偽りの愛の中に隠された真実第3話
この話は約1598字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
私は弁護士の友人を訪ね、離婚届を二通作ってもらった。
彼女は何か言いたげな顔で私を見つめた。「寧音のお母さんの死に関する件だけど、やっぱり何かおかしい気がするの」
「何が?」
「うまく行きすぎてるのよ。本当はさ、加害者が罪を認めなかったら、どうやって訴訟を進めるかまで全部考えてたの」
「でもあの人、突然自首して罪を認めたでしょ?証拠も出てきたとはいえ、全体的にスムーズすぎて、逆に不自然なの」
その言葉を聞いた瞬間、私の心がぎゅっと締め付けられた。何かが頭の中でつながっていくような感覚があった。
「莉里(りり)、ある口座を調べてもらえないかな?」
彼女は首を横に振ったが、代わりに私に探偵を紹介してくれた。
私は何かに引っ張られるようにして、真実に近づいている気がした。
私は離婚届を持って、詠一の会社へ向かった。
会社に入ると、社員たちの噂話が聞こえてきた。
「今入ってったの、飛鳥社長の友達だよね?海外から戻ってきたばっかだって。正直、あの人の方が飛鳥社長にお似合いだと思う」
「私もそう思う。あの人、すっごく綺麗だし、社長の奥様よりも上品じゃない?」
「バッグ見た?あれ全部ダイヤモンドよ、値段なんて想像もつかない」
最上階のオフィスの前に立つと、中から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「美希、もう一ヶ月も会ってないね。ずっと会いたかったけど、どうしてもいい口実が見つからなかった」
「うん、今妊活中なの。旭が私一人で出かけるの心配してて」
「そうなんだ?」
詠一の声は失望に満ちていたが、彼はすぐに笑顔を作って続けた。「お母さんになるんだね。おめでとう」
「ありがとう。それから三年前のことも、本当に感謝してる……」
「もう過ぎたことさ。君が幸せならそれでいい。他のことなんて大した問題じゃない。俺は、君がわざとあんなことしたとは思ってないよ」
美希は笑い、言葉の最後をふんわりと上げた。「子どもの頃、詠一はずっと私の騎士で守ってくれるって言ってたよね。あれ、本当に感動した。でも寧音が知ったら、きっと怒るだろうな」
美希はいつだって、何気ない口ぶりで私に対する非難を混ぜてくる。
まるで彼女が酷く傷ついた被害者で、私がすべての元凶であるかのように。
私はその会話の中のキーワードを敏感に拾い上げた。「三年前のあの件」
私が知っている三年前の出来事といえば、母親が交通事故で亡くなり、その直後に美希が留学の名目で海外へ行き、詠一が私にプロポーズした。
それは、私の悲劇の始まりでもあった。
考えがどんどん繋がっていくような気がした。それでも私は何も知らないふりをして、ドアを押し開けた。
私の姿を見た詠一は、驚いたような表情を浮かべた。「寧音?どうしてここに?めまいがしたなら家で休んでればいいのに」
私は笑って、美希の方へ視線を移した。「夫のオフィスに、いてはいけない誰かが隠れてないか、見に来ただけよ」
美希は一瞬固まり、何か言おうとしたが、私はすでに視線を逸らしていた。「詠一は『寂しくなったら電話して』って言ってたのに、全然出ないんだもん」
詠一は慌ててスマホを手に取った。そこには、私からの不在着信が二件あった。
どうやら、美希との再会の時間を邪魔されたくなくて、わざとマナーモードにしていたようだ。
「寧音、まさか詠一のことそんなに縛ってるなんて……彼、疲れちゃうよ?」美希は髪をかき上げ、得意げな目を向けてきた。「男って、ある程度の自由が必要なのよ」
「アドバイスありがとう。でもね、どんなに見張っても、ある男は心の中で何を考えてるかなんて誰にも分からないの」
詠一は明らかに焦って、すぐに私の手を握った。「俺は絶対そんな男じゃない。俺たち、美希ともずっと友達だし……」
彼がそんな風に焦っている姿を見て、私は思わず笑ってしまった。
彼が気にしているのは、私の気持ちではなく、美希への私の態度だった。彼女に迷惑がかかることを恐れているだけだった。
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