人生をやり直したら、妻の不倫を応援する第2話
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「夏美さんはいまや有名な音楽家で、渉さんが彼女のマネージャーなんだって。二人はまさに美男美女で、お似合いのカップルよね。翔太が今さら夏美さんとよりを戻したいなんて、ありえない話だわ……」
親戚たちがひそひそと噂している。夏美はつまらなそうな顔で、渉の腕に寄りそっていた。
「もう昔のことよ。今、私が一番愛しているのは、渉なんだから」と彼女はささやいた。
その言葉で、みんなぴたりと口を閉ざした。確かに、今は夏美と渉が仲むつまじい夫婦なのだ。二人の前で昔の話を蒸し返すのも、ばからしいことだ。
俺は彼らをちらっと見て、くるりと向きを変えると、近くのウェイターに飲み物を頼んだ。
俺はコーヒーをちびちび飲みながら、ただ早く両親が来てくれないかと願っていた。大事な話さえ終われば、すぐに法律事務所に戻って仕事の続きができるのに。
でも、渉は俺がのんびりしているのが気に食わないようだった。
彼は親切ぶった様子で俺の前にやってくると、心配するふりをしながら、あからさまな嫌味を言ってきた。
「翔太さん、ひさしぶり。ずいぶん顔色が悪いみたいだけど、どうしたの?そんなよれよれの格好で集まりに来るなんて、普段の仕事がよっぽど大変なんだね」
その瞬間、まわりの視線が一斉に俺に集まった。そして、何人かは年長者ぶった口ぶりで、俺をとがめはじめた。
「翔太も、なんでわざわざ弁護士なんてやってるのかね。時間がないだけじゃなく、お金もたいして稼げないんだろう?もうすぐ30歳だっていうのに、彼女もいないなんて」
「やれやれ、情けないもんだ。だからここ何年も、こんな集まりに顔を出せなかったのかね」
俺は渉のあざけるような視線を受けとめ、ようやく、彼と夏美の姿をちゃんと見る気になった。
夏美は髪をきれいに結いあげて、高級ブランドの定番カシミアコートを羽織っている。身につけたアクセサリーはどれもオーダーメイドの宝飾品ばかりで、いかにも高貴な雰囲気をまとっていた。
渉も、彼女と同じブランドシリーズのスーツを着こなしていた。手には結婚指輪がひとつ光るだけ。それでも、彼が持つ独特の気品は、まるで物語から抜け出してきた御曹司そのものだった。
なるほど、みんなが二人を「美男美女カップル」だと言うのもわかる。こうして見ると、確かにとてもお似合いだ。
俺はじんじんと痛むこめかみを揉みながら、渉からそっと距離をとった。
「渉、言いたいことはそれで終わりか?もし終わったなら、少し離れてくれるかな。体の安っぽい香水のせいで、頭が痛くなってきた」俺は淡々と言った。
渉の顔が曇った。だが、何か言い返すより早く、夏美が彼をかばうように割りこんできた。「翔太!渉はあなたのことを心配してるのよ。その言い方はなんなの?」
俺は眉をひそめた。苛立ちがこみあげてくる。でも、こんな場合、俺はその気持ちを無理やり心の奥底に押し込めた。
「別に不機嫌なわけじゃない。ただ、一日働いて疲れてるだけなんだ。昔話に付きあってる余裕はなくてね」俺は平静をよそおって言った。「だから、少し離れてくれないか?」
その言葉に、夏美の表情がいっそう険しくなる。彼女はいつも周りからちやほやされることに慣れていたし、自分は俺より何倍も恵まれた人生を送っていると思っていたからだ。
夏美にしてみれば、俺は彼女のすべてを羨ましがり、嫉妬するべきなのだ。いまみたいに、平然とした態度をとるなんて許せなかった。
渉は、夏美の感情の変化を敏感に感じとった。そして、あわてて彼女をなだめるように声をかける。「ねえ、夏美。今日は集まりなんだ。翔太さんと張りあうのはやめよう。
なにしろ、昔、あんなことがあったんだから。彼が根に持つのも無理はないさ。もう少し、大目に見てあげよう」
その言葉で、ようやく夏美の表情が和らいだ。彼女は渉の腕にぎゅっと抱きつくと、愛情のこもった瞳で彼を見あげる。「あなたの言うとおりね。やっぱりあなたのほうが、ずっと人当たりがいいね」
そう言うと、夏美はまた俺の方に顔を向けた。その顔には、あからさまな嫌悪と軽蔑が浮かんでいる。「翔太、何年たっても、あなたはちっとも変わらないのね。相変わらず、頭が固くて、本当にいやな人」
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