女友達を優先する恋人とは、もう終わりにします第1話
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7度目の婚約パーティーで、沢田智哉(さわだ ともや)は、また私を残して昔からの女友達のもとへ向かおうとしていた。
付き合って10年。これは、私たちにとって7度目の婚約パーティーだった。
そのたびに、その女友達には決まって何かが起きた。
今回だけは、思わず智哉を引き止めた。
「あとは指輪を交換するだけでしょう。そんなに時間はかからない。少し熱があるだけなら、すぐに行かなくても大丈夫じゃない?」
それを聞いた智哉は、途端に怒り出した。
「玲奈、いい加減にしてくれ。美羽ちゃんが昔から体が弱いのは、分かってるだろ!それに、俺たちはもう10年も付き合ってるんだ。婚約パーティーなんて、一度くらい中止になっても別にいいだろ」
その場に私を残し、智哉は会場を出ていった。
けれど今回は、もう本当に疲れた。
* * *
婚約パーティーの会場で、私はステージの中央に立っている。智哉は今回も冷たく背を向け、一度も振り返らずに会場を出ていった。
いつもそうだった。智哉は親族の視線など気にも留めず、私一人をその場に残した。周囲からあれこれ言われるのも、決まって私だった。
私、成瀬玲奈(なるせ れいな)は、あと1年で35歳になる。智哉と付き合って、もう10年だ。
私と智哉は幼なじみで、私たちがまだ母親のお腹にいた頃、親同士が将来私たちを結婚させようと約束していた。
だが、そんな親同士の約束を本気にする者はいなかった。幼い頃から智哉に片思いし、いつか本当に智哉と結婚できる日を夢見ていたのは私だけだ。
ところが、智哉の父・沢田邦夫(さわだ くにお)は古いやり方に固執し、会社の経営を傾かせた。株価は下がり続け、ついには倒産寸前まで追い込まれた。
そこで沢田家は昔の約束を持ち出し、成瀬家との縁談を利用して会社を立て直そうとした。
長く会社を経営してきた両親は、邦夫の狙いをすぐに見抜き、初めから断るつもりだった。
だが、その話を偶然聞いてしまった私は、どうしても智哉と結婚したいと両親に食い下がった。両親は仕方なく折れ、まずは付き合ってみることを許してくれた。
両親を含め、誰もが私の気持ちを一時的なものだと思っていた。私なら、もっと家柄のいい相手を選べるからだ。
まさか、それが10年も続くとは、誰も思っていなかった。
今回で7度目の婚約パーティーだ。会場にいる親族や友人は、1回目や2回目の頃と比べるとずっと少ない。
両親さえ来ていない。
今も出席してくれるのは、仕事目当てでうちに取り入ろうとする人ばかりだ。
壇上に立ったまま、出席者全員の前で智哉に電話をかけた。これを智哉にすがる最後の電話にして、自分で退路を断つつもりだった。
「智哉、もういい加減にして。みんな、智哉が来るのを待ってるの。今回でもう7度目なのよ」
私の口元にあった司会者のマイクを通し、智哉の声が会場中に響いた。
「玲奈、何度言えば分かるんだ。美羽ちゃんは熱を出してる。人の命と、こんな形だけの儀式と、どっちが大事なんだ?
10年も付き合ってきたのに、まだ俺を信じられないのか?
もう電話してくるな。婚約パーティーなら、また今度ちゃんとやる」
引き止めようとした瞬間、智哉は電話を切った。会場中にどよめきが広がった。
智哉のせいで人前に恥をかくのは、これが初めてではない。もう慣れていた。
これまでと同じように、手際よく運転手を手配し、出席者をそれぞれ家へ送った。その間も、周囲のひそひそ話に一人で黙って耐えた。
両親とも、ほとんど連絡を取らなくなっていた。
最後の一人を見送ったあと、インスタを開くと、最新の投稿は白川美羽(しらかわ みう)のものだった。二人が手をつないだ写真も添えられている。
【慣れない場所でも、彼がいてくれてよかった】
写真には、珊瑚のブレスレットをつけたもう一人の手も写っていた。智哉の手だとすぐに分かった。
それは、智哉の誕生日に美羽が自分で作ったものだ。
私も智哉にダイヤモンドのブレスレットを贈ったが、智哉はすぐに売り払い、その金をすべて美羽へ渡した。
それなのに、美羽が作った珊瑚のブレスレットは、今も身につけている。
そのことを問い詰めたときも、智哉はひどく面倒そうに答えた。
「俺にくれたものなんだから、どうしようと俺の勝手だろ。
美羽ちゃんは地方から出てきて、一人で頑張ってるんだ。体だって弱い。友達として少しくらい助けたっていいだろ。
それに、この珊瑚のブレスレットは美羽ちゃんの手作りだ。玲奈のより、よっぽど気持ちがこもってる。せっかくの気持ちを無駄にできるわけないだろ」
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