょ?」

電話を切った私は、そのままベランダに立ち、夜が明けるまで冷たい風に吹かれていた。

それからも、2度目、3度目、4度目と不倫は繰り返された。

そのたびに、決まって宗一郎から電話がかかってきた。最初の言葉は、いつも同じ。「つらい思いをさせたな」そして振り込まれる金額だけが、回を重ねるごとに増えていった。

2億円、4億円、6億円と――まるで決められた処理でもこなすように、駿介が不倫をすれば、私の口座に慰謝料代わりの金が振り込まれる。

口座残高は恐ろしい勢いで増えていったが、それとは反対に、私の心は少しずつ沈んでいった。

かつて一番仲のよかった友人にも相談した。

話を聞き終えた彼女は、しばらく黙ってコーヒーをかき混ぜてから、こう言った。

「もう十分じゃない?私なんて毎日朝から晩まで働いて、満員電車に揺られて、上司に怒られても愛想笑いしてさ。給料日が来たって家賃払ったら、カフェに寄るのもためらうくらいなのに。今のあなたは豪邸に住んで、高級車に乗って、値段も見ずに買い物できるんでしょ?それで何が不満なの?」

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