和紙文夫の不感症が治った相手は、私の妹だった · 第3話設定≡

夫の不感症が治った相手は、私の妹だった第3話

この話は約1833字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

それを聞いて、父は怒りで体を震わせ、浩輔と柚を指さした。

「もう一度言ってみろ!」

「だから、葵と離婚しようと思って」

浩輔は私を睨みつけながら、きっぱりとした口調でそう繰り返した。

「この三年間、もう我慢の限界なんだ。

葵、お前は反省すべきだ。だって今まで妻としての責任を果たしたことなんてないだろ?

お前は少しも女性らしい優しさがなく、氷みたいに冷たくて、強情な女だ。

お前と一緒にいても、情熱なんてかけらも感じない。まるで生き地獄で息が詰まりそうなんだ」

浩輔はそう言うと、柚の手を強く握った。そして優しい眼差しで彼女を見つめると、口の端をわずかに上げて続けた。

「それに対し柚は、俺に男としての自信を取り戻させてくれたんだ。

彼女は情熱的で、積極的で……お前が満足させてくれなかった分すべてを補ってくれた。

だから、俺はもう自分の気持ちに嘘はつきたくないんだ」

その言葉に、平手打ちを食らったようで、私の面子は丸々潰されてしまったのだった。

この三年間、浩輔の男としてのプライドを守るために尽くしてきたのに。その全てが、今、目の前で踏みにじられたのだ。

毎晩のように「焦らないで、次はきっと大丈夫だから」と浩輔を慰めてきた。私にだって色々と思うことがあるのに、浩輔のためにずっと我慢してきたのだ。

そう思っていると、彼の言葉で周りの親戚たちが、ひそひそと噂話を始めた。

「なんだ、原因は葵のほうだったのか。それじゃあ浩輔も浮気するわけだ」

「普通に見えるけど、まさか性的に淡白だったなんてね」

「やっぱり女が満足させてあげられないと、男は外に目を向けたくなるものね」

その聞くに堪えないひそひそ話が、針のように私の耳に突き刺さった。

父は怒りのあまり唇を震わせ、二人を殴ろうと手を振り上げた。

それを直美が止めると、今度はわざとらしく私の腕を取った。

「葵、そんなに落ち込まないで。気持ちの問題は無理強いできないものだから。

浩輔がもう決めたことなんだし、なら、私たちも分かってあげないと」

だが、それを聞いた父は首を横に振ると、冷たい視線で直美をちらりと見た。

「なら、俺たちも離婚しよう!」

そう言って父は浩輔と柚を、黙ったまま睨みつけた。

一方で直美は父の言葉を気にも留めず、ただ眉をひそめて私を見つめるのだった。

そして、柚も浩輔の腕の中で泣きじゃくっていた。その様子はまるで彼女こそが浩輔の妻であるかのようで、私が逆に、二人の仲を引き裂く悪者みたいだった。

「葵、ごめんなさい。私だってこうはしたくなかった……

ただ、私と浩輔さんは本気で愛し合ってるの。この気持ちは、もう止められない……

だからお願い、私たちを一緒にいさせて……」

なんて息の合った、完璧な芝居だろうか。

彼らは全ての責任を、私一人に押し付けようとしているのだ。

この結婚が破綻した原因は、全て私にあるのだと言わんばかりのごたくを並べて、責任を擦り付けようとしているのだ。

目の前にいる直美たちを見ていると、私はなんだか可笑しくなってきた。

そして、冷静に浩輔を見つめて言った。

「つまり、離婚理由は『性の不一致』ってことでいいわけ?」

それを言われて浩輔は一瞬固まった。彼は私がこんなにも冷静でいられるとは思っていなかったようだ。

ほどなくして、浩輔は頷いた。「ああ」

私も頷き、バッグからスマホとボイスレコーダーを取り出して、テーブルに置いた。

「じゃあ、さっき言ったことを、これに向かってもう一度、言ってみて。

どうして私が『ダメ』だと思ったのか。そして、柚がどうやってあなたを『男にしてくれた』のか。そのへんも詳しくね。

ちゃんと言えたら、すぐにでも離婚届にサインしてあげる」

すると、浩輔の顔から、さっと血の気が引いた。

彼はまさか私がこんな手で反撃してくるなんて、思ってもみなかったのだろう。

浩輔は親戚の前で私を貶めることはできても、その内容を世間に公表する度胸はなかった。

なぜなら、私たちの夫婦関係の問題の根源が、自分の「病」にあることを浩輔自身が一番よく分かっているからだ。

万が一それが公になれば、外科の世界で期待の新人ともてはやされていた浩輔は、たちまち病院中の笑い者になってしまう。

浩輔の築き上げてきたイメージもキャリアも、一瞬で崩れ去るだろう。

だから、柚も慌てて、浩輔の腕にすがりついた。

「浩輔さん、やめて……」

一方で浩輔は私を睨みつけた。その目には、明らかに恐怖の色が浮かんでいた。

そして、彼は歯を食いしばった。

「葵、お前は一体どうしたいんだ?」

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