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七年後、夫が私と娘に泣き縋る第3話

この話は約1456字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。

「ママ、パパにもう一度チャンスあげようよ?

私の誕生日までにパパが覚えてなかったら、その時は出て行こう」

「うん」

渡辺千明、これが私と安珠からあんたへの最後のチャンスだ。

翌朝、私は娘といつものように露店を出した。

本当は私も名門大学を出ていた。

けれど、出産で社会から離れすぎて、もうどこの会社も雇ってくれなかった。

仕方なく、安珠を連れて公園で露店を出すしかなかった。

私はお菓子やおもちゃなどを売り、安珠はその横で歌ったり踊ったりして客を呼び込む。

安珠は人懐っこくて甘えも上手だ。

その愛らしさに惹かれて、多くの人が私の店に立ち寄ってくれた。

「店主、このアイスいくら?」

「一つ六十円、二つで百円です」

顔を上げて、思わず息をのむ。買いに来たのは思月だ。

「じゃあ二つちょうだい。早くしてね、うちの人にバレたら困るから」

まるで泥棒のように、思月は百円を差し出し、辺りを気にしながらアイスをポケットへ押し込んだ。

そのとき、不意に大きな手が横から伸びてきて、彼女の手を掴んだ。

「思月、何度言えばわかるんだ。生理中で生理痛もあるのに、冷たいものはダメだ。

すみません、このアイスはなしで」

視線が交わった瞬間、千明の顔は一気に険しくなる。

なのに、思月は気づかないふりをする。

「いいじゃない、千明。見てよ、この子ども、すごく可愛いじゃん。二つくらい買ってあげようよ、商売の助けになるし」

その憐れみを帯びた眼差しは、むしろ私の心を鋭く突き刺した。

「痛っ!」

ちょっとの間の不注意に、手にしていた編み棒が指を突き抜け、鮮血がにじみ出た。

私の血を見た千明は眉をひそめ、思わず近寄ろうとした。

「千明!お腹が痛い!」

次の瞬間、思月が腹を押さえて呻き声をあげた。

その声に反応して、千明はすぐに振り返り、彼女を抱き上げた。

千明の肩に頭を預けながら、思月は私に向かって得意げに笑った。

最初から、彼女は私が誰か知っていたのだ。

その瞬間、胸の奥に鋭い針が刺さったように、心が痺れて痛くなる。

「ママ、大丈夫?」

安珠は何もわからず、心配そうに私の傍に寄って、小さくフーフーと息を吹きかけてくれる。

「大丈夫よ」

私は安珠を抱きしめ、その温もりにすがった。

幸い、私には安珠がいる。

千明は思月を抱えたまま立ち去ろうとしたが、安珠は何も知らずに、彼を呼び止めようとする。

「パパ!ママが怪我してるよ!手当してあげて!」

その声に、千明の足が一瞬止まる。

だが結局、振り返ることもなく歩き去った。

かすかに、思月の声が耳に届く。

「千明、あの子……あなたの娘なの?」

「知らない。人違いだろう」

人違いだ。

五年もの間、彼は私と娘が共に過ごしてきたのに、最後に残されたのは、ただその一言だ。

私は娘の頭を優しく撫でながら言う。

「聞いたでしょ、安珠。あの人はパパじゃないの。私たちが人違いしただけ」

夕方、楽器店から突然電話がかかってくる。

「お客様のピアノが届いております。ご自宅での受け取りをお願いします」

その言葉を聞いた私は、急いで安珠を連れて家に帰った。

すると、千明がすでに家にいた。

私が口を開く前に、彼は私の腕を引いて寝室に連れ込んだ。

「手、大丈夫か?」

彼は私の手を取って、丁寧に確かめる。

私は手を引っ込めて、急いで問いただす。

「手は大丈夫。それより、ピアノはどこ?」

「ピアノ?なんのことだ」

私は彼が安珠にサプライズを用意しているのだと思い、笑って答える。

「隠さないで。楽器店からもう連絡があったわ」

その瞬間、千明の目がわずかに揺れる。

「多分間違い電話だろ。安心しろ、時間ができたら買うから」

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