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二年間の夢を、彼は一言で消した第2話

この話は約2124字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

心臓がまたじくじくと痛み始めて、息も苦しくなってきた。

感情の波は先天性心疾患の私に負担をかけると、医者に言われていた。

急いで錠剤を飲み込んで、ソファに背をもたせた。冷や汗がじっとりと滲んでいた。

部屋中に自分の浅い呼吸の音が響いていた。涙がまたこらえきれずに溢れてきた。

三年前、アイスランドでのプロポーズの翌日、高熱で倒れたことを思い出した。

渉は一晩中そばにいてくれて、不器用に体にいいスープを作って、食べさせてくれる時は冷めるまでふうふう吹いてくれた。

「凛、これからの全ての一分一秒、絶対にお前を一番に考える」

そう言った時の彼の目の中には、私しかいなかった。恥ずかしくて布団にもぐって出てこられなかった。

もっと昔のことも思い出した。初めて会った時。海外の有名な教会を訪れた時のことだった。

白い鳩が散ると、彼が私のカメラの前に飛び込んできた……

薬が効いてきて、心拍が少し落ち着いた。ようやく眠気が来たと思ったら、スマホの振動で目が覚めた。

渉からのメッセージだった。

【凛、親友が振られてさ、今夜付き合わないといけなくて、帰れない。早く寝てて】

ほら、新しい言い訳を考えることさえ面倒になったみたいだ。

先週は会社の接待、先々週は親の用事。

画面を見つめながら、心臓を何かに鷲掴みにされたような感覚がした。

深夜一時、痛みで眠れずにいると、綿から動画が届いた。

画面は揺れていて、バーの照明が薄暗く煌めいていた。

渉が酔った目でボックス席に寄りかかっていて、カメラが彼に向いていた。

綿の声が後ろから聞こえてきた。

「渉くん、さっき凛さんって優しすぎて、逆に息苦しいって言ってたよね?」

渉は顔を赤くして、ろれつも回らずまともな言葉も出てこない。

綿が勝手に続けた。

「凛さんって渉くんのことが好きすぎるから、尽くすことで繋ぎとめようとしてるんだよ。渉くん、落ち込まないで」

言い終わると同時に、周りから聞くに堪えない声が上がった。

「え、あの人ってそんな人だったの、普段は優しいのって計算してたからなんだ」

「半分の命で一生縛り付けるの?そんな愛情こわすぎ」

「朝倉って本当に可哀想、ずっと恩義で縛られてたんだね……」

「だよね!朝倉が一番かわいそう!」

「こういう恩着せがましさって一番怖いよな!」

……

渉はただ手を振って、ぼそっと言っただけだった。

「……そんなこと言うなよ」

彼は私を一言も庇わなかった。

動画はそこでぷつりと切れた。

心臓がえぐられるように痛んで、気を失いそうになった。

唇を噛み切るほど噛んで、一瞬だけ意識を引き戻し、なんとか救急に電話した。

病院から帰ってきたのは翌日の午後だった。

診察券を一人で持って、放心したまま病院の玄関を出た。市の中心部を通りかかった時、渉と綿がホテルから出てくるのが目に入った。

綿は当然のように彼の腕に絡みついていた。渉は彼女を見下ろして、私はずいぶん長い間見ていない穏やかな顔をしていた。

二人は隣の映画館へまっすぐ歩いていった。普通のカップルみたいだった。

私はその場に立ち尽くして、二人が見えなくなるまで見ていた。

どうやって家に帰ったのか分からなかった。

玄関を開けると、渉がソファに座っていた。

私を見て、すぐに眉をひそめた。

「昨夜どこに行ってたんだ?電話も出なかったじゃないか」

私の声が掠れた。

「病院。救急で」

彼は一瞬固まって、どこか居心地悪そうに言った。

「どうした?また具合が悪くなったのか?」

私は静かに口を開いた。

「綿が送ってきた動画、見た」

彼は苛立った口調で言った。

「また何が言いたいんだ?綿はただ思ったことを口に出しただけで、悪気はないだろ。あいつらも事情を知らないだけだ、なんでそんなに気にするんだ?」

「私が恩で縛り付けてると言って、それが悪気なし?」

「じゃあ俺にどうしろって言うんだ!」

急に逆ギレし始めた。

「全員殴れとでも?凛、少しは大人になれないのか?綿は俺のことが心配なだけだ!」

「心配って、何が?」

「心配って……プレッシャーが大きいから心配してくれてるんだ!」

顔を赤くしていた。

しばらく沈黙が続いた。

こみ上げる息苦しさと悲しさをこらえながら言った。

「渉、私が半分の腎臓と引き換えにしたものが、あなたが綿と一緒になって私を恩着せがましいと罵ることだったの?」

渉は一瞬固まって、目が泳いだ。

「そういうつもりじゃなくて……」

「じゃあどういうつもり?」

こらえきれずにまた涙が出た。

「綿の涙だけが本物で、私のはただあなたを追い詰めてるだけなの?」

彼は一瞬で激昂した。

「またそれか、毎回毎回同じことばかり!

そうだよ、お前は偉い、俺を救ってくれた!だから俺はお前を一生女神様みたいに祀り上げないといけなくて、自分の感情ももてないのか?」

鼻先を指差してきた。目には隠しようのない嫌悪と疲れがあった。

言い終えて、彼は扉を叩きつけて出ていった。

十分後、綿がツーショットをSNSに投稿した。渉と並んでゲームをしている写真だった。

キャプションには【私といる時、渉くんはずっと自由だよ!】

彼はすぐいいねを押していた。

写真の中の彼の横顔を見つめた。半分の命をかけて愛した男の顔だった。

でも彼の中で、私の愛も犠牲も、とっくに最も手放したい重荷になっていた。

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