夫に幼なじみの足を洗えと言われた第3話
この話は約1201字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
出口へ向かうと、いつの間にか外は土砂降りになっていた。
配車アプリによると、待ち人数がパンク状態で、配車までにかなりの時間を要する見込みだ。
しばらく前から降り続けていたらしい。
降りしきる雨の中へ足を踏み入れ、顔を上げた。
雨粒がまつ毛を伝って、目の中へ落ちてきた。
目が刺激されたのか、じわじわとしみけるような痛みが広がった。
一台の車が勢いよく通り過ぎ、泥の混じった水しぶきが全身に降りかかった。
白いワンピースはたちまち泥だらけになり、見るも無残な姿になった。
……
歩いて家に辿り着いた時には、もう夜の十時だった。
扉の外に立つと、中から楽しげな話し声や笑い声が聞こえてきた。
凜が興奮した様子ではしゃぐ声で言った。
「そのワンピース、本当に素敵です。眉子さんの雰囲気が、服をさらに高級に見せてる気がします」
だが次の瞬間、続いて放たれた言葉に、私の心は氷のように冷え切った。
「うちの母とは大違いですよね、田舎のおばさんみたいで。それで眉子さんの真似して白いワンピースなんか着ちゃって」
凜を産む前、私だってスタイルがよかった。
出産当日でさえ、医者に「臨月でここまで体型を維持している妊婦さんは珍しい」と褒められたほどだ。
しかし、予期せぬ事態が起こった。自然分娩を試みたが胎児の位置が悪く、難産となって大量出血を起こした。
床一面が血に染まり、三度も危篤状態に陥った。
産後は体がすっかり弱り、ホルモン剤を大量に打った。
副作用で、空気を吹き込まれた風船のように体はみるみる膨らんでいった。
栄養失調になるほど食事を減らし、倒れるほど腹を空かせても、一グラムも体重は落ちなかった。
凜がまだ小さかった頃、私のお腹の贅肉をつまみ上げた時のことを、今でも覚えている。
目に浮かんでいた嫌悪と軽蔑は、今も忘れられなかった。
「僕の友達のお母さんって、みんな痩せてきれいでおしゃれなのに、どうして母さんはこうなの?」と凜は言った。
「絶対怠けてるんだ。友達にからかわれて、僕の気持ちも少しは考えてよ」
その頃は、子供の言葉だから本気にしてはいけないと自分に言い聞かせた。
無邪気に言っているだけで、悪意はないはずだと。
でもある日、凜の学校で懇談会があった。
彼は私に黙って謹也に頼んだが、ちょうど都合がつかなかった。
すると彼は眉子に電話して、保護者の代わりに来てもらったのだ。
凜に懇談会があると知った私はすぐに駆けつけたが、そこで目にしたのは、彼は得意げに眉子を連れて友達に紹介している光景だった。
「こっちが本当の母さんだよ。この前の人はうちの家政婦だから」
友達は半信半疑ながらも、調子を合わせるように笑い声を上げた。
「そうだと思ってたよ。お前の母さんがあんなはずないって。家政婦だったんだね」
凜は小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「父さんが優しいから我慢してただけで、本当はとっくに追い出したかった。
あのブスが作るご飯なんて食べるたびに吐きそうだし!」
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)
第4話は公式アプリで
当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。
R72745- 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
- アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。