和紙文危篤の母より元カノ?最低男を捨て宿敵の妻へ · 第3話設定≡

危篤の母より元カノ?最低男を捨て宿敵の妻へ第3話

この話は約1711字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

泰誠は、わずかに顔色を変え、先ほどまでの笑みを瞬時に消し去った。

彼が口を開くより先に、咲希は踵を返し、自分のデスクへ戻ると、パソコンで退職届を打ち始めた。

退職メールを送ってから1分もしないうちに、泰誠から承認の通知が来た。

さらに1分後、彼から電話がかかってきた。

「玲奈は名義だけの副社長だ。彼女が投資でトラブルを抱えて金銭を必要としているから、助けてやりたいだけなんだ。変なプライドが高いから、仕事の報酬という形をとらないと受け取らないんだよ。昔からの付き合いだし、困っている友人を助けるのは当然だろう?

君が少し冷え切った態度を改めて、玲奈の問題が片づけば、副社長の座は君に返す」

咲希は黙ったまま何も返さなかった。

しばらく待ったあと、泰誠の声は冷たくなった。

「咲希、俺の婚約者になってから、ずいぶん偉くなったものだな。少し甘えが過ぎるんじゃないか?仕事をサボったり、退職をチラつかせたりしてまでわがままを通すつもりか?5分やる、冷静になれ。今すぐ退職届を撤回すれば、なかったことにしてやる。

もし本当に辞めるのが本望なら、俺もその意思を尊重するがね」

言い捨てると、電話を切った。

スマホの画面を眺めながら、咲希は自嘲気味に笑った。

泰誠が咲希に優しい言葉をかけられるのは、せいぜいここまでだった。彼は決して、その尊大な態度を崩すことはなかった。

彼はそういう性格なのだと思って、揉め事が起きればいつも咲希が先に折れてきた。

しかし、玲奈の機嫌を取っている姿を見た今、泰誠が突きつけた冷淡で融通の利かないこの条件を受け入れる気力は残っていなかった。

咲希は立ち上がり、窓辺で一息ついてから仕事の片付けに取り掛かった。

今はただ、1日も早く引継ぎを終えてここを去りたい。それだけだった。

午前中ずっと慌ただしく働き、休憩が終わる頃になってようやく食事へ向かった。

店に入った途端、低血糖の影響か視界が暗くなり、そのまま床に倒れ込んでしまった。

店員が慌てて駆け寄ってくる。「お客様!大丈夫ですか?」

外から足音が聞こえ、誰かが男性店員を押しのけるようにして、意識が遠のきかけた咲希を抱き上げた。「コーラを持ってきてください、早く!」

咲希がゆっくり意識を取り戻すと、手元で支えられたコーラを反射的に口に運んだ。

視界が晴れ、そこに泰誠がいることに気づき、自力でコーラを掴み直した。

泰誠はチョコレートを一片取り出し、咲希の口元に差し出してきた。

飲み込むのを見届けると、ハンカチで額の冷や汗を拭い、「少しは良くなったか?」と尋ねる。

咲希は短く頷くと、横にいる玲奈の存在を感じて目を伏せ、「ありがとう。もう戻っていいよ」と言った。

泰誠は眉を寄せ、突き放すようなその眼差しは次第に冷たくなった。やがて立ち上がり、道を空ける。

「もう大丈夫なら店を出ろ。玲奈はこの店のメニューが好きで、ここ以外に席が空いていないんだ。玲奈は口がうるさくてな。他の店だとろくに食べられず、胃を悪くする。

今日から入社なんだし、歓迎会の一つもしてやらないとは。飯すら満足に食べさせないなんて可哀想だろ?」

玲奈は笑いながら答えた。「もう5年前の話だよ、まだ覚えてたの?今はそこまで胃も弱くないから平気。霜月さんが私と同席したくないなら、他へ行くよ」

泰誠はスマホでQRコードを読み込み、画面を差し出した。「ずっと腹を空かせていたんだろ。他の店なんて行かなくていい。さっさと頼め」

玲奈は咲希のほうを見て、嬉しそうに微笑んだ。

「泰誠が頼んでよ。新メニューが多いからもう何がいいかわかんないし。いつもの私の好みを、まだ覚えてるよね」

咲希はストローをくわえ、空っぽのお腹をなだめるように残りのコーラを流し込んだ。

一本飲み干し、ふと顔を上げると、楽しげに注文を決める二人の姿が目に入った。

泰誠は咲希の気配に気づいたのか、静かな目で咲希を一瞥し、スマホをテーブルのど真ん中に置いた。

咲希にはわかった。泰誠が自分からの謝罪を待っていることが。

そのスマホを手に取り、自分の分を頼んで席に座りさえすれば、さっきの面倒な態度も、騒ぎも全て許してくれるだろう。

咲希はゆっくりと手を伸ばし、そのスマホを手に取った。

縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)

第4話は公式アプリで

当サイトでの試し読みはここまでです。アプリをインストールし、下のアプリ用コードを入力すると、この作品の第4話からそのまま読み進められます。

T67851
  1. 下のボタンから公式アプリをインストールします(無料)。
  2. アプリを開き、「コードを入力」にこのコードを入れると、この作品が本棚に入ります。
iPhone・iPad
で入手
Android
で入手

アプリで第4話を読む

作品ページへ戻る 当サイトに掲載しているのは試し読みの章だけです。