七年目の裏切り――私は身代わりだった第3話
この話は約1110字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
週末、司たちの同窓会があった。
結衣は本当は行きたくなかったが、司が何年も思い続けてきた唯という女性が、どんな人なのか気になった。
着いた頃には、会場のカラオケはすでに賑やかだった。
司の友人、田中勇介(たなか ゆうすけ)が首に腕を回してきた。「なんだよ、やっと来たな。唯が帰ってきたんだぞ、お前もやっと長年の想いが実ったな」
司は少し慌てて、勇介を押しのける。「変なこと言うなよ」
「変じゃねえって。お前が唯のこと想ってるの、同級生なら誰だって知ってるだろ」
そう言いながら、勇介は司の後ろにいる結衣に気づく。
ニヤリと笑って尋ねた。「で、この人は?」
司は少し気まずそうに答える。「……俺の彼女」
勇介は目を丸くした。「彼女?お前、彼女なんて作ったのか?知らなかったぞ。ずっと唯を待ってたんじゃないのか?」
司の表情が曇る。
その時、人混みの中から明るく華やかな声が近づいてきた。「誰が彼女作ったって?」
勇介が手を振る。「唯、こっち来いよ。司が彼女できたって言うんだけど、信じられなくてさ」
司が何年も心に抱き続けてきた女性が姿を現した。
結衣はこれまでSNSでしか見たことがなかったが、ついに本人と対面する。
確かに綺麗だった。
しかも一瞬で目を奪われるような、強い存在感を放つ美しさ。
これでは司が何年も忘れられなかったのも無理はない。
唯は結衣を一目見て、疑わしげな、そしてどこか敵意を含んだ目を向ける。「司、本当にこの人が彼女なの?」
司は喉を動かし、言葉を探すように口を開いた。「彼女は……」
結衣は口元を引きつらせ、淡々と口を挟む。「私はちょっと忘れ物を取りに来ただけ。この部屋に置いてきたものがあって」
司は驚いたように結衣を見る。
彼女は視線を返さず、足元だけを見つめていた。
勇介が尋ねる。「何を忘れたんだ?」
「……イヤリング」
「来る前、掃除のおばさんが片付けてたけど、イヤリングは見なかったな。よかったら聞いてみるか?」
「ありがとう」
結衣はすぐに背を向け、足早にその場を離れた。
背後で、勇介が笑いながら司をからかう声が聞こえる。「唯に焼きもち焼かせたくて、わざとそう言ったんだろ?可哀想にな、あの子はただ物を取りに来ただけなのに利用されて」
さらに唯に向かって言う。「お前も、司をこんなに追い詰めるなんてひどいぞ。もういい加減、司と付き合ってやれよ」
唯の声は、先ほどまでの警戒を解いたように軽やかだった。「私と司は一番の親友なの。変な勘違いしないで」
親友?
結衣は思わず足を止め、振り返った。
司は唯をじっと見つめていた。
その「親友」という一言が出た瞬間、彼の目の光はすっと消えた。
そして苦笑し、唯の言葉に合わせる。「そうだな。俺と唯は親友だよ」
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