元彼の親友と、まさかのハッピーエンド第2話
この話は約2165字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。
こうやって改めて数えてみると未読のメッセージがなんと10件以上もあった。しかもまだ続いていた。
【まだおきてる?】
【もう遅いから、はやく休んでね。おやすみ】
数分後、ハートのスタンプに続いて、どきりとするような腹筋の写真が送られてきた。
写真の中の男は、部屋着のズボンをはいて、ベッドに無造作に寝そべっている。その長い脚は、なんだか持て余しているみたいだ。
自然の光のなかで、肌は健康的な小麦色に見える。
腕には血管がくっきりと浮き出ていて、その長い指は、いやでも目がいってしまう場所に置かれていた。
これって、完全に誘ってるじゃん。
そう思いながらも、私は黙々と写真を保存した。
そして顔を赤らめながら思った。意外といい体、してるじゃない。
出かける用意をしていたら、下の階で呼び鈴が鳴った。
そして、ドアを開けた使用人が感嘆の声をあげるのが聞こえてきた。
「美咲様、はやく下りてきてください。すっごく大きなバラの花束が届いてます」
バラの花束ねぇ……
ベタすぎじゃない?
そう思いながらも、私はゆっくりと階段を下りていった。
そして面倒くさそうに花束に近づいて、上に乗っていたカードをちらっと見た。
すると、バラの上にきれいな宝石箱が置かれていることに気がついた。
開けてみると、なんと私のブレスレットだった。
これは、父が生きていたときにくれた、最後のプレゼントなのだ。
父が亡くなったあと、会社の資金が足りなくなって、私は持っていた值打ちのありそうなものを全部オークションに出したんだ。
このブレスレットも、そのなかのひとつだった。
たしか、あのときは海外の方が6000万円近い値段で落札したはず。
拓也の友達が、まさかあの人を捜し出して、私のために買い戻してくれたのかな。
私は鼻をすすって、彼とのチャット画面を開いた。
【ブレスレット、受け取ったよ。買い戻してくれて本当にありがとう。よかったら、お金を振り込みたいんだけど、口座番号を教えてくれるかな?】
一括でこんな大金は払えないけど、十二回の分割ならなんとかなるはずだ。
【お金なんていらない。俺がほしいのは、君だけだよ】
……
断られるだろうなとは思ってたけど、まさかこんなにストレートに言われるなんて。
こうなるとなんて返信しようかと、私はチャット画面の上で指を止めて考えこんだ。
そのとき、電話がかかってきた。
電話は拓也からのもので、今日、友達の誕生日パーティーに付き合うのを忘れないで欲しい、という念押しだった。
「あんまり露出が多い服はだめだからな。胸はさらしでしっかりつぶしてこいよ。そのほうが小さく見えて、いい感じだからさ」
私はとりあえずはいはいっと、適当にうなずいておいた。
でも、電話を切るとすぐにクローゼットへ向かい、胸元が大きく開いたイブニングドレスを選び出した。
そして会場に着くと、拓也は何人かの友人と楽しそうに談笑していた。
でも私のドレス姿を見るなり、彼の顔つきは一瞬で変わった。
それから拓也はあわてて私の腕を引いて、部屋の隅に連れていった。
「なんだよこの格好!なんでこんな服で来たんだ!」
私は拓也を無視して、彼の肩越しに、少し離れた場所へ目をやった。
好奇心や下心が入り混じったたくさんの視線のなか、私はふと、吸い込まれそうなほど深くて暗い瞳と、目が合ってしまった。
井上蓮(いのうえ れん)が、たったひとりで隅の席に座っていた。騒がしい音楽と人ごみの向こうから、まっすぐに私を見つめていたのだ。
なぜだろう。私はその瞬間金縛りにあったみたいに、身動きひとつできなくなった。
先に視線をそらしたのは、蓮のほうだった。
彼はグラスのお酒を一気に飲み干すと、一瞬、笑ったように見えた。でもすぐにまた、いつもの淡々とした表情に戻っていた。
どき、どき、どき。
そんな彼に私の胸はとつぜん高鳴り始めた。
それと同時に、あるとんでもない考えが、ふと頭をよぎった。
あの人って、もしかして彼なんじゃ……
でも、その可能性をすぐに否定した。
私が知るかぎり、蓮はずっとクールで冷めた人だったから。
何に対しても、まるで興味がなさそうな感じで。
私が挨拶しても、いつも軽くうなずくだけ。
本当に、びっくりするくらい口数が少ない人だ。
私のことを好きだなんて、ありえない。むしろ、嫌われているとさえ思っていたくらいだ。
「美咲、だまりこくってどうしたんだよ?なんとか言えって!」拓也が不満そうに私の目の前で手を振った。
私は眉をひそめて、拓也の手を振りほどいた。「このドレス、すごく私に似合ってると思わない?」
そう言いながら、私はわざとぐっと胸を張って見せた。
とたん、拓也は気分が悪くなったような顔になった。
私がさらに一歩近づくと、彼はさっと口もとを押さえて、トイレに駆け込んでしまった。
拓也は、胸の大きな女性を見るとめまいを起こす、という変な体質なのだ。
これほど変わった体質はないだろう。
でも、もっと変わってるのは、胸の大きい子が受け付けないくせに、以前はあんなにしつこく私を口説いてきたことだ。
どうして私が、拓也のその体質を知っているかというと……
それは、少し前に彼とホテルに行ったときの出来事がきっかけだった。
あのころの私は、拓也のことを、本気で受け入れようとしていた。
そしたら彼は、なんと肝心なその場面で、いきなり気を失って倒れてしまったのだ。
縦書き表示中:本文は右から左へスクロールします(← → キーでも移動できます)