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亡き元夫がくれた祝福のメール第2話

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慌ただしく去っていく景介の背中を見つめながら、彩寧は少し茫然としていた。

彼が自分を置いていったのは、これが初めてだった。しかも、理由を説明する間さえなかったのだ。

しばらく呆然としたあと、彩寧は床に落ちていたネックレスを拾い、彼のあとを追って外へ出た。

外へ出て初めて、景介がすでに一人で車を出してしまったことに気づいた。彩寧は急いでタクシーを拾い、その車を追うしかなかった。

車は陸川家の本邸の前で止まった。彩寧が車を降りると、少し離れたところに、華奢な女性が大きな袋や箱をいくつも抱え、目を赤くして門の前に立っているのが見えた。

そして、普段は穏やかで品のある、景介の母・陸川冴子(りくかわ さえこ)が、怒りに任せて、手当たり次第に物をその女性へ投げつけていた。

「出てお行き!二度と陸川家に姿を見せるんじゃないよ。景介の前に現れるなんてもってのほかだ!今度その顔を見せたら、叩き出してやるからね!

そんな物を持ってきたからって、私たちが許すとでも思ったのかい?」

彩寧は、冴子がここまで取り乱す姿を見たことがなかった。彼女を知ってから二十数年、冴子はいつだって慈しみに満ち、穏やかで優しい人だった。

この女性はいったい何をしたのだろう。冴子をここまで我を忘れさせるほどのことだったのだろうか。

そして急いで駆けつけてきた景介も、その女性を目にした瞬間、いつもは冷静で自制心が強く、感情を顔に出さないはずの彼が、彩寧の見たことのない表情を浮かべたのだ。

それが喜びなのか、怒りなのか、それとも押し殺された何かなのか、彩寧には言い表せなかった。

景介は女性の前へ歩み寄った。握りしめた手の関節が、白く変色するほど強張っていた。

「何をしに来た」

女性は顔を上げ、赤く潤んだ目で景介を見つめた。

「景介、私……戻ってきたの。おば様と、あなたに会いに来たくて……」

景介の目は、凍りついたように冷たかった。

「俺たちは、お前に会いに来てほしいなどと思っていない。陸川家も、お前を歓迎しない。

程島七瀬(ほどしま ななせ)、警告しておく。今後二度と俺の前に現れるな。お前の顔を見るだけで、吐き気がする」

彼はこの上なく冷たい言葉を吐いていた。けれど彩寧には、景介の手がかすかに震えているのがはっきり見えた。

程島七瀬と呼ばれた女性は、ついにこらえきれなくなったのか、瞳にたまった涙をはらはらとこぼした。

「ごめんなさい。私たちが恨まれているのは分かっています。あの時……」

言い終える前に、冴子は逆鱗に触れられたように激怒した。そばにあった花瓶を乱暴につかみ、七瀬の頭めがけて思いきり振り下ろした。

だが、誰も予想しなかったことが起きた。その瞬間、景介はためらうことなく七瀬を自分の胸へ引き寄せ、身をひるがえして彼女をかばったのだ。

割れた花瓶の破片がたちまち景介の頭にぶつかり、鮮血が地面一面に飛び散った。

「景介!」

彩寧は血の気が引き、慌てて駆け寄った。

病院へ向かう間、彩寧には事情を尋ねる余裕などなかった。ただすぐに景介を病院へ送り、医師が手当てをしている隙に手続きを済ませ、それから冴子をなだめに行った。

すべてを終えたあと、彩寧は医師から処方された薬を手に病室へ戻った。

病室の扉は少し開いていた。中の様子は、ひと目で分かった。

景介はベッドのヘッドボードに背を預けていた。そして、景介にも冴子にもあれほど嫌われていたはずのあの女性が、今は景介の胸にすがりつき、涙ながらに何かを訴えていた。

景介は眉を寄せ、震える手を伸ばした。

けれど結局、彼は彼女を押しのけなかった。

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