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元カノを優先する彼との三年に終止符を第1話

この話は約2598字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

私、橋本真緒(はしもと まお)の幼なじみの高城郁人(たかぎ いくと)が、ついさっき私に想いを告げてくれたばかりなのに、その元恋人の森田栞里(もりた しおり)が交通事故に遭った。

病院の廊下で、郁人の声だけがやけにはっきりと響いた。

「栞里は今、刺激しないほうがいいんだ。悪いけど、しばらく我慢してくれ。俺たちのことは彼女に言わないでほしい」

真剣な眼差しを向ける彼を見て、私はそっと頷いた。

けれど、その「我慢」が、まさか三年にも及ぶなんて思ってもみなかった。

彼は彼女のために栄養食を作り、リハビリに付き添い、ありったけの優しさを彼女に注いだ。

そのくせ、私がたまに不満をこぼすと、だんだん苛立ちを隠さなくなっていった。

「真緒、変なこと考えるな。今はただ、栞里が俺を頼りにしてるだけだ。元気になれば、ちゃんと元に戻る。

栞里に友達として責任を果たしてるだけだ。

だから、もうこれ以上困らせるな……」

一度や二度じゃなかった。そのたびに彼は、まるで本心からだと言わんばかりに言い切った。

けれど、温かい手料理の入った保温ポットを手に病室の扉を開けた瞬間、キスを交わしている二人の姿が目に飛び込んできて、そのとき初めて思い知った。

最初から最後まで、自分がどれほど愚かだったのかを。

その場で立ち尽くす私に気づくと、栞里はやわらかな笑みを浮かべた。

「真緒、いい報せがあるの。私たち、よりを戻したのよ。あなたも早く彼氏を見つけなきゃね。真緒が幸せになるところを見たいわ」

固くつながれた二人の手を見つめながら、私は目の奥がじんと熱くなるのを感じた。

「実は私にも彼氏はいたの。でも、さっき……別れたの」

* * *

私、橋本真緒(はしもと まお)の幼なじみの高城郁人(たかぎ いくと)が、ついさっき私に想いを告げてくれたばかりなのに、その元恋人の森田栞里(もりた しおり)が交通事故に遭った。

病院の廊下で、郁人の声だけがやけにはっきりと響いた。

「栞里は今、刺激しないほうがいいんだ。悪いけど、しばらく我慢してくれ。俺たちのことは彼女に言わないでほしい」

真剣な眼差しを向ける彼を見て、私はそっと頷いた。

けれど、その「我慢」が、まさか三年にも及ぶなんて思ってもみなかった。

彼は彼女のために栄養食を作り、リハビリに付き添い、ありったけの優しさを彼女に注いだ。

そのくせ、私がたまに不満をこぼすと、だんだん苛立ちを隠さなくなっていった。

「真緒、変なこと考えるな。今はただ、栞里が俺を頼りにしてるだけだ。元気になれば、ちゃんと元に戻る。

栞里に友達として責任を果たしてるだけだ。

だから、もうこれ以上困らせるな……」

一度や二度じゃなかった。そのたびに彼は、まるで本心からだと言わんばかりに言い切った。

けれど、温かい手料理の入った保温ポットを手に病室の扉を開けた瞬間、キスを交わしている二人の姿が目に飛び込んできて、そのとき初めて思い知った。

最初から最後まで、自分がどれほど愚かだったのかを。

その場で立ち尽くす私に気づくと、栞里はやわらかな笑みを浮かべた。

「真緒、いい報せがあるの。私たち、よりを戻したのよ。あなたも早く彼氏を見つけなきゃね。真緒が幸せになるところを見たいわ」

固くつながれた二人の手を見つめながら、私は目の奥がじんと熱くなるのを感じた。

「実は私にも彼氏はいたの。でも、さっき……別れたの」

その言葉が落ちた途端、郁人の身体がはっきりと一瞬こわばった。

栞里は申し訳なさそうな声を出した。

「真緒、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったの」

私は口元をわずかに引きつらせた。

「大丈夫」

「でも、どうして別れちゃったの?」

どうして、なのだろう。

たぶん私は、誰にも言えない関係を三年ものあいだ守り続けてきたからだ。

そして今、もう守るのをやめたくなった。

彼女は車椅子を寄せながら近づいてくると、物わかりのいいお姉さんみたいに私の手をぽんと叩いた。

「人と人がこうして出会えたのも縁なんだから、少しのことで別れてしまうなんてもったいないわよ。

ほら、私と郁人だって、あの頃は若気の至りで離れただけだったの」

栞里はそう言って彼のほうを振り向き、目元に甘い笑みをにじませた。

「でもよかった。こうして、また一緒になれたんだから」

しばらくのあいだ、部屋には私たち三人の、重なり合わない呼吸の音だけが静かに漂っていた。

私は気づかれないようにそっと手を引き戻し、かすかな笑みを作った。

「ちょっとしたことでもなかったし、若気の至りでもなかった。

彼の心の中には、まだ別の人がいたから」

栞里は唇をきゅっと結び、気まずそうに曖昧な笑みを浮かべた。

私は顔を上げ、彼女越しにまっすぐ郁人の目を見た。

彼は眉をきつく寄せ、表情を強張らせたまま私を見つめていた。何を考えているのかは分からなかった。

しばらくして、彼は前に出ると、ごく自然な仕草で私の手から保温ポットを受け取った。指先が不意に私の手の甲をかすめ、ほんのわずかに触れた。

慰めだったのか、それとも牽制だったのか。

私には分からなかった。

私はその場に立ち尽くしたまま、二人を見つめた。あまりにもお似合いで、まるで最初から結ばれる運命だった恋人同士みたいだった。

それも当然だった。もともと二人は付き合っていたのだから。

彼女は、郁人が大学時代に付き合っていた恋人だった。頭がよくて、きれいで、眩しいほどに人目を引く人だった。

その関係は、一時は結婚の話まで出るほど真剣なものだった。

まさか卒業の年に、彼女が金持ちの御曹司のために、あんなにもきっぱりと郁人に別れを告げるなんて、誰も思っていなかった。

郁人は丸一か月、自分の部屋に閉じこもった。

酒に溺れ、眠れなくなり、見る影もないほど痩せ細っていった。

私は冷たい床に座り込んで、ぼんやりする彼のそばにずっといた。一日中そうしていても、言葉を交わすことはほとんどなかった。

彼の荒れ果てた姿を家族に知られないよう、私は必死に隠し通した。

私はずっと見てきた。失恋のどん底から這い上がり、起業して、必死に働きながら、少しずつ会社を軌道に乗せていく彼の姿を。

そしてある日、何の前触れもなく彼が私にこう言った。

「真緒、俺たち、付き合おう」

やっと、ずっと願っていた幸せが自分のものになるのだと思った。

けれど、それはただ、運命に弄ばれていただけだった。

付き合い始めてまだ数日しか経っていない頃、栞里は交通事故に遭った。

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