和紙文夫に援助されていた女子大生に祖父を轢かれて、私はすべてをぶち壊した · 第2話設定≡

夫に援助されていた女子大生に祖父を轢かれて、私はすべてをぶち壊した第2話

この話は約1886字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

神崎グループが業界で頭角を現すにつれ、実也は忘れてしまった。

自分が祖父の独占医薬特許を足がかりに、無数の大企業との競争を勝ち抜いてきたことを。

あの頃、祖父の背中を追い、黙々と実験に打ち込みながら、私に飴を差し出してくれた——あの素朴で真っ直ぐだった青年は、もうどこにもいない。

残っているのは、業界にその名を轟かせる冷徹な実業家、神崎グループの社長だけだった。

集中治療室で、無数の管に繋がれて横たわる祖父の姿を見つめながら、私は心の底から実也を憎んだ。

——どうして彼は、恩師を傷つけた加害者を、あんなにも当然のように庇えるのだろう。

許さない。私は、美慧を決して許さない。あの二人に、必ず代償を払わせる。

弁護士たちは静かに告げた。

祖父は結婚前、すでに私のために特許譲渡書を準備しており、それは私個人の結婚前の財産として法的に保護されているのだと。

つまり、たとえ結婚していたとしても、実也が祖父の特許に触れる権利など、最初から一切存在しなかった。

午後三時過ぎ、私は家に戻った。

ただ必要書類を取りに立ち寄ったはずだったが、リビングでは実也と美慧が、何食わぬ顔で並んでソファに腰掛けていた。

美慧の手には、祖父が私のためにお寺で祈願し、手に入れた「福をもたらす」と言われる人形が握られていた。

怒りが一瞬にして込み上げた。

「誰が私の物を触っていいって言ったの!?それを置いて、この家から出て行って!」

驚いた美慧は、すぐに実也の背後に身を隠し、今にも泣き出しそうな顔で怯えたように震えた。

「清乃さん……あの事故の件で私を訴えるって、もう学校中の噂になってて……あそこにはもう居られません……」

そう言いながら、彼女はわざとらしく席を立つ。

「お邪魔してごめんなさい。実也さん、やっぱり私は学校に戻ります……」

だが、実也は彼女の腕を掴み、元の位置へと押し戻した。

二人の距離は、私が部屋に入ってきた時よりも、なお近くなっていた。

「清乃、もう十分に譲歩してきた。今日中に訴訟を取り下げろ!

さもないと、この家にお前の居場所はない」

吐き気がした。平然と真実をねじ曲げる男の言葉に、私はもう応じる気も失せた。

階段を上がり、無言のまま証拠品をまとめながら、私は静かに言い放った。

「よく覚えておいて、実也。私の方からあなたを捨てるのよ」

彼は動きを止め、美慧への手を引き戻すと、私の手首を乱暴に掴んだ。

「今、なんて言った?」

私は冷笑を浮かべた。

「私はね、『誰かの使い古し』なんて使わない主義なの」

「もう一度言ってみろ!」

声は冷えきり、瞳には血のような色が宿っていた。

その瞬間、美慧の手からあの人形が滑り落ち、床に砕けて、無惨に二つに割れた。

私の中で何かが弾けた。

「わざとやったのね……!」

美慧は涙を浮かべ、手を振って否定する。

「清乃さんに驚かされて……でも謝ります……」

だが実也は、彼女を背中で庇いながら吐き捨てた。

「ただの安物の人形に、謝る必要なんかない」

——彼は知っていた。

祖父が、私のために祈り続け、心を込めて授かったあの一点ものの人形であることを。

それを「安物」と言い切るその声に、胸の奥が深く裂けた。

私はゆっくり立ち上がり、呼吸を整えた。

「私が出て行けば、あなたたちも自由になるでしょ?

『神崎家の嫁』の席も、すぐに空けるわ。誰がそこに座るかなんて——私には、もうどうでもいいの」

私の皮肉を聞き取った実也は、怒りを爆発させた。

容赦のない一撃が頬を打ち、私は床に倒れ込んだ。

「ふざけるな!美慧ちゃんは、俺が援助してる学生だ。ずっと妹のように思ってきたんだ。君は、俺たちの名誉を潰す気か!」

頬を押さえながら、私はただ静かに、自分の中の何かが音もなく崩れ落ちていくのを感じていた。

——十何年の時を共にした彼が、私に手を上げた。その理由が、美慧のためだった。

実也は無言で玄関へ向かい、私の荷物を外に放り出した。

「こんな手で俺を操れると思ったら、大間違いだ。君がどこへ行こうと興味はない。訴訟の取り下げ、猶予はあと半日だ!」

無言で扉が閉ざされるのを見届け、私は荷物を拾ってタクシーに乗り、法律事務所へと向かった。

必要書類を提出し、祖父の遺した特許譲渡書を正式に受け取る。

分厚い契約書の束を前に、私はそっと目を伏せた。

——これが、祖父が人生を賭けて築き上げた結晶なのだ。

そのとき、対応していた弁護士が、一枚の契約書を差し出してきた。

「神崎様、安栄ホールディングスより、当該特許の五年間にわたる譲渡権につきまして、二百億円での買収意向が寄せられております。

もしよろしければ、直接お話を伺いたいとのご希望がございます」

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