七年の嘘、愛も憎しみも虚しく第3話
この話は約1522字。当サイトで読める3話の試し読みのうち、最後の話です。続きの第4話からは公式アプリで読めます。
真夏が声を上げた瞬間、彼はもう私に気を配る余裕などなくなったようだった。立ち上がると、私に冷たく言い放つ。
「仏壇の前で正座してろ。自分の過ちに気づくまで、そこから出るな!」
そして、私は人に連れられて、窓もない小さな物置に放り込まれた。ここは、私がいつも罰を受ける場所。すぐ隣の壁一枚隔てた向こうは、嘉山の寝室だ。
真夏の甘ったるい声が聞こえてくる。
「嘉山、私、別に怪我してないよ。なのに、時雨さんにあんなに厳しくするなんて……」
「真夏を怖がらせたこと、それ自体があいつの一番の罪だ。あいつは図太いから、どんなに閉じ込めても平気さ」
衣擦れの音がして、真夏が小声で甘える。
「嘉山、もう結婚してるのに……私たち、こんなのよくないよ……」
嘉山の声は、まるで誓いのように優しかった。
「真夏には分からないだろうが、あいつは貧乏くさくて、触れるだけで嫌になるさ。この何年間、あの人には一度も触れてない。俺の心にいるのは真夏だけだ。だから、絶対にお前を傷つけたりしない……」
二人の艶めかしい声が、ドアの隙間から聞こえてくる。その一言一言が、私の心を刺した。
私は仏壇の前で、ぼんやりと仏像を見つめながら、どうして自分がこんな仕打ちを受けるのか、どんな罪を犯したのか、考え続けていた。
嘉山は、私の存在などすっかり忘れているようだった。
私は物置で三日間閉じ込められ、彼と真夏はその間ずっと仲睦まじく過ごしていた。
怪我の破片は取り除かれず、薬も塗られなかった。
窓のない蒸し暑い部屋には、腐ったような匂いさえ漂い始めていた。
ようやく嘉山が私のことを思い出した時には、私はもう疲れ果て、空腹と衰弱で何度も意識を失っていた。
扉が開くと、使用人が容赦なく私に冷たい水を浴びせかける。
「なにこの匂い、くっさ……」
彼女たちは嫌悪感を隠そうともせず、私を乱暴に外へ連れ出す。
「旦那様の奥さんになったからって、いい気になるなよ。真夏さんみたいな家柄の人だけが、お似合いなんだから」
彼女たちは私を噴水の中へ突き飛ばし、水鉄砲で容赦なく打ちつける。
一通り「掃除」した後、私はそのまま嘉山の前へ連れて行かれた。
嘉山は私を一瞥し、驚いたように言った。
「やっぱりお前は図太いな。三日も閉じ込められて何ともないとは。爺さんが、お前を家族の宴に連れてこいって言うからな。ちゃんと身繕いして、俺に恥をかかせるなよ!」
そう言うと、彼は私にドレスを投げ渡し、眉をひそめて呟いた。
「爺さん、何か大事な発表があるって言ってたが、何をそんな大げさにするんだ?」
私はわかっている。これはきっと、婚約を解消して私を自由にするためのものだと。
私が少し期待を浮かべると、嘉山は冷たく警告する。
「爺さんに告げ口しようなんて思うなよ。もし真夏が泣くようなことになったら、その何倍もお前に返すからな!」
夜、出かける時、私が車に乗ろうとすると、真夏が助手席の窓を下げて、申し訳なさそうに笑った。
「時雨さん、私、車酔いしやすいから助手席でもいい?」
私は彼女の挑発に答えず、黙って後部座席のドアを開けた。
逆に嘉山は、眉をひそめて私を一瞥し、真夏に向かって言った。
「真夏は本当に優しいな、いつも他人のことを気にして。助手席はお前のためにあるんだ、誰にも座らせないよ」
宴の会場で、私は一人隅に座り、真夏が嘉山の腕を取って人混みを歩くのを見ていた。
周囲の冷ややかな視線も、もう気にならなかった。
どうせこの七年、「相澤家の若奥様」という立場は、誰もが知る笑い話になっていた。
今、私が心から望むのは、相澤当主が私をこの家から解放してくれることだけ。
ふと、視界に見覚えのある人影が現れて、私は思わず身を固くした。
「あんた、よくも顔を出せたな!」
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