夫が幼馴染と籍を入れたので、私も別の男と結婚した第1話
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私・夏川晴(なつかわ はる)を一人で育ててくれた祖父・夏川剛(なつかわ つよし)は、死ぬまでに私の花嫁姿が見たいと言った。
私はその願いを叶えるために、6年付き合った彼氏・九条司(くじょう つかさ)に、自分と結婚してくれないか、と17回も頼み込んだ末、やっと彼の同意を得ることができた。
だが入籍当日、司が幼馴染である桜井莉音(さくらい りおん)を連れて、役所から出てきたのだ。
「友達と賭けをしたんだよ。莉音と籍を入れられるかどうかって。俺だって、友達の前で情けない姿は見せられないからな」
そう言う司が、笑いながら渡してきたのは偽物の婚姻届受理証明書。
「お前のおじいさんには、これを見せて安心させてやればいいよな?どうせ偽物なんて気づきはしないんだから」
とても心が痛かった。しかし、司はもう歩き出していたので、私は必死に彼の腕をつかんで止めた。
「おじいちゃんと約束したの。必ず旦那さんを連れて会いに行くねって。
それに、あなたも一緒に会いに行ってくれるって言ったよね?」
司は隣の莉音を一瞥し、私の手を振り払った。
「いい加減にしろ。俺は今日入籍したんだ。お前に構ってる暇なんかないんだよ。
そんなに結婚したいなら、ロビーで適当な奴を捕まえて結婚すればいいだろ?俺は気にしないから」
* * *
私・夏川晴(なつかわ はる)を一人で育ててくれた祖父・夏川剛(なつかわ つよし)は、死ぬまでに私の花嫁姿が見たいと言った。
私はその願いを叶えるために、6年付き合った彼氏・九条司(くじょう つかさ)に、自分と結婚してくれないか、と17回も頼み込んだ末、やっと彼の同意を得ることができた。
だが入籍当日、司が幼馴染である桜井莉音(さくらい りおん)を連れて、役所から出てきたのだ。
「友達と賭けをしたんだよ。莉音と籍を入れられるかどうかって。俺だって、友達の前で情けない姿は見せられないからな」
そう言う司が、笑いながら渡してきたのは偽物の婚姻届受理証明書。
「お前のおじいさんには、これを見せて安心させてやればいいよな?どうせ偽物なんて気づきはしないんだから」
とても心が痛かった。しかし、司はもう歩き出していたので、私は必死に彼の腕をつかんで止めた。
「おじいちゃんと約束したの。必ず旦那さんを連れて会いに行くねって。
それに、あなたも一緒に会いに行ってくれるって言ったよね?」
司は隣の莉音を一瞥し、私の手を振り払った。
「いい加減にしろ。俺は今日入籍したんだ。お前に構ってる暇なんかないんだよ。
そんなに結婚したいなら、ロビーで適当な奴を捕まえて結婚すればいいだろ?俺は気にしないから」
真っ白な偽の婚姻届受理証明書が太陽を反射し、目が痛い。
そんな私たちのやりとりを見ていた莉音が、突然腹を抱えて笑い出す。
「司ってば、すごいんだけど。まさか、晴さんにそんなこと言うなんて。
捨てられちゃったらどうするのよ?」
すると司は莉音の腰を抱き寄せ、飄々と言った。
「捨てられたらどうするって?俺以外に、こいつをもらってくれるやつなんていると思うか?」
司はいつだって、こんな感じだった。
自信に満ち、余裕に溢れている。
なぜなら、どんなにひどいことをしても、私が最後には必ず許すと、司は知っているから。
莉音も私を横目で見てから、小馬鹿にしたように笑う。
「これでもまだ怒らないなんて。晴さん、本当に人がいいんだね」
だが、莉音は知らない。私が怒らないのではなく、もう心が枯れ果ててしまっていることを。
司と6年一緒にいて、入籍をお願いしたのは16回。
1回目は、莉音が失恋した直後で、こんな時期に結婚の話なんて可哀想だ、と言って断られた。
2回目は、莉音が転職して大変な時期だったため、あいつが落ち着くまでほっとけない、と先延ばしにされた。
3回目は、偶然にも莉音の誕生日。
司はクルーザーを貸し切って莉音の誕生日パーティーを催している中、私にこう言った。莉音を支えられるのは俺だけだから、と。
4回目、5回目……
理由は毎回違ったが、全て莉音に関することだった。
私の願いの優先順位は、いつも「莉音の世話」の次。
そして今日、17回目にしてようやく司は同意してくれた。
私はようやく祖父に結婚報告ができる、そう思った。
なのに待っていたのは、司と他の女が入籍したという結末。
すると、私をじっと見つめていた莉音が、突然口を開いた。
「だったらさ、私たちみんなで一緒にウェディングフォトでも撮る?晴さんも気にしてないみたいだし」
司は莉音の腰に回した手の力をぎゅっと強め、彼女の鼻先を人差し指で突いた。
目の前の私のことなど、まるで見えていないかのように。
「そんなの駄目に決まってるだろ?ウェディングフォトは、やっぱ晴と二人で撮らないと。
まあ、こんなつまらない話は終わりだ。
今日は俺たちが入籍した日だ。それに、何だかいろんな計画を立ててくれてるって言ってたよな?こんな所で時間を無駄にしてる暇はない。行くぞ」
そう言われた莉音は、上機嫌で司の腕を引いていく。
私は二人の背中を、ただ茫然と見つめるしかなかった。
その時、電話が鳴り響いた。祖父の主治医からだった。
「夏川さん。おじい様の容体が急変しました。すぐに病院まで来てください!」
私は固まってしまった。
祖父の急変に、手に握りしめた偽物の婚姻届受理証明書。
私は大きく息を吸い、顔を上げる。
「司!」
司の足が止まった。
彼は振り向いて私を見る。
「もしあなたがこのまま行くって言うなら……」
私は司を見据え、一語一句はっきりと伝えた。
「私は別の人と入籍するから」
司は一瞬、呆気に取られていた。
しかし、すぐに吹き出し、まるで冗談でも聞いたかのように言った。
「別の人?別の人って言ったって、他に誰がいるんだ?
晴、お前が俺のことが好きだって、みんな知ってるぞ?」
彼はそう言って車に乗り込む。
発車直前、窓から飄々と告げた。
「いい子だから、大人しく待ってろよ。こっちが終わったら会いに行ってやるからさ」
車は去っていった。
私はしばらくその場に立ち尽くしていたが、スマホを取り出し、一本の電話をかける。
そして振り返り、役所の中へと向かった。
……
「状態は安定しました。検査結果が出るまでこちらでお待ちください」
医師が丁寧に祖父の状態を教えてくれた。
私は集中治療室のドア越しに、やせ細った祖父の姿を見つめる。
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