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双子の罠に落ちた恋第1話

この話は約2729字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

私は清水芽衣(きよみず めい)、ウェディングドレスのデザイナーだ。ブライダルクイーンコンテストの決勝を翌日に控えたその日、私のきわどいプライベート写真が突然ネットに出回っていた。

「愛を汚した女だ」「もうウェディングドレスに触る資格なんてない」と、罵倒が一気に押し寄せ、私はコンテストの出場資格を取り消された。

あの写真を持っていたのは、恋人の神谷颯斗(かみや はやと)だけだ。

取り乱しながら彼に真相を確かめようと向かったが、扉の前で、彼と、その双子の弟――神谷陽翔(かみや はると)の声が聞こえてくる。

「やっぱりあの写真を流したら、芽衣は一気に炎上したな。ファッション業界からも外されるだろ。これで橘綾香(たちばな あやか)とブライダルクイーンを争うことは二度とできないだろう。

ってことは、もうあんたのふりしてあいつを抱きに行けないってことか?あいつさ、見た目は清純なのに妙に色っぽくて、案外悪くなかったぜ」

「じゃあ、今のうちに楽しんでおけ。綾香がブライダルクイーンの称号を取ったら、芽衣とはきっぱり切って、本気で綾香を追いかけるつもりだ」

ふたりの気のないやり取りが、鋭い刃のように心を切り裂いた。どうやって家まで帰ったのかも覚えていない。私は一晩中、ソファに座り込んだままだった。そして、空が白み始めたころ、私は海外のあるデザインスタジオに電話をかけた。

「いつもお世話になっております。三日後、入社させていただきます」

* * *

私は清水芽衣(きよみず めい)、ウェディングドレスのデザイナーだ。ブライダルクイーンコンテストの決勝を翌日に控えたその日、私のきわどいプライベート写真が突然ネットに出回っていた。

「愛を汚した女だ」「もうウェディングドレスに触る資格なんてない」と、罵倒が一気に押し寄せ、私はコンテストの出場資格を取り消された。

あの写真を持っていたのは、恋人の神谷颯斗(かみや はやと)だけだ。

取り乱しながら彼に真相を確かめようと向かったが、扉の前で、彼と、その双子の弟――神谷陽翔(かみや はると)の声が聞こえてくる。

「やっぱりあの写真を流したら、芽衣は一気に炎上したな。ファッション業界からも外されるだろ。これで橘綾香(たちばな あやか)とブライダルクイーンを争うことは二度とできないだろう。

ってことは、もうあんたのふりしてあいつを抱きに行けないってことか?あいつさ、見た目は清純なのに妙に色っぽくて、案外悪くなかったぜ」

「じゃあ、今のうちに楽しんでおけ。綾香がブライダルクイーンの称号を取ったら、芽衣とはきっぱり切って、本気で綾香を追いかけるつもりだ」

スマホの画面には罵詈雑言が並び、鋭い刃のように心を切り裂いた。ドアの向こうでは、颯斗と陽翔がグラスを合わせて祝杯をあげている。

「颯斗、マジで今回のやり方は完璧だよな。ウェディングドレスのデザイナーが私生活だらしないってバレたら、芽衣は一生ドレスなんか触れない」

「お前のおかげでもあるけどな。毎日あれこれ体勢を取らせてさ、しかも顔がはっきり写るように撮って」

ふたりは声を立てて笑った。

私は思わず口を押さえ、爪が掌の柔らかいところに深く食い込む。鋭い痛みが、これが夢なんかじゃないと告げている。

私がすべてを捧げるつもりでいたあの恋は、残酷な茶番にすぎなかった。

あの数々の夜の甘さなんて全部、甘い殻で覆った毒だった。

よろめきながら外へ出ると、涙があふれて止まらず、目に映るものが全部ぼやけて歪んだ。

両親の結婚が破綻した影を引きずって、私は恋というものから距離を置いて生きてきた。その代わり、情熱のすべてをドレスのデザインに注ぎ、そこに感情を込めようとしていた。

そんな私の前に、半年前、颯斗が現れた。

端正な顔立ちに、財力もあって、優しさも気配りもあって、それでいて冷静さを失わない人。そばにいる異性といえば、義理の妹くらいだ。

そんな男に心を動かされても、自分とは縁のない世界の人間だと、関わることなんて考えもしなかった。

けれど、あるパーティーの夜。「ウェディングドレスしか作れない子」と周りから浮いていた私に、彼が歩み寄ってきて、オープニングの一曲目を一緒に踊ろうと手を差し出してくれた。

彼は言った。

「恋愛も結婚も、世界でいちばん美しいものだと思ってる。ウェディングドレスは、その美しさを形にしたものだよ」

その一言で、固く閉じていた心に、細いひびが入った。

その後、彼は私の作品を堂々と応援し、映画や食事にもよく誘ってくれた。

メディアは、彼が私を狙っていると騒いだけれど、私はただ、彼とは違う世界に生きていると思っていた。

そんなある日。仕事に没頭しすぎて、気づけば終電もタクシーもつかまらなくなった夜、彼の車がすっと現れた。

家まで送ってくれたあと、彼は私の冷えきった手をそっと包んだ。

「芽衣。これから先も、ずっとお前を家まで送りたいんだ。いい?」

その夜の星明かりに目を奪われて、頭が真っ白になった私は、ただうなずくことしかできなかった。言葉なんて一つも出てこなかった。

でも、付き合い始めてからの彼は、どこかおかしかった。

昼間の彼はやけに素っ気なくて、前はほとんど毎日届いていたメッセージも、一日二日平気で途切れる。私から会いに行っても、「仕事が忙しい」と言って私をそっちのけでいた。

でも、夜になると彼は別人みたいに情熱的になり、私を言葉巧みに誘い、彼の望むいろいろな体勢を次々と試すことになった。

そんな極端なギャップがどうしても受け入れられず、あるとき思い切ってぶつけたことがある。すると彼は、「昼は仕事でいっぱいいっぱいなんだ。夜にああなるのは、芽衣のことが好きすぎるせいだよ」と説明した。

まさか、本当に二つの顔を持っていたんじゃなくて、昼の彼と夜の彼が、そもそも別人だったなんて。

あの追いかける素振りも、あの情熱も、全部が罠だ。私が必死に積み上げてきたものを奪い、別の女のために邪魔者である私を消すための罠だ。

どう帰ってきたのか分からない。気がつけば、私は颯斗との思い出が詰まった部屋に戻っていた。体の力がすっかり抜けて、冷たい壁に沿ってずるりと座り込み、顔は血の気が引いていた。

夜は、やけに長くて、息が詰まるほど静かだ。

私は膝を抱えこんで、散らかった部屋の闇の中で、あの罵詈雑言の通知を何度も何度もスクロールした。まるで自分を痛めつけるみたいに。

スマホの充電残量が赤くなった頃、痺れた心臓がかすかに跳ねる。私は震える指で、海外のデザインスタジオの番号を押した。

「決めました。そちらで働かせていただきます」

「清水さん、ありがとうございます。きっと良い選択になると思いますよ」

「はい、三日後にお伺いいたします」

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