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不倫した元夫は自らを去勢した第2話

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そう言いながら、祐輔は自然な動きで私の頭を撫でた。

「詩織もようやく思いやりが持てるようになったな。年上らしい余裕が出てきたじゃないか」

その言葉は、まるで犬を褒めているかのようだ。

胸の内に吐き気がこみ上げてきた。

以前の私は、彼の浮気が発覚するたびに、街中が騒然とするほどの大騒ぎをしていた。

人前でテーブルをひっくり返し、酒瓶で彼の頭を殴って病院送りにしたことは、15回はある。メディアにも晒され、彼は何度も面目を失った。

それでも、彼は決して改めなかった。

いつも私にこう言い放つだけだった。

「世間を見てみろ。この界隈の男で、女の一人や二人いない奴がいるか!

遊びは遊びだ。お前を捨てるわけじゃないだろ!」

そして、何度もこう言った。

「俺に何人の女がいようと、妻はお前だ。お前が彼女たちのことも気遣ってくれ」

父が亡くなったあの日、私は完全に目を覚ました。

その後の三年間、「目が見えないふり」と「耳が聞こえないふり」を貫き通した。

その結果として得られたのは、彼からの「ようやく思いやりが持てるようになった」という褒め言葉だ。

この三年間、私は祐輔のことに一切干渉しなかった。

彼にとって、私の存在は空気のようになっている。

息子はもう二歳になるというのに、祐輔は自分が父親であることすら知らない。私が彼のために息子を産んだことも。

私は難産で死にかけたあの日、彼は雨理と一緒に祭りの屋台を出し、リンゴ飴を売っていた。

彼は、雨理の「お金に執着せず、自分の力で生きる姿」を心から愛していると言った。

私はただ静かに冷笑し、何も言わなかった。

私の中では、彼はとうの昔に死んでいるのだ。

義母・川良百合子(かわら ゆりこ)の誕生日会当日、私は形だけの「親孝行な嫁」を演じるために出席した。

だが、手土産を持って会場に入ると、そこには祐輔と雨理が百合子を左右から囲んで立っている。

百合子は上機嫌で知り合いと話している。

「百合子さん、今日の髪型、本当に素敵だわ。着物にもよく合っていて、とてもエレガントだわ」

確かに、百合子の髪型は以前より洗練されており、アンティークで上品な髪飾りが挿してあった。

彼女は穏やかな笑みを浮かべ、満足そうに雨理の手の甲を叩いた。

「嫁が結ってくれたのよ。この子は手先が器用でね」

――百合子も雨理を認めた、ということか。

雨理は堂々とした笑顔で応えた。

「お義母さんに気に入っていただけて、良かったです」

祐輔も続いた。

「母さんは雨理のことが一番のお気に入りなんだ。俺に何度もそう言ってる。

雨理がうちの嫁になってくれたら、わが家は幸せになるって」

私は心の中で冷笑し、一秒たりともここに留まりたくないと思った。

背を向けて立ち去ろうとしたその時、後ろから雨理の声が聞こえた。

「詩織さん」

彼女の声は弾んでいる。それは、私と仲が良いと周囲に誤解させるための演技だ。

私は足を止め、平然と振り返って微笑んだ。

彼女の目に一瞬、意外そうな色が浮かんだ。

彼女の予想では、私が不機嫌な顔をしたり、感情を爆発させて百合子の面目を潰し、怒りながら立ち去ったりするはずだったのだろう。

今の私のように、これほどまでに落ち着いているとは思いもしなかったはずだ。

「詩織さん、今日は本当に綺麗だわ」雨理はわざとらしく親しげに振る舞った。

「ありがとう」私は微笑み、その言葉を受け流した。

彼女のことは、もう心に留めない。

彼女が仕掛けてくる敵対的な行動は、今の私にとってはただの無駄骨でしかない。

百合子は当然のような顔をして、私に言った。

「二人で一緒にお客様をおもてなししてちょうだい」

脳裏にふと、以前百合子が私に言った言葉が蘇った。

「これからは本当の娘だと思って、大切に可愛がるわ。

祐輔が浮気なんてしたら、私が真っ先に彼の足を折って、あなたの味方をしてあげる」

あの言葉はつい昨日のことのように鮮明だ。

だが今、私を最も惨めな立場に追い込んでいるのは、他でもない彼女だ。

百合子は私の手の甲を優しく叩き、小声で囁いた。

「詩織、雨理はいい子よ。これまでの女たちとは違うわ」

私は薄く笑みを浮かべ、心にもない言葉を返した。

「お義母さんのおっしゃる通りですね」

――どうせここを去るのだ。ここの出来事など、もうどうでもいい。

百合子は満足そうに微笑んだ。

「分かってくれて、本当に嬉しいわ」

彼女は顔を上げて祐輔に言った。

「ほら、言ったでしょう。詩織は物分かりのいい子だって」

祐輔は満足そうな眼差しで私を見つめ、誇らしげに言った。

「俺のしつけがいいからだ」

私のことを犬か猫だと思っているらしい。

以前の私なら、この誕生日会をめちゃくちゃにし、テーブルの一つ残らず叩き壊していただろう。

だが今の私は、どうでもいいような人のために、一片の感情もエネルギーも使うつもりはない。

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