妊娠初期、極道の夫の愛人が私を挑発しに来た第3話
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パーティーが終わった後、悠人は用事があると言って早々に会場を後にした。
きっと、あの個室に隠していた美月の元へ向かったのだろう。
──パン、パン。
間もなくして、山の上から二発の銃声が鳴り響いた。
私はぼんやりと顔を上げ、視界の先に見知らぬ男たちがこちらへ歩いてくるのを見た。
そのうちの一人が銃を取り出し、私の額に狙いを定めた。
死を覚悟したその瞬間、見慣れた人影が私の前に飛び出した。
それは悠人だった。
銃声がさらに数発続き、悠人の左胸に一弾が命中した。彼は私を抱きかかえたまま、すぐ脇の斜面を転がり落ちた。
身体中が砕けた石に擦れて血だらけになりながらも、彼は私を守っていた。「怖がるな、大丈夫だ」と囁きながら。
混入した敵はすぐに制圧された。もともと彼らは情報収集のために潜入していただけだったが、私と鉢合わせたことで銃撃に及んだのだ。
数年前、悠人は他組織の妻を殺し、母子ともに命を奪った。その報復が今もなお続いているのだ。
病室で、私はベッドに横たわる悠人を見つめていた。
命さえ投げ出すような人なのに、どうして私にはこんな仕打ちをするのだろう。
彼の傷は深かったが、三日目には起き上がり、「向こうの組と取引の交渉がある」と言い出した。
その言葉を聞いた瞬間、少しばかり芽生えていた私の情が急速に冷めていくのを感じた。
私の視線に気づいた悠人は、少し怯えたような目をした。「本当に大事な話なんだ。行かないと……」
「そう」と私は淡々と応えた。
この数日、組内には結婚式の準備品がちらほら見えていた。昨晩、美月が私に送ってきた結婚式の招待状もあった。
悠人が向かう先は、私にはもう明らかだった。
美月の言った通りなのかもしれない。悠人はもう私を愛していない。
私の目に映る彼の顔も、もう美月と抱き合うあの光景と重なってしまっていた。
私は予定通り、ベイロン群島行きのクルーズ船に乗った。
──ピロン。
悠人からメッセージが届いた。【今、交渉現場に着いたよ、淑乃】
どうにかして自分を正当化しようとするのか、彼は交渉現場の写真まで送ってきた。
だがそれが偽りであることは、私にはすぐに分かった。
なぜならその時、私は美月から届いたライブ配信を見ていたからだ。
画面の中、結婚式は地下室で行われていた。私にバレるのを恐れて、わざわざ秘密裏に準備された式だった。
悠人は新郎衣装を身にまとい、左胸の傷からは再び血がにじんでいた。
それでも、彼は式を中止しなかった。
神父が誓いの言葉を読み上げた後、悠人は美月の手にキスをし、優しく語った。「誓います」
それを見た瞬間、自分の愚かさに笑いが込み上げてきた。
今朝、彼が「重要な交渉がある」と言った時、私はほんの少しでも彼を信じてしまった自分がいた。
本当に大切な用事なのかもしれない、と……
けれど悠人という男は、信じれば信じるほど、人を馬鹿にして弄ぶ人間だった。
彼は結婚式を終えると、私にメッセージを送ってきた。【交渉はうまくいったよ。夜ご飯は何がいい?】
【本当に交渉だったの?】
そう返信すると、ライブ配信に映る悠人の顔は一瞬で青ざめた。
そして次々と電話がかかってきた。
【本当に交渉だったんだ。帰ったら説明するから】と必死に言い訳するメッセージも届いた。
私は静かに、美月が送ってきたライブ配信を閉じた。
そして、私はもう遠く、南洋へと向かう船の上にいた。もう、東栄国から、神崎悠人の世界から離れていたのだ。
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