妊娠初期、極道の夫の愛人が私を挑発しに来た第2話
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私は医者に流産の事実を隠してもらった。
医者の蘭(らん)ちゃんは私が神浜の港で助けた女性で、私の指示だけに従ってくれる。
その後、私はベイロン群島行きのクルーズ船のチケットを予約した。
空虚な腹部にそっと触れ、悲しみに胸が張り裂けそうだった。
悠人との間に子供を授かるまでに十年かかった。その間、私は何度も私たち家族三人が過ごす未来を夢見てきた。
私はもう尊厳を捨てて彼を許した。ただ、もう二度と裏切らないでほしいだけだった。
ただそれだけの願いさえも、彼には届かなかったのか。
帰り道、悠人からメッセージが届いた。
【今日はお祝いのパーティーを準備したよ。あとで迎えに行く。】
流産後の帰り道、パーティー会場の前を通りかかった。
遠くからでも煌びやかな明かりが見え、近づくと聞き覚えのある甘ったるい女性の声が耳に届いた。
「淑乃さん、本当に羨ましいわ。悠人さんにこんなお祝いまでしてもらえるなんて。私もいつかこんな風に祝ってもらいたいな」
ドアの隙間から中を覗くと、悠人の表情が一瞬で険しくなり、美月の顎をつかんで言った。
「お前が余計なことを淑乃の前でしなければ、何でも望み通りにしてやる。ただし、正妻の座だけは与えられん」
美月は甘えるように続けた。「淑乃さんがつけてるあのピジョンブラッドのネックレス、欲しいなぁ」
悠人はあっさりと答えた。「馬鹿な真似さえしなければ、あいつが持っているものは全部お前にもやる」
私の前での激怒も、結局は演技だったのだ。
前回の事件のあと、悠人が少しは反省してくれると思っていた。
悠人がこの機会を大切にしてくれて、もう二度と裏切らないだろうと信じていた。
だが彼は自分が間違っているとは一切感じておらず、隠し方が足りなかっただけと思っている。
ちょうどその時、私の携帯電話が鳴った。美月からの電話だった。
まるで私に二人の情事を聞かせるためだけに電話をかけてきたかのようだった。
「もう行かなきゃ、淑乃を迎えに行く」
そう言いつつ、美月は悠人の襟をつかんで隣の個室に引き込んだ。「もう少しだけ一緒にいてよ。淑乃さんが来たら、また一日中一緒にいるんでしょう?」
「駄目だ。淑乃は妊娠していて身体が弱いんだ。流産でもしたら大変だ」
「淑乃さんの赤ちゃんばっかり気にするのね。私にも悠人さんの子供がいるんだよ?私のことももっと大事にしてよ」
「もちろんだ。お前も俺の大切な宝物だよ」
私は何も知らないふりをしてパーティー会場に入った。「何を祝っているの?」
「奥様が妊娠されて気分が落ち込まないようにと、旦那様がご準備されたパーティーです」
可笑しくなった。全員が悠人のために嘘をついている。
私は仕切りの向こうに目をやった。二人の姿は見えなかったが、床に映る影が絡み合って動いているのは明らかだった。
私が到着したことに気づいた悠人が、美月を制止しようとした。
「もうやめろ。淑乃にバレたらまずい。責任は取れないぞ」
「大丈夫だってば。この方がスリリングでしょ。それにずっとご無沙汰だったんだから」
「淑乃さんに私たちが三年前から付き合ってることがバレたら、大変なことになりそうね」
「これ以上悪ふざけをすると、罰を与えるぞ」
電話越しに悠人の声は途切れ、二人の荒い息遣いだけが聞こえ続けた。
私は掌に爪を食い込ませ、その痛みに震えながら耐えた。
悠人、あなたはこうして何度も何度も私の心を踏みにじった。
三十分もして悠人が何事もなかったように現れた。
彼の顔には美月との情事の名残が色濃く残っていた。
いつもの優しい笑みが今はただ吐き気を催すだけだった。
悠人はまだ美月の体温が残る手で私の腹を撫でた。「赤ちゃんは元気か?俺がどれだけこの子を望んだか知っているだろう?」
この子が授かったとき、悠人は涙を流して喜んだ。
しかしそれは、彼が他の女を抱いた汚れた手で私に示す偽りの愛情を邪魔しなかった。
私が信じていた深い愛情や幸福は、すべて嘘と偽りで作られていた。
美しい幻想の仮面を剥がした先にあった現実は、ただ絶望するしかない真実だった。
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