仮病の幼馴染を優先して、私を流産させた夫第1話
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私の名前は南結衣(みなみ ゆい)。
結婚記念日だというのに、夫の菊池颯太(きくち そうた)は彼の幼馴染・橘里奈(たちばな りな)を迎えに行くために、私を山の中に置き去りにした。
私はショックで流産し、手術台の上で死にかけた。
手術が終わると、私は颯太に電話をかけ、離婚したいと告げた。
だが電話口から聞こえてきたのは、幼馴染の泣き声だった。
「私のせいよ、颯太くんを責めないで……」
颯太は彼女を散々慰めた挙句、私がわがままだと喚き散らした。
私は一方的に電話を切り、その場を去った。
* * *
私の名前は南結衣(みなみ ゆい)。
結婚記念日だというのに、夫の菊池颯太(きくち そうた)は彼の幼馴染・橘里奈(たちばな りな)を迎えに行くために、私を山の中に置き去りにした。
私はショックで流産し、手術台の上で死にかけた。
手術が終わると、私は颯太に電話をかけ、離婚したいと告げた。
だが電話口から聞こえてきたのは、幼馴染の泣き声だった。
「私のせいよ、颯太くんを責めないで……」
颯太は彼女を散々慰めた挙句、私がわがままだと喚き散らした。
私は一方的に電話を切り、その場を去った。
……
退院して家に戻ると、颯太がリビングのソファに座っていた。
その隣には、ポップコーンを抱えた里奈が座っている。
二人は最新の恋愛ドラマを見ていた。
その甘い雰囲気に当てられたのか、里奈は颯太の腕に絡みつき、彼の胸に顔を埋めてとろけそうな笑顔を浮かべている。
私に気づいた颯太は、すぐに里奈の手を振りほどいた。
彼は立ち上がり、私を値踏みするように見た。
「やっと戻る気になったか?」
ここ数日、颯太から連絡はなかった。
どうやら私が流産して入院していたことも知らないらしい。
彼は私がただ駄々をこねて家出しただけだと思っているのだ。
私に少しでも関心があれば、この数日、私がどんな目に遭っていたか気づけたはずなのに。
颯太は何も聞かず、またソファに座り直して命令した。
「帰ったんなら、さっさとご飯作ってくれよ。
今日は里奈もうちで食べるから」
里奈は舌を出しておどけてみせた。
「お願いね、結衣さん」
私は里奈を一瞥した。
彼女はいつもこうやって颯太にまとわりついている。
そして私が怒ると、颯太はいつも軽い調子でこう言い訳するのだ。
「彼女は幼馴染で、妹みたいなもんだ。単純な子なんだから、そう目くじら立てるなよ」
私は深く息を吸い込み、鞄から書類を取り出して颯太に渡した。
「時間を作って離婚届を出そう」
颯太は離婚届に視線を落としたが、受け取ろうとはせず、私を非難した。
「そんな些細なことで離婚だと?心が狭いにも程があるぞ。
あの時は里奈を助けるためだったと分かってるだろ」
自分の名前が出たのを聞いて、里奈はすぐに泣き真似を始めた。
「ごめんなさい、結衣さん。
私のうつ病の発作が出て、颯太くんに電話しちゃったの。
悪いのは全部私だから、颯太くんと離婚だなんて言わないで」
うつ病?またうつ病か?
もし彼女が本当に病気なら、私は何も言わない。
だが、彼女は病気なんかじゃない。
すべては颯太の気を引くための嘘だ。
それなのに、彼はそれを信じて疑わない。
颯太は里奈が私を刺激するのを恐れたのか、彼女を見て言った。
「里奈、今日はもう帰りなさい」
里奈は名残惜しそうだったが、理由が見つからず、控えめに言った。
「颯太くん、明日の遊園地の約束、忘れないでね?
楽しみにしてるんだから」
颯太は答えず、手を振って彼女を帰らせた。
里奈は私にだけ分かるように睨みつけ、出て行った。
彼女がいなくなると、颯太は再びソファに座った。
「里奈も帰したんだから、もう機嫌直せよ。
これからはもうお前を置いていったりしないと約束するから」
私は颯太を見つめていた。
彼は何食わぬ顔で、私を山に置き去りにしたことなど大したことではないと思っているようだ。
もはや言葉も通じない。私は離婚届を彼に投げつけた。
「颯太、もう話すことはないわ。早くサインして」
颯太は離婚届に目もくれず、それを端に押しやった。
彼は私の腕を掴んでソファに引き寄せ、私は抗う間もなく彼の隣に倒れ込んだ。
颯太から甘ったるい香水の匂いがした。里奈が愛用しているやつだ。
吐き気を催して身をよじったが、颯太は強引に抱きすくめてきた。
「ハニー、機嫌直せよ。結婚記念日をすっぽかしたのは悪かったよ。
明日はその埋め合わせをするから」
彼にハニーを呼ばれ、一瞬気が遠くなった。
新婚の頃は、あんなに甘い声で呼んでくれていたのに。
もうどれくらい、ハニーで呼ばれていないだろう。
何か言おうとした瞬間、颯太の首筋に生々しいキスマークがあるのが目に入った。
その口紅の色は、里奈のお気に入りだ。
あんな安っぽくてどぎつい色を好んでつけるのは、彼女くらいのものだ。
さっきの香水の匂いだけでも吐き気がしたのに、これを見て、彼らが私たちの新居で何をしたかを想像すると、さらに胃がせり上がってきた。
私は力任せに颯太を突き飛ばした。
「触らないで!気持ち悪い!
明日は里奈と遊園地に行くんでしょ?」
颯太は眉をひそめた。
「なぜそうやって、いつも、すぐに騒ぎ立てるんだ。
母さんが里奈を気に入って、お前を疎むのも無理はないな」
私は鼻で笑った。
確かに、颯太の母親は私を嫌っている。
地方の田舎者で、育ちが悪いと見下されているのだ。
私が財産目当てで颯太と結婚したと信じ込んで疑わない。
私よりも里奈の方がお気に入りだ。
私の目の前で「里奈ちゃんが嫁だったらよかったのに」と言い放つほどに。
颯太は私の考えを読んだのか、不機嫌そうに言った。
「いい加減にしろ、結衣。機嫌を取るのも疲れるんだよ。
母さんも言ってたぞ、男の子さえ産めば、お前を嫁として認めてやるってさ」
「男の子?ああ、そういえば言ってなかったわね」
私は颯太を見た。その表情は能面のように無表情だった。
「颯太……子供、流産したの」
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