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元彼の兄と結婚したら、元彼が逆上した第2話

この話は約2506字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

なんて滑稽なことだろう。

水輝が自ら私を今日のような状況に追い込んだのに、私が本当に彼から離れようとした途端、不機嫌になる。

私を笑いもの扱いしながら、それでも離そうとしない。

こんな卑劣な男を、私は五年も愛してきたとは。

本当に見損なったわ。

「水輝さん、怒らないでくださいよ」

斎藤がだらしない口調で言った。

私は水輝を見上げた。やっぱり気になる、彼はまだ私をそばに置きたいと思うのだろうか?

おそらく私の目に宿った希望の光が気に入ったのだろう、彼は突然機嫌を直し、高貴な態度を取り戻した。

水輝は自信満々に私が彼を選ぶのを待ち、目には「やっぱりな」という得意げな色を浮かべ、それ以上一言も発しなかった。

彼はいつもこうだ。高みから私を見下ろし、わずかな希望を投げ与えたら、すぐに距離を取る。

彼は私を愛していない。ただ、私が彼に夢中でいる愚かな姿が好きなだけだ。

それを悟った瞬間、私は一瞬疲れ果てた。

水輝でなければ、誰でもいいと思った。

そんなことを考えながら、私は無感情に口を開いた。

「私は斎藤を……」

しかしその時、司会の男が再びガベルを叩き鳴らした。

「皆様、申し訳ございません。オークション終了です」

盛り上がっていた皆は当然のように騒ぎながら理由を問いただそうとした。

司会の男はほほえみながら私に近づき、上着をかけてくれた。それから、参加者全員に向かって宣言した。

「渡辺崇時様が小林様のためならいくらでも払うとおしゃっていますので」

渡辺崇時(わたなべ しゅうじ)?

渡辺家が認めた本物の継承者の名前じゃ?

なぜ彼が私のために……

まさか水輝と手を組んで私を弄ぶつもりなの?

そう考えると、私は嫌悪感を抱きながら水輝を見上げた。

しかし、彼はそのことを事前に知らない様子で立ち尽くし、茫然とした表情を浮かべていた。

会場のボディーガードたちが私を立ち上がらせようと促す。

その時、水輝は勿体ぶることさえ忘れて怒鳴った。

「行くな!」

私は彼に一瞥もくれず、ボディーガードたちに囲まれながら建物前のマイバッハへと一直線に向かった。

その瞬間の行動が正しかったかはわからないが、もう水輝とは関わりたくない。

崇時が彼と共謀しているかどうかはともかく、少なくとも今は、水輝から一時的に逃げられると思った。

後部座席の照明は暗く、隣に座る男の顔ははっきり見えない。

静かな車内で、崇時は足を組んで、大人で落ち着いた雰囲気を漂わせていた。

でもその横顔、どこかで見たような気がする。

たぶん気のせいだろう。世の中には似た顔の人間が山ほどいるのだから。

法外な値段で私を買った男だ、きっと悪い企みを持っているに違いない。世の中の男は皆同じくらい悪者だ。

「別荘の方へ」

彼が運転手に伝える指令は簡潔だった。

その後、車内は沈黙が続いた。

彼に特に変わった行動がなかったので、私の張り詰めた神経は少し緩んだ気がした。

おそらく長い間まともな睡眠を取っていなかったせいか、私はなんと全く見知らぬ環境の中で、いつの間にか眠りに落ちてしまった。

次に目を開けると、体には毛布がかけられていた。

横目で隣の男を見ると、彼は手元のパソコンを見つめ、真剣な表情を浮かべていた。

水輝とは少し違うようだ……

山腹の別荘に着いたのは真夜中だったが、室内は明かりが灯っていた。

「彼女をしっかり洗ってやれ」

彼は使用人に一言残すと、さっさと二階へ上がっていった。

私は心の中で舌を打ち、「この人、いい人なのかもしれない」という最後の希望が打ち砕かれた。

気高いふりをしてたけど、結局は私と寝るつもりなんだ。

そして、風呂上がりに使用人が私を部屋へ連れて行った。

緊張しないわけがない、何しろ彼は水輝の兄だ。

これからどんな仕打ちを受けるか分からない。

しかし、無人の部屋に入ってから深夜まで待っても、部屋のドアは開く気配すらなかった。

私はスマホを無意味にスクロールしているうちに、いつの間にか眠りに落ちていた。

夢の中で温もりに包まれると、私は無意識に目を開けた。

半開きのカーテンから、外の空が薄明るくなりつつあることに気づく。

背後には誰かの気配がしたとはっきり感じる。

彼が来た!

一瞬、私は緊張した。黙って彼の次の動きを待ったが、いつまで経っても聞こえてきたのは規則正しい呼吸音だけだった。

再び目を覚ますと、そばにはもう誰もいなく、昨夜の出来事はまるで夢のようだった。

もし今別荘にいなかったら、昨日で私の人生が天変地異のように変わったとは到底信じられなかっただろう。

私は買われた奴隷になったのだ。

それでも水輝に振り回されるよりはましだ。

奴隷なら、やるべきことをやらなければ。

「あの、使用人の制服を一式貸してくれませんか」

私がそう言うと、掃除をしていた使用人の田中が顔を上げて、にこやかに笑った。

「あらまあ奥様、冗談はよしてください。そんなことさせられるわけないでしょう」

昨夜、これまで一度も女性を家に連れて帰ったことのない崇時様が、この人のいる部屋に入ったのだ。

奥様でなければ何者だというのだろう。

私は慌てて手を振った。

「違います、皆さん誤解です。私はただ、昨日崇時様が買ってきた使用人に過ぎません」

すると、使用人たちがお互い目配せし、明らかに信じていない様子を見せた。

何度も説明を繰り返してようやく、彼女たちはオドオドしながら慎重に制服を私の手に渡してくれた。

他人の家に住まわせる以上、自分の役目はちゃんと果たす。

私は袖をまくり上げ、清掃作業を始めた。当分の間、ここを離れるつもりはない。

外の人間は皆、私が打ちのめされるのを待っている。それなら一層ここに住まわせて、新たな生活を始めよう。

そしたら、何日経っても崇時はここに戻らず、私は次第にこの場所に慣れていった。

ピンポン。

玄関のチャイムが鳴った。

崇時が戻ってきたのだろうか?

田中が台所で料理をしているせいで手が離せなく、その代わり、私は雑巾を置いてドアを開けに行った。

水輝だ。

水輝は私を見て一瞬喜びの色を浮かべたが、それがすぐに消え、上から目線に変わった。

「行こう、お迎えに来たんだ」

ところが、私は彼の手を振りほどき、一歩下がって冷たく言い放った。

「水輝。やめてちょうだい」

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