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二重の裏切りの果てに第3話

この話は約1777字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

机の上には、精巧なギフトボックスが置かれていた。

中には、一目でわかるほど高級なサファイアのネックレス。

市場には出回らず、金を積んでも手に入らない——まさに、幻の逸品。

私は昔から、サファイアの静かで孤高な美しさが好きだった。

けれど、祈矢はいつも私に金のアクセサリーばかりを贈った。

「ジュエリーは資産価値があるかが大事だよ。君はきれいだから、何をつけても似合う」

そう言っていた。

私は、その甘い言葉を信じていた。

でも今、私はその箱の中からサファイアのネックレスを取り出した。

とても美しい。

中心にあるサファイアはうずらの卵ほどの大きさで、周囲には小さなダイヤが散りばめられ、少し揺れるだけで眩しく輝いた。

その裏側に、刻まれていた文字——「Saya」

Saya——紗耶

呼吸が止まった。

そして、崩れるように笑いながら泣いた。

全てがつながった。全てが、理解できた。

でも、だからといって心が救われるわけじゃない。

私は、極限の痛みを堪えながら、彼が築いた「愛」という名の牢獄から逃げ出した。

もう、十分だ。

本当に……もう、いい。

私は、遠くへ行くべきなのだ。

この場所から、彼ら全員から。

すでに「偽装死亡」サービスに連絡し、すべての準備は整えてある。

あとは、警察が祈矢が三年前から隠していた示談書を開示してくれるのを待つだけ——

その夜、祈矢は帰ってこなかった。

翌朝、彼は何事もなかったように帰宅し、笑顔で言った。

「澪、明日は紗耶の誕生日だし、大晦日でもある。家族で一緒に過ごそう。

君の名前で、紗耶を年越しディナーに招待しておいたんだ。

長い間、姉妹の間に溝があったけど……俺のためだと思って、会ってくれないか?」

私は祈矢を見つめた。

彼は低く穏やかな声で私をなだめ、その黒い瞳には誠実さと深い愛情が滲んでいた。

そう、それはあの最も絶望していた年にも見せていた表情だった。

私が自殺未遂を起こしたあの夜、彼は同じ目をして、私の手からナイフを取り上げ、私を救った。

「わかった。行くよ」

彼が望むなら、叶えてあげる。

これまで、うつで何度も苦しんできた私を救ってくれた恩返しだと思えばいい。

大晦日。

祈矢はレストランを貸し切った。

そして、紗耶は白いワンピース姿で、ゆっくりと現れた。

祈矢は何のためらいもなく、私の手を離して彼女の前へ歩いて行った。

「紗耶、誕生日おめでとう。これは俺からのプレゼントだ」

差し出されたのは、見覚えのあるギフトボックス。

あの——サファイアのネックレス。

やっぱり。彼女のためのものだった。

私がまだその場にいることに気づいたのか、祈矢はぎこちなく笑って言い足した。

「澪と一緒に選んだんだよ」

紗耶は微笑み、わざとらしく眉を上げて言った——

「ありがとう。すごく気に入ったわ」

祈矢がキッチンに料理の確認に行った隙に、彼女は私の前へやってきた。

「神原家の奥さんが、私のことを思い出してくれるなんて……ありがたいわぁ。

でもさ、あんたの男なんて、私が捨てた残り物だって、知ってた?」

私は彼女を一瞥し、静かに席に座った。

「それを言いにきただけ?」

私が動じないことに一瞬面食らったようだったが、紗耶はすぐに意地悪く笑った。

「もちろん、それだけじゃないわ。

プレゼントのお返しに、私からも贈り物があるの」

彼女は、緑色のメノウのブレスレットを取り出し、ごみでも捨てるように私の前へ放り投げた。

見た瞬間——私は凍りついた。

それは、母の骨壺に納めていた、あのブレスレットだった。

「どこで、これを手に入れたの?」

私は彼女の腕を掴み、激しく問い詰めた。

紗耶は挑発的に笑いながら答えた。

「ふふ、あの女の骨を掘り返したら出てきたのよ。どう?思い出にって取っておいてあげたんだから、私って優しいでしょ?

綾瀬澪、あんたの母親がいつまでも離婚しないから、うちの母さんは病院でうつ病になって死んだのよ。

全部、あの女が悪い。だから、死んでくれてちょうど良かった!

でもさ、死んだからって、神聖な存在になれると思ったら大間違い。

だから私は、あの骨を下水に撒いてやったの。

それが、あの女にふさわしい最期だと思わない?」

怒りが、頭の先まで一気に駆け上がった。

目が真っ赤になるのがわかる。

次の瞬間、私は彼女の喉元に手をかけていた。

「綾瀬紗耶……やっぱり、あなたが……お母さんを殺したんだな……!

……私が……あなたを殺してやる!!」

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