女友達を優先する恋人とは、もう終わりにします第3話
この話は約1516字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
子どもの頃から智哉の涙を見るのが何よりつらく、今回も胸が締めつけられた。
どれほど深く傷つけられても、まだ智哉を愛している。その気持ちだけは、自分でも否定できなかった。
涙を拭おうと手を伸ばしたそのとき、リビングのテーブルに置かれた智哉のスマホが鳴った。その着信音を聞いただけで、また美羽だと分かった。
美羽からの電話だけは取り損ねないよう、着信音を個別に設定した。
伸ばしかけた手が、宙で止まった。
電話を終えた智哉は、慌ててバッグをつかみ、靴を履き始めた。
「病院の先生から、美羽ちゃんがまた高熱を出したと連絡があった。ちょっと様子を見てくる。玲奈、頼むから、もう勘弁してくれ。美羽ちゃんの世話で、俺も疲れてるんだ。帰ってくるまで待っててくれ」
そう言って頬にキスをしようとしたが、私は顔をそむけた。
智哉はまだ何か言おうとしたが、手にしたスマホが立て続けに鳴った。ちらりと私を見ると、そのまま背を向けて出ていった。
そんな姿は、嫌というほど見てきた。そのたびに見送った背中を、今も忘れていない。
自分のマンションで、婚約パーティーの準備中にたまった仕事を片づけるつもりだった。だが、母から電話があり、必ず実家へ戻るよう言われた。
婚約パーティーがまた台なしになったことを、両親も知ったのだろう。
両親はもう、恥をかかせてばかりの私など、娘とは思っていないはずだ。それなのに、今回はどうして突然、母が私を実家へ呼んだのだろう。
実家に戻ると、父・成瀬雅人(なるせ まさと)と母・成瀬佳代(なるせ かよ)がソファに並んで座っていた。二人は昔と変わらず仲がよく、その姿を見ているうちに、やるせなさが込み上げた。両親の仲がよかったからこそ、私も相手のために尽くせば、同じような幸せを簡単に手に入れられると思っていた。
それなのに、10年も尽くした私は、何ひとつ手に入れられなかった。
両親に声をかけようとしたとき、そばから刺々しい声が飛んできた。智哉の母・沢田真由美(さわだ まゆみ)だ。
真由美は派手に着飾り、鮮やかな赤いネイルを施した手でティーカップを持っている。
「玲奈ちゃん、また智哉を怒らせたの?幼い頃から一緒なんだから、あの子の性格くらい分かってるでしょう。もう少し智哉に合わせてあげなさい」
邦夫がわざとらしく咳払いをした。真由美をたしなめるふりをしているが、二人が似た者同士なのは誰もが知っている。真由美がこちらを責め、邦夫が横からなだめる。二人でそんな芝居をしているだけだった。
今、うちの会社は順調そのものだ。沢田家はうちが支えなければ、とっくに倒産していた。
それでも、私が智哉だけを一途に追い続けたせいで、沢田家は成瀬家なら簡単に言いなりにできると勘違いしている。
何かにつけて成瀬家に金を出させ、うちの仕事まで横取りしてきた。
両親はそんな私を快く思っていなかった。それでも、私は二人の実の娘だ。智哉と結婚すれば、沢田家とも親戚になる。そう思って、両親はこれまで多少のことに目をつぶってきた。
二人が今日ここへ来たのも、智哉の件だけではない。きっと金の話がある。
「まあ、二人のことには、私たちも口を出しません。佳代さん、今日は会社のことでお願いがあって来たんです。最近、資金繰りが厳しくて。少し援助してもらえませんか。いずれ親戚になるんですから、助け合ったほうがお互いのためでしょう」
二人が金の無心に来るのは、もう何度目か分からない。
智哉が私と結婚すると信じ込んでから、二人は毎日のようにギャンブルにのめり込んでいる。
父が私を見た。私の反応を待っているのだ。
金を出してもらえると信じ切っている二人を見て、どうやら今回は、その期待を裏切ることになりそうだ。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)
第4話は公式アプリで
当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。
S98033- 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
- アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。