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執着の果て、私は光を掴む第1話

この話は約2091字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

篠原蒼真(しのはら そうま)の実家で開かれた食事会に参加した際、私、結城泉緒(ゆうき みお)はそろそろ結婚して家庭を持ちたいと自ら切り出した。

すると彼は、私が篠原家の財産を狙い、金目当てで嫁ごうとしているのだと決めつけ、皆の面前で私に十発以上も平手打ちを食らわせた。

そして、嫉妬して席を立った幼馴染を追うため、すぐさま私に背を向けた。

私は彼の手を掴み、行かないでと懇願したが、激高した彼に階段から突き落とされ、両脚と頭蓋骨の骨折の重傷を負った。

ICUで一ヶ月間治療を受け、ようやく意識を取り戻した。

今回、私は泣き喚いて騒ぐような真似はせず、自ら海外に住む母に連絡を取った。

「お母さん、この前話していた遺産相続の件、引き受けるわ」

* * *

篠原蒼真(しのはら そうま)の実家で開かれた食事会に参加した際、私、結城泉緒(ゆうき みお)はそろそろ結婚して家庭を持ちたいと自ら切り出した。

すると彼は、私が篠原家の財産を狙い、金目当てで嫁ごうとしているのだと決めつけ、皆の面前で私に十発以上も平手打ちを食らわせた。

そして、嫉妬して席を立った幼馴染を追うため、すぐさま私に背を向けた。

私は彼の手を掴み、行かないでと懇願したが、激高した彼に階段から突き落とされ、両脚と頭蓋骨の骨折の重傷を負った。

ICUで一ヶ月間治療を受け、ようやく意識を取り戻した。

今回、私は泣き喚いて騒ぐような真似はせず、自ら海外に住む母に連絡を取った。

「お母さん、この前話していた遺産相続の件、引き受けるわ」

……

一人で退院手続きを済ませると、私はタクシーを拾い、蒼真の会社へ向かった。

会社のビルの前に立った時、九年間も働いてきたこの場所が、急に自分とは縁もゆかりもない、よそよそしい場所のように感じられた。

たった一ヶ月離れていただけなのに、社内システムから私の情報は跡形もなく消去されており、警備員にも行く手を阻まれて中に入れてもらえない。

仕方なくスマホを取り出し、蒼真に電話をかけたが、一向に出る気配はなかった。

代わりに、星野莉乃(ほしの りの)からビデオ通話がかかってきた。

画面の向こうで、彼女は口角を上げ、少し申し訳なさそうな口ぶりで言った。

「泉緒さんがこんなに早く退院するとは思わなかったわ。蒼真ったら私の身の安全を心配して、今は見知らぬ人を会社に入れないようにしているの。でも心配しないで、今すぐ警備員に入れてもらうように伝えるから」

莉乃の指示により、固く閉ざされていたゲートが私のために開かれた。

私は数秒間その場に立ち尽くした後、ゆっくりと中へ足を踏み入れた。

蒼真のオフィスのドアはあえてなのか、隙間が開いたままだった。中へ入ると、肌もあらわなキャミソール姿の莉乃がソファに腰かけ、勝ち誇ったような笑みを浮かべて私を迎え入れた。

傍らにいる蒼真は上半身を剥き出しにしており、二人の間にはひときわ艶めかしい雰囲気が漂っていた。

私は一瞥しただけで視線を戻し、躊躇することなく退職届をデスクの上に置いた。

私に無視されたのを見て、蒼真は眉をひそめ、私の前に立ち塞がって釈明した。

「莉乃は帰国したばかりなんだ。両家が昔から親しいのは知ってるだろ。両親からも彼女と親睦を深めるように言われていてね。それに、彼女のほうがお前よりこのポストに適任なんだ」

「理由はそれだけじゃないわ。泉緒さん、まだ知らないのね。私、蒼真と婚約するの」

莉乃は蒼真の言葉を遮ると、これみよがしに指先のダイヤの指輪をこちらに向けた。蒼真の指にも全く同じ指輪がはめられていた。

蒼真は婚約の件についてこれ以上の弁解はせず、ただ静かに私を見つめていた。

私は彼を見上げ、軽く頷いた。

「わかった」

私は問い詰めることも、釈明を求めることもせず、逆にデスクの上の書類を指差した。

「退職届はもう提出済みよ。手続きも進めているし、業務の引き継ぎもすべて終わらせてあるから」

蒼真は私がそんな言葉を口にするとは思いもしなかったようで、驚きに目を見開いた。

私は二人の怪訝な視線を背に、迷わずその場を立ち去った。

一歩踏み出すごとに、脚の痛みが神経を鋭く突き刺す。

実家の食事会で、嫉妬した莉乃を追いかけるため、蒼真が私を階段から突き落としたあの光景は、今でも鮮明に思い出せる。

彼への愛など、ICUで必死に生を求めていた一ヶ月の間に、とっくに消え失せていた。

蒼真はいつの間にか追いかけてきており、私のすぐ後ろに立っていた。

彼は背後から包み込むように私を抱きしめると、項に顔を埋め、甘えるように頬を私の首筋にすり寄せてきた。

「俺と莉乃は幼馴染だ。俺が結婚すると知ったら、彼女が嫉妬するのは無理ないんだ。婚約のことはあまり気にしないでくれ。篠原家と星野家は釣り合いが取れているし……」

「気にしていないわ」

私は蒼真の言葉を遮り、突き放すように彼との距離を置いた。

九年という歳月を共にし、これ以上に親密なことだって幾度となく重ねてきたはずなのに。

今の私にとって、彼の親しげな振る舞いは生理的な嫌悪感でしかなかった。

蒼真の顔が一瞬にして苦々しく歪み、納得がいかないとでも言うように、その場に立ち尽くした。

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