和紙文夫の過ち、聖夜の別れ · 第1話設定≡

夫の過ち、聖夜の別れ第1話

この話は約1915字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

クリスマスイブの日、がんにかかっている3歳の息子の容態が悪化していた。息子は、クリスマスにパパからプレゼントをもらいたいと願っていた。

私は何度も夫に電話をかけたが、夫は苛立った声で怒鳴った。「毎日電話してうるさくないの?俺は真依ちゃんのためにモモを探してるだけだろ!それでもうるさく言うのか?」

「もしモモがいなくなったら、真依ちゃんはきっとショックで耐えられないよ!」

モモ?夫の最愛の人、夏井真依の犬のことか?

私は怒りをこらえながら、息子の空が今夜最期を迎えるかもしれないと伝えた。すると、夫は笑いながらこう言った。「葵、俺が知らないと思っているのか?空の性格が悪いのは全部お前のせいだ!

もし空がモモを蹴飛ばさなければ、モモはどうして突然出ていったんだ?明日、空には真依ちゃんに謝らせろ!」

電話を切った後、私は涙をこらえながら息子と最後のクリスマスを過ごした。

翌日、夫のSNSにはまだ犬を探しているという投稿があったが、私のSNSには息子の訃報が載っていた。

10年の結婚生活は、徐々に終わりを迎え、静かに消えていった。

* * *

ちょうどクリスマス前夜、病院から急に電話がかかってきた。焦った声で、「小林さん、空君の容態が急変しました!現在、緊急治療を行っています!旦那さんの電話が繋がりません!今すぐお越しください!」と言われた。

私はその瞬間、何もかも放り出して病院に向かうことしか考えられなかった。普段なら私が息子のそばにいるけれど、今日はほんの少しの時間だけスープを作っていたのだ......

今夜は隼人が息子の側にいるはずだった......彼は確かにそう約束していたはずなのに!

でも今、彼は一体どこにいるのか?

途中、何度も隼人に電話をかけたが、どれも繋がらなかった。

怒りで全身が震え、私は彼にメッセージを送った。「隼人!今夜、私に何を約束したの?!空は今、治療を受けているのよ!」

病院に到着すると、私は狂ったように救急室へ駆け込んだが、先生が私を止め、重い口調で言った。「小林さん......心の準備をしてください......」

私は先生を押しのけ、必死に首を振りながら言った。「そんなことない!どうして!昨日まで元気だったのに!」

先生は私の肩を強く押さえ、「小林さん......空君の病状はもともと不安定でした。病室にはモニターが設置されていますが、家族が付き添っていなければ、異常に気づくのは難しいのです。今夜、空君のそばには誰もいませんでした......私たちは一歩遅かったのです。申し訳ありません」

その言葉を聞いた瞬間、私はその場に力なく座り込んでしまった。手にしたスマホをぎゅっと握りしめ、胸が痛くて息ができなかった。「隼人!」

どれくらい待ったのか、もう分からなかった。救急室の明かりが消え、手術を担当していた先生が出てきた。「空君のご家族、最後のクリスマスイブを空君と一緒に過ごしてください」

最後にクリスマスイブ......

どうしてこんなことに......

終末期の病室に戻ると、空は弱々しく目を開け、周りを見渡しながら言った。「ママ、パパはサンタクロースになってプレゼントをくれるって言ってたよね……そうだよね?」

私は彼の手をしっかりと握りしめ、悲しみを堪えながら言った。「うん、サンタさんは来るよ......」

頭を垂れたまま、スマホを開いて確認したが、やはり隼人からのメールは全く届いていなかった。

その時、私は無意識にタイムラインを開き、夏井真依の新しい投稿を見つけた。「モモちゃんがいなくなった、息ができない......モモちゃん、どこにいるの?」

その投稿に添付された写真は、クリスマスムードに包まれた街並みの中で、隼人が焦った表情でモモを探している姿が映し出されていた。

モモは、夏井真依の愛犬だった。

なんて皮肉なんだろう!

息子が命の危機に瀕しているというのに、彼は初恋の犬を探しているなんて!

私は怒りのあまり、コメントを残した。「空が死んだら、絶対にあんたたちを許さないから!」

その時、空が私の手を触りながら言った。「ママ、どうして泣いてるの?」

震えながら顔を上げ、初めて自分が涙を流していることに気づいた。それは空への自責の念、別れの辛さ、そして隼人への憎しみだったのかもしれない。

しかし今、私は笑顔で空と最後の時間を一緒に過ごさなければならない。

私はスマホの画面を消し、涙を拭いて言った。「ママはね、ただ嬉しかっただけ。今日はクリスマスイブだよ。空、無事でよかった」

その直後に、隼人から電話がかかってきた。空のために、思わず電話に出ることにした。

電話の向こうで、隼人は私よりも怒っているようだった。「葵!口を慎め!」

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