不倫した元夫は自らを去勢した第3話
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私と雨理は、百合子を左右から挟むように寄り添っている。
周囲の誰もが、異様なものを見るような目で私を見ている。
ひそひそ話までも聞こえてきた。
「川良詩織(かわら しおり)、急にどうしたの? 全然彼女らしくないよ」
「以前の彼女なら、とっくにテーブルをひっくり返してるはずよ。今日はどうしてあんなに大人しいの?」
皆が怪しむ中、百合子は満面の笑みを浮かべて告知した。
「皆様に素晴らしいお知らせがあります。
嫁の雨理が妊娠三ヶ月を迎えました。
医師によると、男の子だそうです。我が川良家にとって、まさに二重の喜びですわ」
その場にいる者たちは、こぞって上辺だけの祝辞を並べ立てた。
実際のところ、金持ち界隈では珍しい光景ではない。
しかし、ここまで公然と妻である私の名誉を傷つけるのは、川良家くらいだろう。
雨理はしおらしく微笑み、祐輔は幸せそうに彼女の肩を抱いている。
私はまるでピエロのようだ。この誕生日会を盛り上げるための一つのエピソードに成り下がっている。
ついに私は口を開いた。
「本当はお義母さんの誕生日の後に、離婚の話をしようと思ってた。
でも、栗島が妊娠したのなら、お腹の子を名無しの私生児にするわけにはいかないわよね。
だから、離婚についてはこの場で話すのがちょうどいいと思った」
私は少し離れたところにいる夏穂に目を向けた。彼女は私の意図を察し、祐輔に離婚届を差し出した。
祐輔は眉をひそめて立ち尽くし、私を問い詰めるような視線を向けた。
「……また騒ぎを起こす気か?」
私は冷静に、淡々と微笑んだ。
「本気よ。栗島を愛してると言いながら、一生愛人のままにしておくのが、あなたの愛なの?」
私の瞳に宿る、一切の揺らぎのない静寂に、祐輔は衝撃を受けている。
一瞬、彼の黒い瞳に信じられないという色が浮かんだ。
かつて、死んでも自分から離れないと思っていた女。
その女が今、極めて穏やかに、そして断固として離婚を突きつけている。
私の言葉に、彼は言葉を詰まらせた。
雨理をそれほど愛しているのなら、彼女を傷つけるような言葉を言うはずがない。
会場は静まり返り、全員が祐輔の動向を見守っている。
雨理も彼をじっと見つめている。
祐輔がわずか二秒ためらっただけで、雨理はしびれを切らし、健気に身を引くふりをした。
「祐輔、無理をしないで。
分かってるわ。私とあなたじゃ身分が違いすぎるもの。
この子は堕ろすわ。私は愛人のままでいいの。
でも……正直に言えば、自分の子供が私生児だと非難されるのは耐えられない。
だから、この子はあきらめるの」
祐輔は慌てて彼女をなだめた。
「堕ろすなんて許さない!これは二人の愛の証で、俺にとって初めての子供なんだぞ。
誰が私生児なんて言わせるもんか。俺が必ず、正当な身分を与えてやる」
私はわざとらしく、感心したように言った。「それでこそ男よ!サインして!」
私と雨理の板挟みにあった祐輔は、ペンを手に取った。
内容を確認することもなく、離婚届にサインを書き込んだ。
彼は私に歩み寄り、二人だけに聞こえる声で囁いた。
「雨理が子供を産んだら、すぐにまた復縁してやる。
今は少し我慢しろ。お前を見捨てるつもりはないからな」
私は相変わらず冷静だ。心の中で、重荷が下りたような安堵のため息をついた。
――祐輔、もうあなたなんていらない。
永遠に。
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