夫と愛人の結婚式、プランナーは私でした第1話
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結婚式プランナーである私は、自分の夫とその浮気相手の結婚式を、この手でデザインした。
神蔵遥生(かみくら はるき)と付き合って五年。
三年はコロナ禍で、二年は結婚と出産。
ずっと憧れてきた結婚式は、彼の口から聞けばいつも「また今度」。
そんなある日、新しい結婚式の依頼が入った。
依頼主はまだ若い女の子で、目元がふわっと笑っていて、とても幸せそうだった。
「ここ、彼氏が選んでくれた場所なんです。絶対にここで挙げたいって」
資料を受け取り、視線が会場の名前に落ちる。
――私が何度も夫に提案し、夢にまで見たフランスの教会。
まさか同じ趣味の人がいるなんて、と苦笑しそうになった次の瞬間。
視界に飛び込んできた新郎の名前。
神蔵遥生。
指先が、紙の上で音もなく止まった。
向かいの女の子は幸せに浸ったまま、さらに嬉しそうに続ける。
「私たち、まだ付き合って二ヶ月なんですけど……。でも彼、私に最高の結婚式をあげたいって」
私は口元をゆるめ、五年間毎日見てきたその男の名前を見つめた。
――ようやく訪れた。彼の結婚式をプランニングする、この瞬間が。
残念なのは、花嫁が私じゃないってことだけ。
* * *
結婚式プランナーである私は、自分の夫とその浮気相手の結婚式を、この手でデザインした。
神蔵遥生と付き合って五年。
三年はコロナ禍で、二年は結婚と出産。
ずっと憧れてきた結婚式は、彼の口から聞けばいつも「また今度」。
そんなある日、新しい結婚式の依頼が入った。
依頼主はまだ若い女の子で、目元がふわっと笑っていて、とても幸せそうだった。
「ここ、彼氏が選んでくれた場所なんです。絶対にここで挙げたいって」
資料を受け取り、視線が会場の名前に落ちる。
――私が何度も夫に提案し、夢にまで見たフランスの教会。
まさか同じ趣味の人がいるなんて、と苦笑しそうになった次の瞬間。
視界に飛び込んできた新郎の名前。
神蔵遥生。
指先が、紙の上で音もなく止まった。
向かいの女の子は幸せに浸ったまま、さらに嬉しそうに続ける。
「私たち、まだ付き合って二ヶ月なんですけど……。でも彼、私に最高の結婚式をあげたいって」
私は口元をゆるめ、五年間毎日見てきたその男の名前を見つめた。
――ようやく訪れた。彼の結婚式をプランニングする、この瞬間が。
残念なのは、花嫁が私じゃないってことだけ。
資料を置き、向かいの女の子をあらためて見つめた。
年齢は若く、肌は白く、身体も少し華奢。
私が長く黙っていたせいか、落ち着かない様子で視線が泳いでいる。
久野青羽(くの あおは)が、恐る恐る口を開いた。
「志水優衣(しみず ゆい)さん、資料……何か問題ありましたか?」
椅子の背にもたれ、もう一度、遥生の名前をなぞる。
「ううん、問題ないよ。
ただ……新郎の名前に、ちょっと見覚えがあって」
青羽がびくっと肩を揺らし、慌てて視線をそらす。
「えっ、そ、そうですか?気のせいじゃ……
か、彼、結婚歴なんてありませんよ」
口に出してから気づいたのだろう。彼女の表情が、見事に固まった。
私は目を伏せて小さく笑った。
――たった一言で、自分が「浮気相手」だとバレるほど動揺するなんて。
遥生、ほんとセンス悪い。
聞こえなかったことにして、私は指先で資料の写真を軽く叩き、話を戻した。
「久野さんはどうしてこの教会を選んだの?業界ではまだそんなに知られてない場所だよ」
彼女は私が追及しないとわかると、ほっと息をつき、少し誇らしげに言った。
「彼氏が選んだんです。
ずっと探してた『運命の場所』らしくて……大好きな人とここで結婚式を挙げるのが、ずっと夢だったって」
それから私を見上げ、目の奥に隠しきれない得意を滲ませながら言った。
「元カノたちとは、ここで結婚式を挙げたいなんて一度も思わなかったらしくて。でも私に出会ってすぐ、『ここだ』って確信したみたいです」
その陶酔しきった表情を見て、私は目を伏せて、胸の奥の嘲りをそっと隠した。
もし、彼女が私に気づいていなかったら――私はこれをわざと言っているのかと疑ったかもしれない。
私が遥生と付き合うと決めたのは、他人のために完璧な結婚式を作り上げていた頃――
彼だけが、私のための結婚式を細かく描き、夢のように語ってくれたから。
陽光がステンドグラスを通って降り注ぎ、私のウェディングドレス、彼のドレスコード、誓い合う姿まで、指を絡めながら丁寧に描いてくれた。
「お前の一番綺麗な時期に、忘れられない思い出を残したい」
そのたったひとつの約束を、私は五年間信じ続けた。
そして今――彼は確かに結婚式を挙げようとしている。
私が何度も夢見た、あの場所で。ただし花嫁は、付き合ってわずか二ヶ月の別の女。
私は小さく笑った。
「……素敵な愛だね」
――主役が私の夫じゃなければ。
私の「称賛」で勇気を取り戻したのか、青羽は再び恋の思い出を語り出した。
「この前、私、夜勤で病院にいたんですけど……彼、奥さ……家族の手術を待ってて、すごく取り乱してて……お医者さんの手を掴んで、『どうか無事にしてください』って……
かわいそうで、声をかけたんです」
恥ずかしそうに唇を噛み、続けた。
「その時の私の優しさに……一目惚れしたって」
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