偽愛の大雨が止んだ第2話
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【あの時、下が反応しちゃったでしょ?ずっと当てて、痛かったのよ。もう】
震える手でメッセージを上にスクロールしたが、それより前は何もなかった。
柚が入社して半月、蓮司の部下として働くインターンだ。
見た目は華やかで、毎日違うミニスカートを穿いてきては、誰に対しても明るい笑顔を振りまいていた。
男性社員が盗み撮りしているのを見て、私は柚に控えめに服装を注意し、問題のある社員に釘を刺しておいた。
彼女は表向きは受け入れたが、陰ではその男性社員たちと一緒に私を「時代遅れのおばさん」と馬鹿にしていた。
蓮司に柚についてどう思うか聞いたことがある。彼は淡々と言った。
「若い子が可愛くしたいのは普通だろ。お前みたいな年上の女とは違う」
そう言ってから、彼は私をじっと見た。
「真緒、お前それ嫉妬だぞ。他人の幸せを妬んでどうする」
言葉が出なかった。
今思えば、あの頃から彼の心はもう柚に傾いていたのだ。
翌朝、蓮司は険しい顔でオフィスに来るなり、インターン評価表を私に叩きつけた。
「たかがゲームじゃないか、大げさだろ。
お前の嫉妬のせいで、あいつが仕事を失うことになるかもしれないとは思わなかったのか」
書類の角が手の甲に当たって少し痛かった。涙を堪えながら拾い上げ、平静を保って言った。
「評価は公正に行っています。不満があれば本部に申告してください」
私の様子がおかしいと思ったのか、蓮司は少し表情を和らげて椅子を引き寄せて座った。
「お前も女だろ。職場で女性が生きづらいのは分かってるはずだ。
それに今日は柚の誕生日なんだ。せっかく楽しいはずの日に泣かせてしまうなんて可哀想だろ」
私は動じなかった。彼は少し間を置いてから続けた。
「謝ってやってくれ。月末に高い評価をつけてやってほしい。それをお前からの誕生日プレゼントだと思ってくれればいい。
みんなの前で謝るのが嫌なら、ここに連れてくる」
蓮司がこんなに一度にたくさん話したことは珍しかった。
断る間もなく、目を真っ赤にした柚が目の前に現れた。
柚は彼の袖をそっと掴み、上目遣いで口を尖らせた。
私は顔を上げた瞬間、彼女の首元で揺れるネックレスに目が釘付けになった。
昨夜、蓮司の部屋で見たネックレスだ。
胸が一気に締め付けられ、私は自嘲するように笑った。ただの自分の思い込みだったのだ。
感情を必死に抑えて水を一口飲み、静かに口を開いた。
「篠宮さん、泣く時間があるなら自分を磨いた方がいい。あなたの企画書は酷すぎる」
柚はさらに激しく泣き出し、怒鳴り返した。
「私が若くて可愛いのが妬ましくて、わざと私を困らせてるんでしょ」
そのまま扉を叩きつけて出ていった。
社員たちがひそひそと口元を押さえた。
蓮司も怒りを滲ませた。
「真緒、お前には本当にがっかりした」
すぐに柚を追いかけて出ていった。
私は拳を握りしめてドアを閉め、すべての感情を押し込めて仕事を続けた。
退勤前、柚はグループチャットで今日が誕生日だから皆んなを食事に招待すると言い出した。
お祝いのメッセージが画面を埋め尽くし、蓮司は九十九回も送り続けた。
ずっと堪えていた涙が、この瞬間一気に溢れ出し、書類の上に次々と落ちた。
蓮司からメッセージが届いた。
【柚に車がないから送っていく。先に帰ってろ】
一行打っては消し、打っては消しを繰り返して、結局送信した。
最後に一度だけ賭けてみようと思った。
【今日は私の誕生日でもある】
五分後、返信が来た。
【悪い、先に言ってくれたら絶対一緒にいたのに、柚と約束してしまった。
何が食べたい?帰りに買ってくる】
ブラインドを開けると、社員たちが楽しそうに柚を囲んで出ていくのが見えた。
蓮司は笑顔で大きな花束を抱えて彼女の隣に立ち、たくさんのプレゼントを手に提げていた。
誰もが祝福する恋人同士のようだった。
私は暗がりの中に隠れたまま、表に出ることも、誰かの前に立つこともできなかった。
【いい、自分で買う】
人の波が引いてから、目を擦りながら帰宅した。
薄い離婚協議書を手にしたまま、言いようのない切なさが込み上げてきた。
蓮司が帰ってきたら、離婚の話をしようと思っていた。
ところが現れたのは、蓮司に連れられた柚だった。
「彼女がちょうど変な男に絡まれてて、仕方なく連れて帰ったんだ。
卒業したばかりで金もないし、借りてる部屋も治安が悪い。しばらくうちに泊めてやってくれ」
私はドア枠にもたれたまま何も言わず、蓮司の腕の中で泣き崩れる柚をじっと見ていた。
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