冷たい家族の中で第1話
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うちのお母さんは、まるでシンデレラみたいにお金持ちの家に嫁いだ。
セレブ妻になったあとも、美人だしお金もあったけど――肝心な「居場所」だけは、どこにもなかった。
お父さんは仕事に夢中で、おばあさんは知らんぷり。お母さんが頼れるのは、私とお兄ちゃんだけだった。
……はずなのに、お兄ちゃんはお父さんのそばにいる秘書さんのほうが好きだった。
「ママなんてただ飾りみたいな存在だ!新しいママが欲しい!」って騒いで、ごはんも食べないで抗議する始末。
お父さんはぬるく叱っただけ。おばあちゃんは「子どもの冗談でしょ」なんて笑って済ませた。
でも私は見たんだ。お母さんの目が、泣きそうに潤んでたのを。
その目の奥に、きらりと光る決意を込めて、お母さんははっきりこう言った。
「私、離婚するわ」
* * *
お母さんの声が静かに落ちたとたん、みんなの視線が一斉に彼女に向いた。
バースデーハットをかぶったお兄ちゃんが、人だかりの中心で真っ先に顔をしかめた。
「……何なの?もう謝ったでしょ?それでもまだ足りないって、わざわざ僕の誕生日に水差すつもり?」
その顔には、軽蔑と冷たさが浮かんでて。まるでお母さんが、注目を集めたくて騒いでるだけみたいに見てた。
でも――私は気づいてた。お母さんの目の奥には、悔しさと、それでも折れない強さがあった。
今日は、私とお兄ちゃんの10歳の誕生日。
おばあちゃんは、私たちにそれぞれ大きなケーキを用意してくれた。
ただ、様子はまるで違った。
お兄ちゃんのまわりには、おばあちゃんと、お父さんの代わりに来た朝倉おばさん、それから大勢の人が集まってて「何のお願い事するの?」なんてにこにこしながら話しかけてる。
それに対して、私のそばにいたのは、ろうそくをつけてくれてたお手伝いの杉山さん。
誰も私の願いなんて聞かなかったけど、それでも私はワクワクしてて「早く火つけて!」ってせかしてた。
……だけど、まだ吹き消す前に、お母さんが少しかすれた声で言ったの。
「私の子どもでいたくないなら、私ももうあんたの母親ではいたくないわ」
その言葉にお兄ちゃんは鼻で笑った。
「は?調子に乗るなよ。朝倉おばさんの方がよっぽどママにふさわしいし。僕、本気であの人がママだったらよかったのに」
その後ろで、朝倉おばさんが凍りついたみたいにうつむいて、まるで大きな秘密がバレたみたいに気まずそうにしていた。
おばあちゃんは最初こそ驚いた顔をしてたけど、すぐに落ち着いて、指にはめたエメラルドの指輪をなでながら、いつもの偉そうな口調でこう言った。
「澪(みお)、うちの暮らしはうまくいってるでしょう?藤崎家はあんたに何も不自由させてないわよね。それなのに、これはどういうことかしら?
離婚って言うなら、それなりの理由を示してもらわないと」
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