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何度も何度も君を諦めて第3話

この話は約2130字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

車が停まると、悠斗は明美を待たず、先に建物の中へ入っていった。

明美は彼の後ろについて入場し、そこで初めてその場が誕生日パーティーであることに気づいた。

ただし、主役は自分ではなく、別の誰かだった。

ステージの中央で皆に囲まれ、輝くような笑顔を浮かべる夢乃を見て、すぐに悟った。夢乃こそがこのパーティーの真の主役なのだと。

夢乃は豪華なオートクチュールのドレスに身を包み、特注のダイヤモンドネックレスがその細い首を一層引き立てていた。

耳元の真珠のイヤリングはまるで人魚の涙のようにきらめき、あまりの美しさに目を奪われずにはいられないほどだった。

明美はそのアクセサリーをじっと見つめていた。

彼女はそれらをよく知っていた。

それらは長い間、悠斗のショーケースに飾られていたものだったからだ。

まだ真実を知らなかった頃、明美はそれらが自分へのプレゼントだと信じ込んで、楽しみにしていた時期もあった。

だが年月が過ぎ、悠斗は毎年何かしら用意するものの、結局一度も彼女に渡すことはなく、いつの間にか明美もそのことを忘れていた。

そして今日、目の当たりにして初めて、それらがすべて夢乃のために用意されたものだと知ったのだ。

明美の視線に気づいたのだろう、夢乃がドレスの裾を軽く持ち上げ、柔らかな笑みを浮かべて近づいてきた。

「悠斗くん、この方が6年も付き合っていて、私に会わせたいって言ってた彼女よね?

本当に綺麗な人。さすが学校一のイケメンを虜にするだけあるわね」

どうやら夢乃が会いたいと言ったからこそ、悠斗は珍しく明美を連れてきたらしい。

その意図をようやく理解した明美は、自嘲するように小さく笑った。

悠斗の親友たちが近づいてきて、不満げに口を挟んだ。

「そうだよな、6年も付き合ってるんだぜ。兄貴は本当に一途で律儀だよな。誰かさんも約束を守って、変な試し行動はもうやめてほしいもんだ」

「今どき真剣に愛してくれる人なんてそういないんだから、大事にしないと。裏切ったりしたら後悔しても遅いぜ」

友人たちは遠慮なく悠斗を擁護し、明美がその皮肉を聞き逃すとでも思っているようだった。

だが明美は彼らの期待通り、何の反応も見せず、適当な席を見つけて静かに腰を下ろした。

ただ黙って、彼らの意図に気づかないふりをしながら、飾り物のような恋人役を演じ続けた。

その夜、明美は一度も席を立つことなく、夢乃のそばに寄り添う悠斗を静かに見つめていた。

普段は社交嫌いな彼が、夢乃のためにセレブたちと談笑している。

何事にも興味を示さない性格のはずなのに、夢乃の好き嫌いをしっかり覚えていて、彼女の代わりに酒を断ったりしている。

恋人である自分がすぐ近くにいるのに、夢乃が他の男性と軽く握手しただけで嫉妬して顔を曇らせている。

わずか数時間で、明美は悠斗が誰かを本気で好きになったときに見せる、無意識の気遣いや感情を目の当たりにした。

6年も一緒に過ごしてきたのに、彼が心から愛する人の前で見せる姿を、ようやく今になって知ったのだ。

ステージ中央でバースデーソングが終わると、皆が夢乃にプレゼントを渡しに集まった。

最後に登場した悠斗は、一枚の別荘の権利書を取り出し、穏やかな笑みを浮かべた。

「夢乃ちゃん、昔温かい家庭が欲しいって言ってたよね。だからこの別荘を贈るよ。君の願いが叶うといいな」

その言葉に、周囲の親友たちが一斉に囃し立てた。

「みんな知らないだろうけど、この別荘って全部兄貴が自分でデザインしたんだぜ。

6年かけて仕上げたんだってさ!」

「その庭にはラベンダーとチューリップが咲き乱れてるらしいけど、誰かの好きな花じゃない?」

「温かい家庭って言うなら、やっぱりそこに住む相手がいないとね。どう思う?」

親友たちのからかい声に、夢乃の頬が少しずつ赤く染まっていった。

彼女は慌てて手を合わせて、願い事をするふりをして場を落ち着かせようとした。それでようやく皆が静かになった。

その静寂の中、明美のスマホが突然「ピコン」と鳴った。

父親からのメッセージだった。文字に変換しようとして長押しするつもりが、うっかり再生ボタンを押してしまった。

「明美、お誕生日おめでとう。もうすぐ12時だよ。ケーキ食べたかい?」

その瞬間、夢乃に注がれていた視線が一斉に明美へと移り、皆が驚きに目を見開いた。

悠斗も一瞬呆然とし、振り返って眉を寄せた。

「明美、今日が誕生日だったのか?」

明美は特に表情を変えず、軽く頷いた。

以前なら悠斗は事前に誕生日の日付を聞いて、プレゼントを用意してくれていた。

でも今年は夢乃の誕生日と重なり、彼がすっかり忘れてしまったのも、まあ無理はないのかもしれない。

誰もがこんな偶然を予想しておらず、皆が顔を見合わせて気まずそうに黙り込んだ。

すると夢乃が場を和ませようと、明美の手を引いてケーキの前に連れて行き、自らロウソクを1本立ててくれた。

「せっかくの偶然だし、一緒にお祝いしましょうよ。明美ちゃんも願い事をして」

明美は断らず、静かに目を閉じた。

願い事を終えると、気まずい雰囲気を解こうと、悠斗が軽い調子で尋ねてきた。

「何を願ったの?何か欲しいものある?」

明美は彼を一瞬見つめ、淡々とした声で答えた。

「今年中に、無事に結婚できますように」

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