冷たい家族の中で第3話
この話は約718字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
でもね、お母さんは、ちょっと風が吹いただけで折れちゃうような、か弱い草なんかじゃない。
ちゃんと変わろうとしてたし――本気で、もがいてたんだ。
しばらくして、私はお母さんがお父さんと電話してるのを耳にした。
私とお兄ちゃんももう手がかからない年になったし、外に出て仕事をしたいって。
でも返ってきたお父さんの声は、冷たくて、まるで他人に向けるみたいな口調だった。
「働くのが最適だとは思えないよ。お前、もう10年も仕事から離れてるんだ。どこの会社がそんな経歴の人を欲しがると思う?
それに俺の方がはるかに仕事の能力がある。俺が外で稼いで、お前が家庭を守る。それが一番効率的だ。
どうしても退屈なら……生活費を少し増やしてあげよう。ほら、他の奥さんたちみたいに、カードゲームとか、ショッピングでもしてたらいいじゃないか」
そんな言葉を投げつけられても、お母さんはへこたれなかった。
それどころか、キラキラした目で、私と蓮くんにその話をしてくれた。
その顔が、なんだかとても眩しくて――私は思わず、両手でグッとガッツポーズを送った。
……けど、蓮くんは鼻で笑った。
「やめとけよ。何にもできないくせに。そんなので月に4万円稼げんの?杉山さんの給料の5分の1もいかないんじゃね?恥かくだけだよ」
その一言に、お母さんの目がカッと見開いた。
震えるように立ち上がって、ぎゅっと拳を握りしめた指先は真っ白になってて――
「蓮!あんたに何がわかるの!」
「あんたが生まれる前、私はちゃんと仕事もしてたし、友だちもいた。自由で、楽しくて、誰にも縛られてなかった!
それを全部、家族のために捨てたのよ。あんたと紬のために!
家で家事してる人間は、働いてる人より価値がないって言いたいの?」
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