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命を拾った俺は、もう妻を愛さないと決めた第1話

この話は約1914字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

娘の誕生日の日、俺は帰り道で強盗に襲われた。

妻に電話をかけたが、なぜか着信拒否されていた。

車から引きずり下ろされ、何十回もナイフで切りつけられた俺は、血まみれのまま草むらに捨てられた。

首は切り裂かれ、内臓も抉り出されていた。

奴らは俺がすぐに死ぬと思ったのだろう。目の前で仲間の名前を叫び、俺の車を口笛を吹きながら乗り去っていった。

俺は自分の首を支えながら、内臓を抱えて、必死に道の脇へと這いずり出た。助けを求めたかった。

救急車に運び込まれる直前、スマホで妻のSNSを確認したら、そこには秘書の恭一と一緒に娘の誕生日を祝う幸せそうな写真が投稿されていた。

退院後、俺が最初にしたことは、離婚を切り出すことだった。

* * *

あの日、通りがかりの人に助けられてから退院するまでの約1カ月、彼女からは一切連絡がなかった。

俺に届いた唯一のメッセージは、事件が起きた当日のものだった。

「たかが電話に出なかったくらいで、家出なんて子供じみた真似しないでよね?さっさと帰ってこないなら、もう二度と戻らなくていいから!」

その後、俺の番号はブラックリストに入れられていた。

昼も夜も、体の痛みは引かず、彼女への想いが胸を締めつけた。

それでも俺は、毎日彼女のSNSを確認し続け、自らの心を痛め続けた。

そこに映っていたのは、彼女の秘書の朝比奈恭一(あさひな きょういち)と娘が一緒に遊園地へ行く写真ばかりだった。

まるでその三人こそが本当の家族のように。

結婚して7年になるが、俺は一度も彼女の投稿に登場したことがなかった。

彼女が「そういうのが好きじゃない」と思っていたが、別の男との写真なら喜んで載せるらしい。

つまり、俺が嫌だっただけなんだ。

過去の小さな疑念が、鋭い矢となって心臓を射抜いていく。

胸の刀傷は蛇のようにうねり、腹部にまで達していた。

首の傷跡は目立つ縫合痕となり、見るだけで醜かった。

今でも、唾を飲み込むだけで痛みが走る。

身体の痛みに加え、愛する人の裏切り。ダブルパンチだった。

俺は生きる気力を完全に失い、何度も死にたいと思った。

俺が集中治療室で何度も死線をさまよっている間、彼女は家で娘と「新しい父親」を迎え入れていたらしい。

心が深い絶望に沈む中で、自分の存在が滑稽で、哀れに思えた。

退院後、醜い首の傷跡を隠すため、真夏だというのに分厚いマフラーを巻いていた。

それから1カ月、ついに俺は自宅の玄関に立った。

指紋認証を押しても、警告音が鳴るばかりで、鍵は開かない。

負傷した指紋が原因だと思い、何度も試したが、ついに警報が鳴り始めた。

やがて、霧島美智瑠(きりしま みちる)が車で急いで戻ってきた。

彼女の視線が、無力感に満ちた俺に触れた瞬間、その表情は心配から嫌悪へと変わった。

冷たい態度で鍵を開けると、嘲笑を浮かべながら言った。

「ずいぶん早かったわね。陽真(はるま)、まだ家の場所、覚えてたんだね」

胸が痛んだ。首の傷跡が疼くのを感じた。

一人で耐えてきた苦しみが、一気にこみ上げてきた。

俺は立ち上がり、目を赤くして彼女に叫んだ。

「1カ月以上もたって、ようやく俺が家にいないことに気付いたのか?あの日、俺が電話したのに、どうして出なかった!?

この1カ月間、一度でも俺のことを気にかけたか?俺が死んでたらどうするつもりだったんだ!」

声が震え、怒りで体が熱くなる。

「むしろ俺が消えた方が良かったんだろう?お前とあの秘書のために!

SNSでも全部晒してるじゃないか!いっそ俺が死んだって宣言して、別の男を堂々と迎えればいいだろ!」

美智瑠は靴を脱いでいる途中で動きを止め、険しい顔でこちらを睨んだ。

「何度も言ってるけど、恭一はただの秘書よ!

彼は仕事ができて、人間性もいい。それをあんたの勝手な嫉妬で辞めさせろって言うの?!

だいたい、時間通りに帰らないあんただから、娘が泣きわめいたのよ。私は娘をあやすのに忙しくて、電話に出る暇なんてなかったの。それを文句つけるなんて、いい度胸ね」

その言葉を聞いた俺は、目を見開いた。

信じられなかった。どうしてこんなことを言えるんだ。

生きるか死ぬかの状況で、ただ一目会いたかっただけなのに、帰ってきたのは冷淡な言葉と非難だった。

言葉が詰まった俺を見て、美智瑠が冷笑する。

「もし恭一がいなかったら、娘はとっくに入院してたわよ!父親のくせに何やってんの?」

もう我慢の限界だった。

「いいだろう。それなら娘は俺一人の子供だ。お前には関係ない!離婚後も養育権は絶対に渡さない!娘は俺が責任を持って育てる!」

目の前の、美しくて七年間も愛してきた女。その姿に、今では失望と他人のような距離感しか感じられない。

俺たちの関係は、とっくに終わるべきだったんだ。

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