君を忘れた日第2話
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遥香は美咲がいつ帰ったのか分からなかった。
翌日の雄介は、やたらと優しくなっていた。階段を降りるのでさえ抱っこしたがる。
夕方になると、雄介から言い出した。「遥香、今夜の仕事はキャンセルした。チャリティオークションに付き合う」
遥香はプロの写真家で、業界では名の知れた存在だった。
毎年何枚かの作品をチャリティオークションに寄付して、イベントにも出席している。
今年は目覚めたばかりだったが、やはり招待状が届いていた。
二人はオークション会場に着くと、思いがけない人に出会った。
「先生!遥香さん!」小早川美咲が嬉しそうに駆け寄ってくる。「お二人もいらしてたんですね!」
雄介は少し眉をひそめた。「お前こそ何でここに?」
「私も写真を出品してるんです!」美咲は恥ずかしそうに頭を下げた。「実は遥香さんの影響で写真を始めて、賞までいただいたんです!」
そして星のような瞳で遥香を見つめる。
「遥香さんは私の憧れです。いつかあなたみたいになりたいです!」
私みたいに?
それとも私の代わりになりたいの?
遥香は皮肉に微笑んで、何も答えなかった。
オークションが始まった。
遥香と雄介は二階のVIP席に座り、美咲は一階の客席にいた。
今回のオークションで最も有名な写真家として、遥香の作品が最初に出品された。
「続いては夏野遥香さんの七年前の作品『記憶』です」
スクリーンに写真が映し出されると、雄介の顔が変わった。
「遥香!」彼は振り返って彼女を見る。「どうしてこの写真を売ったんだ?」
画面には海辺で握り合った手が写っていた。二人の薬指にはお揃いの結婚指輪。
雄介と遥香の愛の証。プロポーズの日に撮った大切な一枚だった。
遥香はこの作品を宝物のように大事にしていて、誰かが2億円出しても売らなかった。
なんのに今、売りに出している。
遥香は雄介を見上げて聞き返した。「雄介、あの日の約束覚えてる?」
雄介は即座に答えた。「もちろん。君だけを一生愛すって、絶対に裏切らないって約束した」
そう言ってから、少し後ろめたくなった。
もしや……遥香が何かに気づいて、この写真を売ったのだろうか?
慌てる雄介に、遥香は笑いかけた。
「そうね、覚えてるなら写真なんていらないでしょ。チャリティーに使った方がいい」
実現できない約束なら、写真を残す意味もない。
そんな本音は口にしなかった。
その時、会場では競りが始まっていた。
「1000万」
「2000万」
「3000万!」
さすが有名写真家だけあって、すぐに白熱した競りになった。
そこで雄介が札を上げた。
「2億!」
一桁違う金額に、会場がざわめいた。
雄介は遥香を見つめて真剣に言った。
「例えばそうだとしても、俺の君への約束だから、一生手元に置いておきたい」
拍手の中、雄介がこの写真を落札した。
知り合いたちが冗談を言う。
「結局夏野さんは2億円寄付したかっただけで、ついでに奥様とのラブラブぶりを見せつけたかっただけよね。私たちはみんな当て馬になっちゃった!」
みんなが笑ったが、遥香だけは心から笑えなかった。
オークションは続いた。
今夜は富裕層ばかりが集まっているため、主催者は一人一点までという制限を設けていた。
だから雄介は他の作品には興味を示さず、遥香のためにロンガンの皮を剥いて、一粒ずつ口に運んでくれた。
そんな時、司会者の声が響いた。
「続いては新進気鋭の写真家、小早川美咲さんの作品『夢』です!」
拍手と共にスクリーンが明るくなったが、次の瞬間、誰かが叫んだ。
「これは何だ!」
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