夢醒めて花散る時に第1話
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十四歳のあの日、幼馴染で唯一のダンスパートナーだった鈴木星哉(すずき せいや)と私・高橋香乃(たかはし かの)は、共に拉致された。
私は命を懸けて彼を逃がし、助けを呼ばせた。その代償に、犯人から半殺しの目に遭った。
彼が両親と警察を連れて戻ってきた時、私はもう二度と立ち上がれず、ダンスを踊ることなど永遠にできない身体になっていた。
彼は泣きながら誓った。一生私を大切にすると、私が世界で一番素敵な女性だと言った。
それから私は、星哉の恋人となり、婚約者となった。
私を少しでも貶める者には、星哉は必ずや容赦なく報復した。
けれど、彼の「一生」がたった十年なんて、思いもよらなかった。
二十四歳の今、彼が新しいパートナーとインターナショナルダンス選手権大会で優勝した動画が、タイムラインに流れてきた。
彼はその子を高く抱き上げると、彼女は片手にトロフィーを抱え、もう片方の手で星哉の首を抱きしめ、その頰にはっきりと口紅の跡を付けていた。
そして星哉は、まぶしいほど輝く笑顔で彼女を見つめ返し、その眼差しにはあからさまな愛が満ちていた。
私の負けが決まった。ここで身を引く時が来たのだ。
* * *
十四歳のあの日、幼馴染で唯一のダンスパートナーだった鈴木星哉(すずき せいや)と私・高橋香乃(たかはし かの)は、共に拉致された。
私は命を懸けて彼を逃がし、助けを呼ばせた。その代償に、犯人から半殺しの目に遭った。
彼が両親と警察を連れて戻ってきた時、私はもう二度と立ち上がれず、ダンスを踊ることなど永遠にできない身体になっていた。
彼は泣きながら誓った。一生私を大切にすると、私が世界で一番素敵な女性だと言った。
それから私は、星哉の恋人となり、婚約者となった。
私を少しでも貶める者には、星哉は必ずや容赦なく報復した。
けれど、彼の「一生」がたった十年なんて、思いもよらなかった。
二十四歳の今、彼が新しいパートナーとインターナショナルダンス選手権大会で優勝した動画が、タイムラインに流れてきた。
彼はその子を高く抱き上げると、彼女は片手にトロフィーを抱え、もう片方の手で星哉の首を抱きしめ、その頰にはっきりと口紅の跡を付けていた。
そして星哉は、まぶしいほど輝く笑顔で彼女を見つめ返し、その眼差しにはあからさまな愛が満ちていた。
私の負けが決まった。ここで身を引く時が来たのだ。
……
「香乃、行きたいなら行きなさい。お父さんはいつでも味方だ」
私はデザイン留学を決意すると、父が背中を押してくれた。
父の目には、十年間変わらぬ慈しみと痛ましさが浮かんでいた。
「鈴木の小僧だけが全てじゃない。なにかあっても、父さんと母さんが必ず香乃を守るから、安心しろ」
私はうなずき、電動車椅子を操作して自室へ戻った。
ドアが閉まる瞬間、それまで保っていた平静の仮面が剥がれ落ちた。
スマホの画面はまだ明るく、あの刺さるような動画が再生されたままだった。
自虐的に、私はそれを何度も繰り返し見続けていた。
動画のコメント欄は、すでに熱狂的な祝福と無関心な残酷に埋め尽くされていた。
【あああ星雨CP結婚しろ!尊すぎて死にそう!!】
【これが真の王者コンビ!運命で結ばれた最高のパートナー!】
【鈴木選手の菅原選手見る目…もう完全にラブラブやん】
もちろん、私に言及する残酷な声も、当然のように混ざっていた。
【鈴木選手に障がいある婚約者いたよね?まだ覚えてる人いる?】
【↑その災厄タグはやめてくれよ。あの女さえいなけりゃ、星哉様は十年前に優勝してた】
【踊れないクズが世界チャンピオンにふさわしいわけないだろ。十年も足手まといで、とっくに消えろよ】
足手まとい、クズ。
その言葉を見つめていると、心臓を冷たい手で握り締められたような感覚に襲われた。痛みではなかった。ただ、深い麻痺のようなものだった。
実際、こうした言葉は車椅子に乗るようになってから、もう幾度となく聞かされてきた。
それでも星哉は、私を傷つける者には、常に全力で立ち向かってくれた。
私の陰口を言う同級生を壁に押さえつけ、折れるまで問い詰めたり。
私を中傷するメディアに、鈴木家の力を背景に、あっという間に沈黙させたり。
「香乃、怖がらないで。君に悪口を言う奴なんで、俺が絶対に許さないから」
彼は涙ぐんだ目で、そう言って私を強く抱きしめた。
けれど、人の心は変わるものだ。
罪悪感と責任感が、繰り返される日常の中で色あせていくにつれ、彼の私に対する感情は、もはや愛ではなくなっていた。
三年前、菅原詩雨(すがわら しう)が星哉のパートナーになってから。
私たちの間で、彼女の名前がよく出るようになった。
それでも彼の優しさは変わらなかった。
私の痛む日を覚えていて、車椅子を押して散歩に連れていって、最新の話題を笑いながら話してくれた。
だから私は、自分を欺き続けた。
彼は単に仕事上の相棒を見つけただけで、私こそが心の支えだと信じようとした。
なにしろ彼は、幼い頃から愛してきた人で、この足を代償に守った人だった。
だが今夜、この動画は冷や水を浴びせられたように、私に現実を突きつけた。
もう自分を騙せない。彼はもう、私を愛していない。
今の彼が私に抱いているのは、ほとんどが責任だけだ。
愛してもいない人を、責任や罪悪感で縛り続けることなど、もう意味がない。
この十年、私は鈴木星哉しか見ていなかった。
今、私は外の世界を見てみたい――彼のいない景色を、この目で確かめたい。
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