夫の妹だと思った女はまさか元妻だった第2話
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克哉は口を開こうとしたが、言葉に詰まってしまった。
彼は眉間にしわを寄せたまま、黙り込んだ。
その時、克哉にすがりついていた美羽が、いかにも傷ついたような声で言った。
「加奈子さん、怒らないで。全部、私が悪いの。こんなところに居座って、加奈子さんを嫌な気持ちにさせちゃって……
今すぐ出ていくから、もう迷惑はかけないわ」
そう言うと、美羽は家を出て行くような演技を始めた。
そのわざとらしい態度を見て、私は冷ややかな声を上げた。
「出ていく必要なんてないわよ。私が出るから。『仲良し兄妹』の邪魔者にならなくて済むしね」
一度は落ち着いた克哉の怒りが再び燃え上がり、表情が険しくなった。
「加奈子、いい加減にしろ!
お前に親兄弟がいるのか?俺を失って、どこに行くっていうんだ?」
その言葉が漏れた瞬間、克哉自身も自分がひどいことを言ったと悟ったのか、ハッとした顔をした。
焦りの表情を見せた彼は、謝ろうと口を開きかけた。
しかしその時、美羽が力なく倒れ込み、克哉の胸の中で気を失った。
克哉はもう私のことなど眼中になく、真っ青な顔で美羽を抱きかかえると急いで部屋を出て行った。
二人が身を寄せ合って去っていく背中を見る。
立ち尽くす私の胸の中で、最後の期待と愛情が静かに消えていった。
私は泣きわめくこともなかった。
静かに振り返り、弁護士の望月颯太(もちづき そうた)に連絡して離婚に関する書類の作成を頼んだ。
……
克哉が帰ってこない日が、もう3日も続いている。
ただ、毎日決まった時間にラインが届く。ひたすら謝りの言葉が並んでいた。
自分が間違っていた、悪かった、今度戻ったときに直接謝る、と。
画面の文字を見ても、私の心が震えることはなかった。
克哉がいつ帰ろうと、もう興味はなかった。
1日でも早く、離婚届に署名してほしいだけだった。
けれど離婚を待っている間に、私は自分が妊娠していることに気づいた。
天涯孤独な私は、ずっと自分だけの本当の家族がほしいと願っていた。
だから克哉との結婚生活では、子作りにも真剣に取り組んでいた。
しかし、現実はうまくいかなかった。
この3年間、数え切れないほど病院に通った。
検査をし、薬を飲み、針を打ち、計り知れない苦痛に耐えても、お腹に命は宿らなかった。
それが今、最も相応しくないこの時期に、命が芽生えてしまったのだ。
手に持った妊娠検査結果を見つめ、心が複雑な思いで揺れ動く。
そんな時、曲がり角の先から懐かしい声が聞こえてきた。
克哉の声だ。
顔を向けると、彼は大事そうに美羽の腰を支え、ゆっくりと通り過ぎようとしていた。
私は無意識のうちに後を追った。
だが、入り口付近で二人の会話を聞き、その場に釘付けになった。
美羽が静かに問いかける。
「加奈子さんが本気で離婚したいと言い出したら、別れるつもり?」
克哉は長い沈黙の末に答えた。
「離婚はしない。加奈子は俺の妻だから。別れようと言われても、その分後で埋め合わせをすればいい」
扉の外で、私は思わず自嘲気味に笑ってしまった。
妻?
そうか。彼はまだ、私が妻であることだけは覚えていたらしい。
すると、克哉が続けて言った。
「もう加奈子には薬を飲ませていない」
薬?
なんの薬のこと?
心臓が激しく波打ち、鼓動が高鳴る。
次の瞬間、不満げな美羽の声が漏れてきた。
「何を言っているの?結婚した日からずっと、私が加奈子さんに妊娠できなくなる薬を飲ませていたことを、今さら責めているの?」全身を雷に打たれたような衝撃が貫き、私はその場に立ち尽くした。今聞いたことが、どうしても信じられなかった。
3年間妊娠できなかったのは、身体の問題ではなかったのだ。
美羽がずっと裏で、私に妊娠できなくなる薬を混ぜて飲ませていたからだ。
しかも、克哉はその事実を知っていた。
私がまだ衝撃で頭が真っ白になっている中、克哉はなだめるような声を出す。
「責めてなんかいないよ。責めるわけないだろ?
お前には子供が産めないから、加奈子の妊娠が許せないんだろ。わかってる。
ただ、結婚して長くなるんだ……家に子供がいれば、加奈子への『償い』にもなるだろうから」
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