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七年間、誰にも知らせなかった噓第1話

この話は約1953字。当サイトでは第1〜3話を試し読みできます。

深夜、なんとなくSNSを眺めていたら、【みんなのウェディングフォトが見たい】という投稿が目に留まった。

私も自分のウェディングフォトをコメント欄に載せようとしていた、まさにその矢先のことだった。一番多く「いいね」がついたコメントに、夫の瀬川拓朗(せがわ たくろう)と私の従姉、井尾真梨乃(いお まりの)が並んで写る結婚写真を見つけてしまったのだ。

頭の中で鈍い音が響き、目の前が真っ白になった。

震える指でそのアカウントのプロフィールを開くと、百件を超える投稿のほとんどが、ふたりのウェディングフォトで埋め尽くされていた。

下までスクロールして一番古い投稿を開くと、親友の金川美也子(かねがわ みやこ)のコメントが一番上に表示されていた。

【やっと公開したんだね。この日をどれだけ待っていたことか。末永くお幸せに】

さらに、私の母のコメントも続いていた。

【ふたりともお似合い。ちゃんと仲良くやりなさいね】

その下にも共通の友人や親戚たちの言葉がずらりと並び、誰もが同じように祝福していた。

頭の中で、最後の一本の糸がぷつりと切れたような気がした。

最初から最後まで、何も知らされていなかったのは私、白石佳乃(しらいし よしの)だけだったのだと、そのとき初めて気づいた。

* * *

私は取り憑かれたように、従姉の投稿を端から読み漁った。

5年前までさかのぼると、最初の投稿もやはりウェディングフォトで、こんな言葉が添えられていた。

【ずっと好きだった彼が選んでくれたドレスを、やっと着ることができた。

1日がかりの撮影だったのに、彼はどこまでも優しくて辛抱強かった】

じわりと、目の奥が熱くなった。

その前日は、私と拓朗が結婚写真を撮った日だったからだ。

写真の中の拓朗は笑っていた。従姉のポーズに自然に合わせ、キスされた瞬間には耳まで赤くしていた。

なのに、私と撮ったときの拓朗は、最後まで表情ひとつ変えなかった。

1枚1枚をたどるうちに、ふたりの5年間が少しずつ浮かび上がってきた。

世界各地を旅しながら撮影を重ね、行く先々にふたりの足跡を残していたようだった。

短かった従姉の髪は腰まで伸び、ドレスも簡素なサテンから、手の込んだ刺繍入りのものへと変わっていった。

拓朗は根っからの仕事人間で、結婚式の直前まで仕事をしているような人だ。それなのに、二週間に一度は必ず従姉との撮影に付き合っていたのだ。

この5年間の記憶が、走馬灯のように頭の中を駆け巡った。

数えきれない残業の夜。週末に突然入る「出張」記念日のたびに繰り返された「仕事が忙しくて」という言い訳。

そのすべてに、投稿の日付がぴたりと重なっていた。

私が仕事で上司に理不尽な扱いを受けていた日、ふたりはアイスランドのオーロラの下、一枚のカシミアの毛布に一緒にくるまっていた。

私が流産して、ひとり病院のベッドで痛みに耐えていた日、ふたりはニュージーランドの善き羊飼いの教会の前でキスをしていた。

拓朗の時間は、私と従姉に半分ずつ分けられていた。ただ、私に回ってくる半分は、いつもどこか欠けたものだった。

心臓を刃物で抉られたように、息もできないほどの痛みが押し寄せた。

震える手で拓朗とのトーク画面を開いた。最後のメッセージは今日の午後のものだった。

【急な出張が入った。夜は待たなくていい】

結婚してから、拓朗は付き合いで朝まで帰らないことが多かった。

そのたびに連絡を取ろうとしても、拓朗が電話に出ることはなかった。返事が来るのは翌日になるか、出張に同行している秘書から代わりに連絡が来るかのどちらかだった。

いつものように電話をかけてみたけれど、やはり拓朗は出なかった。

しばらくして、代わりにかけ直してきたのは美也子だった。

「よしのちゃん、拓朗さん酔っちゃって電話に出られないの。もうホテルに着いてるから心配しないで」

美也子は私の親友であり、拓朗の秘書でもある。いつも彼の行動を私に報告してくれる存在だった。

「私がついてる限り、拓朗さんに浮気なんてさせないから」と、冗談めかして言っていたこともある。

私は従姉の最新の投稿に目を落とした。添えられていたのは、拓朗から送られてきたメッセージのスクリーンショットだった。

【今夜は残業なし。家に帰って、ずっとそばにいるから】

私は初めて強い口調で問い返した。

「本当に?本当に出張中なの?」

美也子は一瞬黙り込み、それから笑って言った。

「なに、私のことまで疑うの?」

それ以上は何も聞けなかった。電話を切ったあと、気づけば涙が止まらなくなっていた。

みんなが私を騙していた。一番信じていた人にまで、騙されていたのだ。

【私の男を奪っておいて、本垢で堂々と載せる度胸もないくせに、裏垢でこそこそやるなんて、自分でも恥ずかしいと思わないの?】

私は元の投稿のコメント欄に、そう打ち込んだ。

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