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妻の座は親友に譲ります。復縁はお断り!第3話

この話は約1851字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

その日の夜、遠方の企業からメッセージが届いた。

【チーフデザイナーのポジションは現在も空いております。新規プロジェクトは40日後に始動予定です】

私はその誘いを引き受ける返信を打ち、着任日を「離婚手続きが完了した直後」に指定した。

そして迎えた結婚式当日。

私はブライズメイドのドレスを着て、誰よりも早くホテルへ向かった。

ゲストが集まり始めると、義母は私を「新婦の親友」として受付に立たせ、ご祝儀の受け取りと芳名帳の管理を押し付けた。

迎賓スペースでは、茜が智景の腕に絡みつき、幸せそうに参列者に挨拶をしている。

やがてウェディングマーチが響き渡った時、私は会場に流れているBGMが、やはり私の選んだ曲であることを悟った。

司会者が読み上げる愛の誓いの言葉も、私のウェディングノートから丸写しされたものだ。

婚姻届を出した日、智景は私を抱きしめてこう言った。

「この誓いの言葉は、大勢の前で君を妻として迎える時までとっておくよ」

ドレスも、指輪も、音楽も、誓いの言葉も、あの日の約束のままなのに。

私はただステージの下に立ち、彼が別の女性を娶る姿を見上げることしかできなかった。

指輪交換の時間が近づき、智景が私にステージへ上がるよう合図を送る。

茜は満面の笑みで私に手を差し出した。

「最高の親友だもの。寧音の手で、私を送り出してね」

私は、本来なら自分の指にはめられるはずだった結婚指輪を智景に差し出した。

彼がその指輪を受け取り、茜の薬指に通そうとした、まさにその瞬間だった。

私のスマートフォンが、けたたましく着信を知らせた。病院からだった。

祖母が心臓の発作を起こし、緊急搬送されたというのだ。

原因は、近所の住人から転送されてきた結婚式のオンライン配信のURLだった。

画面の中で、自分の孫娘が、愛する夫の結婚式でブライズメイドを務めている異常な光景を見てしまったのだ。

電話口で、看護師が切迫した声で告げる。

「お祖母様が、手術前の準備を頑なに拒否されています。

配信に映っていた結婚式は一体どういうことなのか、ご主人様の口から直接説明を聞くまでは絶対に手術室に入らないと……!」

私は参列者全員の目が注がれる中、初めて智景の腕を力強く掴んだ。

「一緒に病院へ来て。お祖母ちゃんに、これは何かの誤解だって、たった一言伝えてくれるだけでいい。お願いだから……!」

涙を流して懇願する私を見て、智景は一瞬心が揺らいだのか、本当にステージから一歩足を踏み出しかけた。

しかし、茜が目を真っ赤に腫らし、ウェディングベールを握りしめて叫んだ。

「指輪交換の途中で新郎がいなくなったら、まるで私が他人の夫を奪った泥棒猫みたいじゃない……っ」

義母も慌てて智景を引き止める。

「会場には篠原家の親族が勢揃いしているのよ!

今ここであなたが席を外したら、茜ちゃんは今後どうやって顔を上げて生きていけばいいの!」

智景の足がピタリと止まった。

数秒の沈黙の後、彼は自分の車のキーを私に押し付けた。

「お祖母さんには、優秀な医者がついている。でも、今の茜には俺しかいないんだ。

結婚式は一生に一度きりだ。儀式が終わり次第、すぐに病院へ向かうから」

私は絶望の中で彼に問うた。

「……もし、お祖母ちゃんがそれまで持ちこたえられなかったら?」

彼はスッと目を逸らし、何も答えなかった。

私は彼の手を振り払い、一人で病院へと車を走らせた。

手術室へ運ばれる直前、祖母は微弱な声で尋ねた。

「智景さんは……どうして来てくれないの?」

私は彼女の冷たくなった手を両手で包み込み、必死に涙を堪えて微笑んだ。

「今、こっちに向かっているところよ」

その時、私のスマートフォンから、結婚式のライブ配信の音声が流れた。

会場を包み込む割れんばかりの拍手。

智景は、私が考えた誓いの言葉で茜に永遠の愛を誓い、大勢のゲストの前で、彼女に甘いキスを落としていたのだ。

まもなくして、式の専属カメラマンが撮影した写真がオンライン上に公開された。

その中の一枚。

茜の後ろでブライズメイドとしてドレスの裾を持っている私の姿に、大学時代の同級生たちが気づいた。

誰かが、3年前の画像を掘り起こした。それは智景が私にプロポーズし、今日茜に贈られたのと同じデザインの婚約指輪を私にはめている写真だった。

2組の写真は、瞬く間に篠原家の親族たちのグループチャットへと拡散された。

だが、義父母は私が法的な妻であることなど知る由もない。

彼らは私が、親友という立場を利用して茜に近づき、3年間も智景に付きまとっていた厚かましい略奪女だと思い込んだのだ。

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