妻の愛人にクビにされた僕。実は大財閥の御曹司第3話
この話は約1256字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
その時、会場の扉が勢いよく開かれ、体付きのいい男が中へ入ってきた。
美月の弟の一ノ瀬岳(いちのせ がく)だった。僕を狙ってここへ来たのは明らかだ。
次の瞬間、岳の蹴りが容赦なく僕の腹に突き刺さった。あまりの痛みに、身を屈める。
「秋人さんの結婚式で暴れてんのはお前か!」
会場から歓声が上がる。岳は僕の髪を掴み、怒鳴り散らした。
「ただの社員が、よくもそんなに偉そうに。身の程を知らないにもほどがある」
歓声の中で、僕は美月を見つめた。
彼女はグラスを指先でなぞりながら、黙り込んでいた。まるで僕がどんな目に遭おうと、興味がないかのように。
「美月、昔の約束を忘れたのか?」
彼女の肩がわずかに震える。そして僕から視線を逸らした。
「秋人とはただの兄妹みたいなもんだって、言ったよな?
もし僕を裏切るようなことがあったら、どんな報いだって受ける、そう言い切ったのは誰だ?
これからは僕と二人で前を向いて歩いていくって言ったのは全部嘘だったのか!」
すると、美月が冷たい声で言った。
「徹、チャンスはあげたはずよ。
さっき私の言う通りにしていれば、こんな騒ぎにはならなかった」
僕を非難していた人々も、次第に口を閉ざしていく。
そこへ、秋人が険しい表情で前へ出た。
「江崎さん。あなたのお母さんが長年会社で働いてくれていたから、情けをかけてあなたを会社に置いてあげていたんです。
多少問題を起こしても我慢してきましたが、こんな大事な席で根も葉もない話をするなんて!
美月の名誉に関わるんですよ!」
そう叫びながら、彼は僕の腕を掴んだ。
振り払うと、彼は大げさによろめき、近くのテーブルへ倒れ込んだ。
すると、割れたグラスの破片が翠の抱える子供に飛び、会場に悲鳴が響いた。
「子供が!うちの子が!」
彼はわめき声を上げながら、勢いよく立ち上がる。
「江崎さん!どうして子供まで巻き込むんですか!」
口を開く間もなく、美月の蹴りが僕を襲った。
「徹!恥を知りなさい!文句があるなら私に言いなさいよ!」
秋人の茶番を暴こうとした時、突然誰かに引きずられる。
気づけば岳がすぐ横にいた。その腕は万力のように僕の手首を締め上げる。
次の瞬間、瓶が頭の上で砕け散った。
額から血が流れ落ち、僕は地面に叩きつけられた。
割れたガラスの破片が容赦なく身体に食い込む。
意識が遠のく中で、流れ込んだ血で視界が真っ赤に染まった。
岳が僕の胸ぐらを掴み上げ、今にも殴り殺しそうな形相をしていた。
「このクズが、子供にまで手を出すつもりか!」
美月は振り向きもせず、秋人と子供のことだけを心配していた。
「徹、もう謝れば済む話じゃないわ。次は……」
「次は何だ!」
僕は抵抗して岳を突き飛ばす。
血で視界が滲む。傍から見れば、正気を失った人間に見えたかもしれない。
「美月、一ノ瀬家がどうなろうと僕の知ったことじゃない。
だが、君に僕を脅す資格があるのか!
君が社長になれたのは、誰のおかげだと思ってる!」
その言葉に、美月は眉をひそめた。
「何を言っているの?まさか私が今の地位に就けたのは、あなたのおかげだとでも言うつもり?」
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