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危篤の祖母より、後輩女医を選ぶ夫第3話

この話は約1710字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

真っ暗になった画面を見つめ、私は焦りでじっとしていられなかった。ほかにできることもなく、再び祖母の手術室の前へと戻った。

そこへ戻ると、ちょうど重い表情の医師が出てきたところだった。私を見ると、ため息をつきながら首を横に振った。

「申し訳ありません、理和さん。できる限りのことはしたのですが……

鷹司先生が間に合わず、ほかの医師では限界がありました……今のうちに、お別れをなさってください」

「そんな……そんなはずないっ!」

その場に立ち尽くしていた私は、看護師に支えられるようにして病室へと入った。

ベッドの上、無数の管に繋がれた祖母の姿を見た瞬間、涙が堰を切ったように溢れ出した。

「おばあちゃん……ごめんね、私が不甲斐ないばっかりに……」

祖母はもう限界まで衰弱していて、掠れた声はどんどん小さくなっていった。

「理和……泣かないで……先生たちの話は、もう聞いたよ……あの馬鹿な子が、手術をしてくれなかったんだね……

おばあちゃんはいつお迎えが来てもおかしくないから……でも理和はまだ若い……勝己があんたを大事にしないなら、あんな男のために人生を無駄にすることなんてないんだよ……離婚して、自分の人生を歩みなさい……

おばあちゃんはもう……理和のこと、守ってあげられない……これからは、自分で自分を守るんだよ……あんたが幸せに生きてくれたら、おばあちゃん、天国できっと喜ぶから……」

最後の言葉を言い終えると、祖母は私の手をぎゅっと握りしめた。そして、力が抜けるように、そのまま息を引き取った。

「おばあちゃん……っ!」

深い悲しみに襲われ、私は祖母の最期をただ見つめることしかできなかった。

涙が止めどなく溢れ出す。祖母の体に取りすがって、私は声を上げて泣いた。

「お願い、おばあちゃん……行かないで……私を置いていかないでよ……っ!うぅあああ!」

私の実家は、昔から男尊女卑の考えが根強い家だった。両親は長年、私にろくに目を向けてくれたことがない。家庭の温もりというものを、私は祖母からしか知らなかった。

そのたったひとつの温もりさえも、今、完全に失われてしまった。

底なしの絶望に呑まれ、悲しみで目の前が徐々に暗くなっていく。立ち上がろうとした瞬間、体は言うことを聞かず、私はそのまま床に崩れ落ち、意識を失った。

再び目を覚ましたのは、その日の夜だった。祖母の手術を担当した医師の鈴木健一(すずき けんいち)が、傍らで付き添ってくれていた。

私が目を覚ましたのを見て、同情の色を浮かべながら口を開いた。

「鷹司先生にはメッセージを送っておきましたので、じきに来られるかと」

その言葉を聞きながら、私はゆっくりと体を起こし、小さく頷いた。

正直なところ、もう勝己には何の期待も抱いていなかった。ただ、祖母の葬儀だけは、勝己にも協力してもらって、少しでも安らかに見送ってあげたい。それだけだった。

葬儀の手配をしようと携帯電話を取り出し、SNSを開くと、亜実の最新の投稿が目に飛び込んできた。

【大人の男の余裕ってこういうこと。いつだって女の子をお姫様みたいに甘やかしてくれる!】

添えられた写真は、亜実が男性の肩にもたれかかって撮った自撮り。背景には、賑やかなディズニーランドの様子が写り込んでいた。

顔は写っていない。それでも、その男が勝己だということは、ひと目で分かった。

携帯電話を握る手が、勝手に震え出した。

祖母が病院で、手術を待ちながら絶望の中で死んでいったというのに、幼い頃から祖母に育ててもらった勝己は、女を喜ばせるためだけにディズニーランドへ遊びに行っていたのだ!

人でなし……!

あのふたりは、揃いも揃って人でなしだわ!

隣にいた健一も、そのSNSの内容を見てしまったようで、気まずそうな表情を浮かべた。

「ええと……もしかしたら、まだ鷹司先生は私のメッセージを見ていらっしゃらないのかもしれません……」

「あの人は、見たくないものはいつまで経っても見ようとしないんです」

私は深く息を吸い、荒れる感情を無理やり押し込めると、健一に向かって手を差し出した。

「すみません、少しだけ、携帯を貸していただけますか」

「あ、はい、どうぞ」

健一は慌てて携帯電話を差し出した。

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