二十年遅れの「公平」なんて、もういらない第3話
この話は約1444字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
姉はトロフィーと副賞を受け取ると、すぐに写真を撮ってインスタに載せた。
すると兄も張り合い始め、バスケの大会で優勝した自分のことも祝ってほしいと言い出した。
結局、父と母は二人まとめてお祝いの食事会を開くことになった。
その食事会に選ばれたのは、本来なら私の誕生日を祝うはずだった日だった。
20歳の誕生日は、一度しかない。
半年以上前から楽しみにして、家族全員がその日を空けられることまで確認していた。
積み重ねてきた期待が、一気にばかばかしく思えた。
ホテルの宴会場で、父と母は珍しくやさしい声で私をなだめた。
「誕生日は別の日でも祝えるでしょう。
お兄ちゃんとお姉ちゃんは昔から何でも張り合うんだから、今日は譲ってあげて」
私はぎこちなく笑った。
これが、この家で祝ってもらえる最後の誕生日になるかもしれない。
その言葉は飲み込んだ。
しばらくして、ケーキが運ばれてきた。
兄と姉は並んでケーキの前に立ち、得意そうに笑っていた。
親戚の一人が冗談めかして言う。
「そういえば、琴音ちゃんも今日が誕生日でしょう?
三人のお祝いなら、ケーキ一つじゃ足りないんじゃない?」
そのときには、父はもうケーキを二人分に切り分けていた。
こちらを振り返り、気まずそうに笑う。
「三人分に分けるのは難しいから、琴音の分はまた今度な」
また今度。
子どものころから、何度聞いてきただろう。
父と母の気持ちは、いつも兄と姉にばかり向いていた。
私の番は、どれだけ待っても回ってこなかった。
母は私が機嫌を悪くして場を乱すのを気にしたのか、私だけを端へ呼び、手伝うよう言いつけた。
そのあとは、食事会の間じゅう、ホテルのスタッフのように動き回った。
ようやく少し休もうとしたとき、母と父方の叔母の話し声が聞こえてきた。
「上の双子がかわいくて、愛嬌があるのはわかるけど、琴音ちゃんだってずっと手のかからない子でしょう。
あの二人ばかり可愛がるのは、さすがにかわいそうよ」
気にしないと決めていたのに、思わず足を止めた。
しばらくして、母の声が聞こえる。
「あなたにはわからないわよ。あの双子は私たちにとって特別なの。琴音とは……やっぱり違うのよ。
それに、あの子は昔から何を考えてるのかわからないでしょう?いつも黙ってるし、笑いもしないし……正直、かわいいと思えないのよね」
ぼんやりしていたせいで、手元が滑った。
ポットから熱いお湯がこぼれ、手の甲にかかった。
手の甲は熱を持って痛んだ。それでも、母の言葉のほうがずっとつらかった。
そのとき、祖母が私の手を取った。
そして、自分の手首につけていた真珠のブレスレットを外し、私の手のひらにのせる。
「琴音、今日は20歳の誕生日でしょう?
お誕生日、おめでとう。
たいしたものじゃないんだけどね。もう10年以上、大事につけてきたものなの。よかったら、誕生日のプレゼントにもらってくれる?」
高価なものではない。
それでも、祖母が長い間大切にしてきたものだとわかった。
祖母が私に贈ってくれた、何より大切なものだった。
涙があふれた。
お礼を言おうとしても、声は震えて、うまく言葉にならなかった。
周りには親戚がいて、父と母もときどきこちらを見ている。
大声で泣くこともできなかった。
私は祖母を抱きしめて、何とかお礼を言った。それから化粧室へ行き、気持ちを落ち着けた。
しばらくして会場へ戻ると、バッグに入れていたブレスレットがなくなっていた。
慌てて見回す。
最後に目に入ったのは、姉の手首だった。
そこには、さっき祖母にもらった真珠のブレスレットがあった。
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