夫の妹だと思った女はまさか元妻だった第3話
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「それに、加奈子の子はお前のことを『叔母さん』って呼ぶから、お前の面倒だって見てくれるはずだぞ」
その言葉が、まるで刃のように胸に突き刺さった。
私が3年間も待ち望んでいた子供は、克哉が美羽に与える安心の形であり、私への「償い」のようなものだった。
愛してるなんて言葉を並べ立てていたけど、結局、克哉の心の中で私は一体何だったんだろう?
元妻の機嫌を取るための、ただの道具?
胃のあたりが激しく波打ち、洗面所へと駆け込んで何度も何度も吐いた。
そして、顔に伝う涙も拭わず、中絶の手術を予約した。
家に戻ると、ドアを開けた途端に手料理のいい匂いがした。
克哉はエプロン姿で、食卓には私の大好物ばかりがずらりと並んでいた。
克哉はいつもこうだ。美羽のせいで私がひどく傷ついた後には、必ずこうやって優しくしてくる。
自分の過ちを認め、反省しているように見せかけて。
私が情にほだされ、すべてを許すのを待っている。
だけど今回ばかりは、二度と騙されない。
席についても箸をつけず、私は署名済みの離婚届を克哉の目の前に突き出した。
彼は一瞬呆然とし、眉間にしわを寄せた。
「加奈子、前にも言っただろ?俺は離婚なんかしない。
美羽は俺の妹だ。困っている彼女を見捨てられるわけがない。どうしてお前はそんなに度量が小さいんだ?」
責任を私に押し付けるその様子を見て、私には皮肉な笑みがこぼれた。
克哉が3年間も隠し続けた嘘を、はっきりと口に出した。
「妹って?元妻の間違いじゃないの?」
克哉の表情が凍りつき、反射的に言葉が漏れた。
「全部、知っていたのか?」
やがて、どこかホッとしたように彼はこう言った。
「なんだ、そんなことで拗ねていたのか?
ちゃんと言えば、説明できる話だよ」
克哉は自分勝手に語り出した。
「元々、俺と美羽は性格の不一致で離婚したんだ。その後でお前と出会った。
だけど誰が予想できたか。美羽は離婚後に妊娠が発覚して、ショックで流産してしまい、それ以来もう子供を産めない体になったんだ」
私は冷ややかな目で克哉を見つめ、次の言葉を待った。
「だから俺に負い目がある。美羽の残りの人生を背負うのが、俺の役目なんだ」
克哉のその言葉を聞きながら、かつての幸せだった景色が私の頭の中を駆け巡った。
出会った頃、克哉は本当に優しかった。
体調を崩せば、一睡もせずに寄り添って看病してくれた。
雨の日は傘をさして迎えに来て、濡れないように傘をいつも私のほうへ傾けてくれた。
私のような天涯孤独な人間にも、克哉は、これからは自分が私の家族になると言ってくれた。
温かい家庭を築いて、一生大事にするから、二度と辛い思いはさせない、と。
あの一語一句が真実のように響き、光を見つけたと、私は本気で信じていた。
今となっては、その言葉が優しかった分だけ皮肉に響く。
克哉は全ての忍耐と愛情を美羽に捧げている。
私に残されたのは、裏切りと利用と、絶え間ない痛みだけ。
心が完全に凍りついたのを感じた。
「それはあなたの勝手よ。私には関係のないこと。
あなたが美羽さんに尽くすのは勝手だけど、私を巻き込まないで。
離婚届にサインして。家と貯金は折半よ。その後、美羽さんとどうなろうと私の知ったことじゃないわ」
家という言葉を聞いて、克哉は言葉を濁し、視線を泳がせた。
結局、最後には声を落として打ち明けた。
「入籍後、美羽が不安だというから……家は既に彼女名義に変えてあるんだ」
私の手から力が抜け、持っていた食器が音を立てて床に叩きつけられた。
結婚当時、克哉はあれほど申し訳なさそうに、元妻と離婚した時は一文なしで出たからマイホームは買えないと言っていたのに。
私が「大丈夫だよ」と安心させ、長年コツコツ貯めた頭金を出し、二人で頑張って家を買おうと誓い合ったのだ。
引っ越してからも、毎月のローンは二人の生活費から捻出してきた。
ずっと二人の未来のため、私たちの小さなお城を築いているのだとばかり信じていた。
なのに今克哉は、私のこれまでの苦労はすべて美羽のためだったのだと言い放つ。
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